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超人ザオタル(107)目覚めの波

2023.05.19 13:39

シュマは気持ちを切り替えるように顔を上げて言った。

「私は厳しさが足りなかったかもしれません。

どこかで自我と妥協していようとしていました。

不完全でも、自分が納得できればいいではないかと。


しかし、そんなスキがあれば、

その妥協は隠さなければならない偽りになる。

それは薄々分かっていました。

真の自分を知ることは妥協を許さない。


これはどんな過酷な修行よりも厳しいかもしれません。

自我の希望を通すのではなく、

真の自分をありのままに受け入れるのですね。

、、、もう一度出直してきます、ザオタルさま」


私は微笑みながら黙って頷いた。

シュマは立ち上がると一礼して去っていった。

ここで停滞は終わり、先へと進み始めるのを感じた。

ただ、この道の過酷さはこれからなのだ。


自我は強く自分を主張してくるだろう。

真の自分を悟ったとしても、

そこに何の恩恵もなく、誰からも評価されないのだ。

それを自我は無価値であると判断する。


それでもこの道を歩んでいけるか。

ただ自分の真実を知りたいというその熱意だけで。

これが過酷さの核心なのだ。

しかし、シュマには真の自分に目覚めるという波が来ている。


それだけが救いであり、

この道を信じていくことを支えている。

いつの間にか白いもやは晴れて、目の前に美しい丘陵の景色が広がっていた。

朝露に湿っていた岩も乾いて、陽の暖かさを享受していた。


それから半月ほどが経った。

私はいつもの場所でぼんやりと景色を眺めていた。

まだお昼前だというのに日差しが強く、

じっとしていても汗ばむ陽気だった。


それでも、時折吹く風が涼しさを運んできて、

それが暑さを和らげ、心地良くしてくれる。

私はそうして世界を感じていた。

心地よさを求めているわけではない。


それが世界なら心地悪い感じでも構わない。

土砂降りの雨、冷たく乾いた風、湿って暑い空気。

それらが身体を不快にしたとしても、

それはそれで世界であり、ありのまま受け入れるだろう。


身体や心はそれで不満を言うかもしれないが、

そう不満を言う身体や心も世界の一環なのだ。

そこにいる私はだたそれを黙って感じている。

私が存在するから、この世界はそうして自由に生きている。


実に微笑ましいことだ。

私にとって世界はすでに役割を終えている。

ただこの世界を去るまでの時間を静かに過ごしている。

そしてあの波をこの世界に残そうとしている。