オンワード樫山が新たなダウン技術で特許取得、東コレのデザイナ登用でグローバル展開
【ファッション報道】 平成三十年六月十三日に東京・田町にてオンワードHD(8016.T1)の完全子会社であるアパレル大手のオンワード樫山(代取:大澤道雄)が事業戦略発表会を開催。新規市場開拓と顧客の創造に向けた事業戦略の新たな主軸として、独自技術開発 「アドヴァンスド システム」の事業構想を伝えた。第一弾となる特許取得の新構造の高機能ダウン『ADS(アドヴァンスド ダウン システム)』を今秋より本格ブランド化し展開する。
ADSの最初のデザイナに選ばれたのは東京コレクションでの発表経験がある二名。中島篤(戊午)と江角泰俊(辛酉)がADS技術を用いたデザインをトーク形式で発表した。
大澤代取(丙申、写真上)は、提供価値の多様化と顧客基盤の拡大を成長戦略の基本方針とし、同プロジェクトを「従来発想のトレンドからブランドを誕生させ、展開していくのではなく、メーカーとして永年培ってきた独自の開発力を最大限活かし、イノベーション自体を事業化していく新たな構想である。」と述べた。プロジェクトの事業化を加速させる事で、新たな顧客創造、流通・販路の拡大、グローバル化によるブランド展開の三面から成長戦略に繋げていく。
<東京こそ世界で通じる>
プロジェクト共通のキーワードは“TOKYO EDIT.”。東京で生まれる服こそが、世界で通じる服であるというメッセージを通じてブランド化を展開する。商品の具体的機能である特許取得の新構造については、「通常のダウンに入るステッチの代わりに特殊テープを用いる事で、ステッチレスの高機能ダウンの開発に成功しました。自由なデザイン、ファッションの選択肢を広げる事を可能にするだけではなく、縫い目が少ない為に驚くほど柔らかく快適な着心地を実現します。」と同社は説明した。
ADSはオンワードのレディスの十一、メンズで六の計十七ブランド。バレエ・ダンス用品を扱うチャコットで展開する。顧客に新たな発想で提案する「スタンダード」。内公募デザイナ・パタンナと外部の新進気鋭デザイナによる、新たな顧客創造を目指した「ニュー ジェネレイション」の二つのラインでスタート。今後は著名デザイナ・クリエイタを起用したコラボレーション「プレミアム」で新たな顧客層へのグローバル アプローチを目的に来秋からの展開を計画している。計三つのラインで展開していく。
年商は百億円を目指す
ブランド軸経営を縦軸、同プロジェクトは横軸と捉えて日本を代表するメーカーとして新たな需要を喚起していくと宣言した。デザイナの中島(写真上)は「通常のダウンを想像していたが、新しい素材で新しい事にチャレンジできるチャンスだと感じました。」と話しを受けた際の胸中を述べた。。同じくデザイナの江角は「通常あるダウンパックがなく、デザインの自由度が非常に高い。自由度が高い事は、 デザイナとしては嬉しいです。」と話した。
またADSの可能性について中島は「新しい技術でとても将来性がある。」と。江角(写真上)は「 今までの概念を覆してるので、その様な意味では様々な方向へ広がっていく。」と期待を込めてた。同プロジェクトの商品価格は五万円前後。外部デザイナ等を登用したデザイン性の高い商品価格は八万円程度。セレクトショップ等に卸売りする。欧米やアジア等の海外展開も視野に入れ、三十年度は二十五億円の売上げを目指す。二、三年後を目処に年商百億円に育てる考え。大澤代取は「今回はイノベーション自体を事業化した点で新しい。」と笑みを含みながら答えた。
撮影記事:岡本早百合