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臍帯とカフェイン

この海に鯨は居ない。(1:1:0)

2023.05.17 15:09

瑠璃:よっこいしょ。

瑛士:おじんくさい。

瑠璃:うるさいな、いいでしょ。

瑛士:まあ、いいけど。

瑠璃:隣、失礼するぜー。

瑛士:いや、それ先に言うやつ。

瑠璃:いいじゃん、どうせ「まあ、いいけど」って言うでしょ。

瑛士:まあ、いいけど。

瑠璃:ほーら。

瑛士:よくわかってるじゃん。

瑠璃:そりゃまぁ、幼馴染ですから。

瑛士:さすが幼馴染様。

瑠璃:馬鹿にしてる?

瑛士:してないよ。

瑠璃:絶対馬鹿にしてる。

瑛士:まあ、してるけど。

瑠璃:ほらやっぱり!!!

瑛士:だってほんとに馬鹿じゃん。

瑠璃:あー!馬鹿って言った!馬鹿って言ったほうが馬鹿なんですー!

瑛士:もうその言い方が馬鹿だもん。

瑠璃:うるさい、ばー--か!

瑛士:はい、馬鹿って言った、瑠璃のほうが馬鹿。

瑠璃:ばかじゃないし!

瑛士:馬鹿って言ったほうが馬鹿なんだよ?知ってた?

瑠璃:きー--!!

瑛士:……髪型、似合うじゃん。ショート。

瑠璃:……ん、ありがと。

瑛士:うん、可愛いと思う。

瑠璃:心にも無いことを。

瑛士:そんな事ないよ、可愛いって思ってる。

瑠璃:はいはい。いいでーす、もういいでーす。

瑠璃:……やっぱ少し冷えるね。

瑛士:そりゃね、海岸ですから。

瑠璃:夕陽、めっちゃ綺麗。

瑛士:そりゃあね、海岸ですから。

瑠璃:なにそれ。

瑛士:海は世界で2番目に綺麗なものなんだよ。

瑠璃:ロマンチックじゃん。

瑛士:まあね、俺、ロマンチストだから。

瑠璃:で、1番目は?

瑛士:ショートヘア、似合ってるよ。

瑠璃:ねー、もういいからそれはー。

瑛士:似合ってる。

瑠璃:……理由、聞かないの?

瑛士:何が?

瑠璃:……もういい。

瑛士:ここが「雨晴(あまはらし)海岸」って呼ばれている理由はね、その昔源義経があそこの義経岩に隠れてるときににわか雨を晴らしたというのが由来になっていてー……

瑠璃:ばー---か!

瑛士:……俺が、ここにいる理由も聞かないからさ。瑠璃。

瑠璃:なんでずっと毎日海眺めてんの?

瑛士:それは、髪を切った理由を聞いて欲しいってこと?

瑠璃:そうともいう。

瑛士:そうとしか言わないんだよなあ。

瑠璃:うるへー、ばーか。

瑛士:「鯨」を待ってるんだよ。

瑠璃:くじら?

瑛士:そう、「鯨」

瑠璃:いないでしょ。

瑛士:いないかもね。

瑠璃:は?

瑛士:いないかもしれない。

瑠璃:ばか?

瑛士:でも、居るかも知れない。

瑠璃:いや、見たこと無いし。

瑛士:俺も見た事ない。

瑠璃:……ふーん。

瑛士:興味無さそう。

瑠璃:興味ない、ことも、無い。

瑛士:どっち?

瑠璃:よくわからないだけ。

瑛士:そっか。馬鹿だもんな。

瑠璃:すーぐ馬鹿って言う。

瑛士:瑠璃にしか言わないよ。

瑠璃:そっちのほうがタチ悪い、もう。

瑛士:……別れたの?

瑠璃:……質問の前に答え言うのやめてよ。

瑛士:ごめん。

瑠璃:……別れた、というか、振られた。

瑛士:ふーん。

瑠璃:興味なさそう。

瑛士:興味ないこともない。

瑠璃:どっち?

瑛士:いや、馬鹿だなーって。

瑠璃:もー!瑛士嫌い!!

瑛士:俺は好きだけどね。

瑠璃:そゆとこも嫌い!

瑛士:俺は好きだよ。

瑠璃:怒る。

瑛士:ごめんて。

瑠璃:……でも、これでよかったのかも。

瑛士:なんで?

瑠璃:背伸びしてたもん、私。

瑛士:背伸びねえ。

瑠璃:うん。なんか、必死に追いつこうと思って。ほら、相手、年上だったしさ。

瑛士:経験豊富そうだったしな。

瑠璃:実際豊富だったんじゃないかな。

瑛士:なんか、外車とか乗り回してそうだったし。

瑠璃:乗り回してた、実際。

瑛士:すごいな、富山で外車か。

瑠璃:それは富山を馬鹿にしとるよね?

瑛士:してないしてない。なんか、目立ちはしそうだなって。

瑠璃:……それは、否めん。

瑛士:で、何で振られたの。

瑠璃:ねえ、デリカシーって知ってる?

瑛士:知ってる。

瑠璃:じゃあつかえー。デリカシーつかえー。

瑛士:……聞いて欲しいんだろ?

瑠璃:う。

瑛士:言いたくてたまらない顔してんじゃん。

瑠璃:うう……。

瑛士:いいよ、言いなよ。そのために来たんだろ、わざわざ。ここに。

瑠璃:……ありがと。

瑛士:「家族みたいなもの」というか「家族」なんだろ。

瑠璃:……なんだっけ、それ。

瑛士:おいおい、瑠璃が言ったんだろうって。

瑠璃:そうだっけ。

瑛士:そうだよ。「瑛士は私の家族みたいなもの、いや!もう家族だからー!」って。

瑠璃:言った……っけ?

瑛士:忘れとるし。

瑠璃:ごめんて。

瑛士:いいけどさ。で?なんて言われた。

瑠璃:……安っぽいんだってさ。

瑛士:安っぽい?

瑠璃:うん。釣り合わないんだって。

瑠璃:私の言葉も、身に着けるものも、所作も、ぜんぶ。

瑠璃:飾りみたいで、偽物みたいで、嫌なんだって。

瑛士:……。

瑠璃:なんか、あの人はダイヤモンドみたいにキラッキラでさ。

瑠璃:全然ダイヤなんかじゃないのに、あの人に追いつこうとする私がさー。

瑠璃:「やわしい」って。シティ派の自分には合わないってさ。

瑛士:ばりばり富山弁出てるのに何がシティ派やねん。

瑠璃:ね。「見苦しい」ってハッキリ言やぁいいのに。

瑠璃:……まあ、「きときと」な人だからね。私みたいなのは邪魔だったのかも。

瑠璃:言われたー、「君はシーグラスみたいなもんだ」って。

瑛士:どういう意味?

瑠璃:安っぽいガラス片が、海の中でもみくちゃになって

瑠璃:表面はザラザラで、汚くて、整ってなくて。

瑠璃:……もっと、研磨したダイヤみたいに、ならないと……ダメなんだって……

瑛士:……瑠璃。

瑠璃:あたし悔しい。なんか、すっごく悔しい。

瑠璃:そんな事言われちゃったことも、そんな事言う奴を好きになっちゃったことも。

瑠璃:……馬鹿だ、私、ほんと。

瑠璃:シーグラスなんて、ほら、そこにも、ここにも転がってる。

瑠璃:どこかで割れたガラス片が転がってさ、角が取れて……ってそんなの

瑠璃:「ごみ」、じゃんね。

瑠璃:私、「ごみ」と一緒なんだって。

瑛士:……ばか。

瑠璃:うー……。

瑛士:……瑠璃さ。

瑠璃:……。

瑛士:「シーグラス」って、どうやって出来るか知ってる?

瑠璃:え?

瑛士:知ってる?

瑠璃:そりゃ、こう、割れたガラス片がさ、海の中を漂ったりして……

瑛士:瑠璃。

瑠璃:な、なに?

瑛士:こっち向いて話して。

瑠璃:え、え?

瑛士:今から大事な事話すから。

瑠璃:な、なにいきなり

瑛士:いいから。

瑠璃:う、うん、わかった。

瑛士:……ん。

瑛士:そう、瑠璃の言う通り、ガラス片がさ、海の中で漂って

瑛士:岩や、砂や、色んなものにぶつかって、削れて出来上がるのが「シーグラス」、そうだよな。

瑠璃:う、うん

瑛士:じゃあ、ダイヤは?

瑠璃:え……えーと、原石を、研磨して、できる?

瑛士:そう。ダイヤってさ、言うなれば「人工」なんだよ。

瑠璃:人工……

瑛士:自分の好きなように、自分の思う通りに削って、磨いて、形作る。

瑛士:思い通りに、な。

瑠璃:……うん。

瑛士:たしかにダイヤモンドは綺麗だ。

瑛士:でもそれは「そうあるように、生み出された」美しさだ。

瑠璃:……。

瑛士:海に、研磨剤はあるか?

瑠璃:ない。

瑛士:無いのに、どうやって「ガラス片」は「シーグラス」になるんだろうな。

瑠璃:……長い年月、少しずつ……。

瑛士:そう、時間をかけて、「その形」になってく。

瑛士:そうやって、波に揉まれて、「自分の形」になっていくシーグラスのどこが「安っぽい」のさ。

瑠璃:うー、瑛士ぃ。

瑛士:なあ、瑠璃。

瑛士:「運命の相手」って、信じてるくちだろ?

瑠璃:う、うん……信じてる。

瑛士:研磨されたさ、綺麗な断面を重ね合わせて、ぴったりハマったところで、それって運命って言えるか?

瑠璃:……そんなの運命じゃない。

瑛士:そうだよな。

瑠璃:うん。

瑛士:運命ってのはさ「綺麗なもの」じゃない。「いびつな形」なのに、なぜかぴったり合わさるから、運命なんだよ。

瑠璃:……うん。

瑛士:な、ほら、あんな奴、瑠璃の運命の相手じゃなかったんだよ。

瑠璃:……瑛士はさ。

瑛士:うん。

瑠璃:私をなぐさめるの、ほんと、上手。

瑛士:まあね。

瑠璃:……なんで、そんなにうまいの?

瑛士:瑠璃、だからな。

瑠璃:……え?

瑛士:わかりやすいから。

瑠璃:……?

瑠璃:……それ遠回しに馬鹿って言うとるでしょ!!!

瑛士:違うよ。

瑠璃:うそだー!!!

瑛士:瑠璃が大好きだからだよ。

瑠璃:もうそういうのいいー!!!!もー!!!!

瑛士:……。

瑠璃:……ありがと、瑛士。

瑛士:なんもだよ。

瑠璃:……なんでくじら?

瑛士:え、それ今?

瑠璃:なんか、ふと、気になっちゃって。

瑛士:いいだろ、なんでも。

瑠璃:はい!私は根掘り葉掘り聞かれたので瑛士も言うべきだと思います!

瑛士:はい、それは瑠璃が勝手に話し始めたんだから関係ないと思います。

瑠璃:意義あり。「で、どうした?」ってきっかけを作ったのは瑛士だからやっぱり言うべきだと思います。

瑛士:興味なかったんじゃなかったのかよ。

瑠璃:興味ないんじゃなくて、わからなかっただけだって。

瑠璃:瑛士こそ、興味なかったじゃん。

瑛士:馬鹿だなーって思っただけだって。

瑠璃:すぐ馬鹿っていう!

瑛士:馬鹿だよ、相当な馬鹿。

瑠璃:もー!!

瑛士:瑠璃じゃないよ。

瑠璃:……え?

瑛士:彼氏のほう。馬鹿だなって。

瑠璃:え、っと、なんで?

瑛士:鯨の骨がさ、あがったんだよ、ここで。

瑠璃:骨が?

瑛士:うん。この雨晴で。

瑠璃:……骨が出たからって、ここに鯨がいるとは

瑛士:うん、限らないね。

瑠璃:じゃあ、なんで。

瑛士:願掛けみたいなもの、かな。

瑠璃:……願掛け?

瑛士:そ、願掛け。

瑠璃:なんの?

瑛士:……俺さ、瑠璃。

瑠璃:…う、うん。

瑛士:「東京」に行くんだよ。

瑠璃:……え?

瑠璃:は?……え?え?

瑠璃:なんで?聞いてない、え、いつ?

瑛士:来月。

瑠璃:きいてない!え、ちょっと、きいてないよ!

瑛士:うん、言ってなかったから。

瑠璃:なんで!?なんでそんな大事な話言ってくれないの!?

瑛士:ごめん。

瑠璃:やだ。え。やだ。

瑛士:決まってるんだよ、もう。

瑠璃:なんで?

瑛士:東京でしたい事があるんだ。

瑠璃:ここでもできる。

瑛士:……。

瑠璃:やだ。やだよ。離れるなんてやだ。

瑛士:瑠璃。

瑠璃:やだ!ばか!瑛士の馬鹿!

瑠璃:そんな大事な話してくれないなんて、ひどいよ!ばか!

瑛士:……だから、願掛けだったんだよ。

瑠璃:なんの?意味がわかんない。

瑠璃:やだ、家族同然で育ったんだよ?

瑠璃:小さい時は一緒にお風呂にも入ったし

瑠璃:どんな時にもずっと一緒だった。

瑠璃:瑛士が中1までおねしょしてたのも知ってる。

瑛士:それは忘れろ。

瑠璃:やだ。

瑛士:瑠璃。

瑠璃:やだよ、離れちゃうんだよ、やだよ。やだ。

瑛士:……「俺らは、家族じゃないんだよ」瑠璃。

瑠璃:う……うー……そうだけど。

瑛士:でも、俺もこの関係にずっと甘えてたんだと思う。

瑛士:恋人でもない、兄弟でもない、でも、傍に居るっていう家族感に。

瑛士:だから、それは、壊さなきゃなって思ってた。

瑠璃:……壊す……?

瑛士:うん。瑠璃、俺はさ、「シーグラス」好きだよ。

瑠璃:いきなり、なに……?

瑛士:シーグラスは確かにいびつかもしれない。

瑛士:でも、こうさ、夕陽の光に透かして見える光はさ、何よりも美しくて

瑛士:何よりも儚くて、そこには一日やそこらでは培えない

瑛士:人生や、生き様がさ、詰まってるんだよ。

瑛士:だから俺は、シーグラスも、シーグラスを透かした光も、好きだ。

瑠璃:……。

瑛士:今日までに、「鯨」が見れたらさ、うまく行くかなって思ってたんだ。

瑠璃:……。

瑛士:臆病なんだよな、俺も。

瑠璃:……。

瑛士:願掛けなんかに頼ってさ、勇気の出せない馬鹿野郎でさ……って

瑛士:聞いてる?瑠璃?

瑠璃:ちょっとまって。

瑛士:え、あ、うん、え?

瑛士:なに?めっちゃ真剣な顔してるじゃん。

瑠璃:ねえ。

瑛士:なに。

瑠璃:あそこ、あそこみて。

瑛士:あそこ?なに?どこ?

瑠璃:ほら!!!あそこ!!!!

瑛士:う、うん?あのあたりがどうしたんだよ。

瑠璃:みてて………ほら!!!みて!!!ほら!!!

瑛士:え、あ、え!?な、なんか水しぶき!え!?尻尾!?

瑠璃:あ、あれ、鯨の尻尾じゃないの!?

瑛士:わ、うわ、え!そ、そうかも知んない……そうかも知んない!!

瑠璃:居た!!!!ねえ!!!瑛士!

瑠璃:くじら居た!!!!

瑛士:お、おう!!!いた!いた!!!

瑠璃:すごい!本当にいた!雨晴にくじらいた!ねえ!瑛士!いた!

瑠璃:願掛けしてたんだよね!?くじらが居たら、なんかうまくいく!って

瑠璃:願掛けしてたんだよね!?

瑠璃:できる!できるよ!居ない居ないって言われてたくじら、居たんだよ!?

瑠璃:わ、すごい!すごいよ!

瑛士:……そう、だよな、居たんだ。

瑠璃:うん!!居た!!

瑛士:瑠璃。

瑠璃:なに!?

瑛士:「俺と結婚してくれ。」

瑠璃:ふ、

瑠璃:ふぇ……?

瑛士:俺と、結婚して欲しい。

瑠璃:な、え、ええ?

瑛士:瑠璃。

瑠璃:も、もー!!!だから!そういうのやめてって!

瑠璃:からかわないでよ!

瑛士:からかってないよ。ずっと、ずっと好きだった。

瑠璃:ふ、ふえ……

瑛士:ずっと、好きって言ってきたつもりだ。

瑠璃:だって、そんなの、私たち、家族みたいなもの、だし……

瑛士:そう言って線引きしたのは、瑠璃からだ。

瑠璃:だ、だって……。

瑛士:でも、俺もその関係に甘えてた。

瑛士:だから、瑠璃が他の人を好きになっても、誰かと付き合っても

瑛士:それは仕方ないことだって思ってた。

瑠璃:え、瑛士。

瑛士:だから、鯨に賭けてたんだ。

瑛士:今日までに、鯨を見る事ができたら

瑛士:瑠璃。何が何でも瑠璃を奪って東京に行こう、って。

瑠璃:ちょ、ちょっとまってよ、急すぎて全然処理できてない

瑛士:そのままの瑠璃でいい。

瑛士:何も、取り繕うことなんてない。

瑛士:いびつでもいい。

瑛士:煌びやかじゃなくていい。

瑛士:瑠璃、そのままの瑠璃が好きなんだ。

瑠璃:う……あう……ばか、瑛士ばかだよ。

瑛士:うん、ばかだよ。

瑠璃:わ、私、今振られたばっかなんだよ。

瑛士:うん。知ってる。

瑠璃:なのに、瑛士に、そんな風に言われて、

瑠璃:私、こんなにうれしくなっちゃってる。

瑛士:うん。そゆとこも、好き。

瑠璃:ばかだよ、私。

瑛士:ばかかも。

瑠璃:そこは否定しろ!

瑛士:でも、「愚か」じゃないよ。

瑠璃:えいじ……。

瑛士:そのままでいい、飾らない、素直な瑠璃がいいんだ。

瑠璃:う、ううー……

瑛士:瑠璃、俺と結婚してほしい。

瑠璃:うー、ばかぁ……

瑛士:本気だよ。

瑠璃:わかってるよう、わかってるう

瑛士:ちゃんと、こっち見てよ。

瑠璃:見れるわけないじゃん!

瑛士:見て。

瑠璃:うー!もー!もぉー!

瑛士:瑠璃。

瑠璃:ううう……かわいくないよ

瑛士:かわいいよ

瑠璃:うう、ほんとに、ほんとにバカだよ

瑛士:全然平気

瑠璃:そこはぁ、否定しろってぇ

瑛士:馬鹿じゃないよ

瑠璃:ううう……

瑛士:瑠璃。

瑠璃:家族でいなきゃって、思ってたのに……

瑛士:違うよ、瑠璃。

瑠璃:えぇ……?

瑛士:「家族になってくれ」って、言ってるんだよ。

瑠璃:……うー。

瑛士:もうこれが最後。

瑛士:瑠璃。結婚して。

瑠璃:……はい。よろしく、おねがい、します。

瑛士:……ふふ

瑠璃:うー!もうー!

瑛士:ははは!やった!

瑠璃:何が何だかだよこっちは!もー!

瑛士:いいじゃん、何が何だか、でもさ。

瑠璃:うー、もうー……うー……。

瑛士:そのままの形で、二人、合わされたらいいな。

瑠璃:……うん。

瑠璃:……あ、ねえ。

瑛士:ん?

瑠璃:一番は、なんなの?

瑛士:一番?なんの話?

瑠璃:きれいなもの。海は2番目なんでしょ。

瑛士:ああ。そんなの。

瑠璃:そんなの?

瑛士:瑠璃の横顔に決まってるじゃん。

瑠璃:ふえ!?

瑠璃:も、もう!!!

瑠璃:ばーか