春が来れば
春が来れば
When Spring Comes Spring Time
2006年4月18日 新宿 シネマスクエアとうきゅうにて
(2004年:韓国:126分:監督 リュ・ジャンハ)
この映画は一昨年の東京国際映画祭で上映されたのですが、なんせ、韓国映画の人気って東京国際映画祭では凄いので、到底チケットなど手に入りませんでした(一応、チケット発売日にトライしたのですが・・・完売)
やっと劇場公開されて、ウキウキと行ったら、あら、観客少ない。ちょっと映画祭と劇場公開の違いを感じてしまいました。
(やっぱり映画祭は「映画が好き」な人が集中する特殊な場です・・・って当たり前ですけど)
これは素直ないい映画です。でも、押しつけがましくないです。
もう、韓国では重鎮のような存在になってしまったチェ・ミンシクさんは、トランペッターであり音楽家。
しかし、ソウルのオーディションでは落ち続け、生活の為に田舎の炭坑町の中学校の吹奏楽部の音楽講師として、都落ち。
チェ・ミンシクさんは、音楽の才能はあるけれども、どうも普段の生活ではちょっとだらしない。短気で、無神経な所があるので女の人とは別れるし、いつまでたっても結婚しないんだから!と母にけんつく、けんつく言われても、う~ん、と背中を丸めるだけです。
中学校の吹奏楽部もなんだか・・・部員は減る一方だし、男の子だけの落ち着かない雰囲気しかないみたいな所です。
いつも誰かが、眼帯をしている、っていうのがちょっと可笑しくて、今度はこの子か・・・なんて思いました。
チェ・ミンシクさんの背中丸め歩きっていうのがいいですね。確かに音楽は専門的なんだけれどもあまり威張った雰囲気がない。
それは何故かというと、チェ・ミンシクさんの丸まった背中。
どうも、胸張って歩かないのです。でも、さすがに音楽指導の時は、時には厳しく、時には面白可笑しく指導する、なかなかの先生です。
子供たちも、だんだん先生になついてきて、特に貧しい家の子供を夕食に誘ったり(といっても男一人暮らしでは、素ラーメンを鍋から食べるのでした)あれこれ面倒見の良い所も見せます。
炭坑の町に早い冬がやってきて・・・といった季節の移り変わりの風景がとても綺麗。映像がとてもクリアで綺麗なんです。
吹奏楽部は、全国大会目指すけれど、あまり優勝にこだわったりしない所がいいですね。「参加したついでに優勝していこうじゃないか」なんてすらっと言って、生徒たちをリラックスさせる。勝つことにガツガツしていないのがとても良かった所です。
この映画の為に、トランペットの猛練習をしたという、役者根性がいいです。それも自然に。『酔画仙』では、掛け軸の絵なんかすらすら描いていましたけれども。『オールド・ボーイ』では、ばりばりアクションしていましたけれど。
どんな人でもすんなり演じられる役者さんはとても好きです。特に、「どこかしか弱点のある男」というのが上手い。完璧じゃない人物を完璧に演じることができる。
貧しい家の男の子が、『殺人の追憶』の冒頭の少年、『大統領の理髪師』の男の子だったのですが、もう、14才、中学生になったのですね。
人なつっこい笑顔がまだ、子供らしくてとても可愛らしくて、チェ・ミンシクさんでなくても、頭ぐりぐりやりたくなります。