Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

青と檸檬

瑠璃色

2018.06.15 15:20

 瑠璃色というのを見たかったので

海へ探しに行ったのです

3ぼんのチューリップを横切り

浜大根の群れを跨ぎ

スニーカーを灼くこもれびを蹴って

南へ

南へ

空が青くなるほうへ

とうとう白い砂でできた地球が

後ろ姿をあらわしたころには

空はすっかり群青色で

しかし瑠璃色ではありませんでした

わたしは群青の下に広がる

白い砂をかじってははなれて行く

水のかたちをしたそいつに

ずんずんと近づいて

持ってきたしろいコーヒーカップを沈めると

満を持して持ち上げました

けれどもまっしろなカップの底は

変わらずまっしろなままでした

途方にくれるわたしのつまさきに

急に喧しくなった波音が絡んで

「ああ、だめだめ、瑠璃色は。おまえさんじゃあ小さすぎる」

と、さらさら笑います

それを聞いたわたしはひどくがっかりして

意地悪な波に見られないよう

泣きそうな顔をカップに沈めて

目をつぶって

飲み干しました

 

すると

 

まぶたの裏にほんの一瞬

100匹の魚の群れと

うすい夜のきれはしと

冷たい透明と

泡のビー球と

やさしい悲しみが

映し出されました

 

わたしが口を半分あけて、何もいえないでいると

波が踵を押して、いいました

「大きくなったら、またおいで」

わたしはついににっこりと微笑むと、

逆さまのあしあとを辿りました

 

しろいカップが手のなかで

一度だけ からん と鳴りました