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臍帯とカフェイン

朗読詩 群青

2023.05.18 13:54

燻らせた煙草は、慣れない煙を吐き


高架下の小煩い(こうるさい)飲兵衛横丁を


通り過ぎながら、解けていく様は


どうにもかくにも君の泣き顔を思い出すには


十分過ぎて、痛みを覚えるこの肺は


その為の罰なのだと、電車は無常にも走り抜ける。


最後の夏は、花火を一度も見ることなく終わりを迎え


道端の蝉の死骸の数を数えながら


そうか明日は自分の番か、なんて考えながら


ペダルを漕ぐスピードは落ちていった。


来年の夏も、おそらく花火を一度もすることなく終わり


集めきった蝉の抜け殻を砕いては


そうだ君と僕の晩夏、どこに置いたのか


わからなくなったサンダル、探す日々、


ペダルを漕ぐスピードは落ちていった。


火種の落ちた煙草は、次の火種を探すのに


足りぬくらいの温度で地面に倒れ


それを救うべきか踏みにじるべきか


迷いながら、この夏の暑さを思い出しては


高架下、ベンチ、解けていく、どこまでも、僕。


暗がりで吸った煙草は、ほんの少しだけ


僕の周りを群青に光らせて


吐き出した煙には、なんの罪もなかった


なんの罪もなかった、ただ僕は恋をした。


高架下、ベンチ、解けていく、どこまでも、僕。