『治療に効果がない』ことと『患者の症状が改善する』ことは矛盾しません①
こんばんは。夢のまち訪問看護リハビリステーション 都賀の理学療法士の倉形です。
今日は、『治療効果と症状の改善』に関して書きます。
私の立場は、表題の通り、「『治療に効果がない』ことと『患者の症状が改善する』ことは矛盾しません」です。
理由としては『プラセボ効果』、『自然経過』、『ホーソン効果』などが考えられます。
『プラセボ効果』という単語は聞き覚えのない方もいるかもしれません。単純に言うと、『行われる治療に対する期待によって(その治療に実際の効果がなくても)、症状が改善すること』です。少し乱暴に言ってしまえば、『思い込み』です。
かつての私もそうでしたが^_^;「『思い込みによる症状改善』と『真の治療効果』が混同されるわけがないでしょ。しょせん思い込みによる改善なんてたかが知れているし。」と考える方がいらっしゃると思います。ですが、この『プラセボ効果』は超強力&優秀な奴で、痛みをモルヒネばりに和らげてみせたり、下手な降圧剤よりも血圧を下げたりもします。実際に、脳の活動に変化を及ぼすこともわかっています。昔の人の言う「病は気から」というのは案外的を得ています。(昔読んだ「パプワ君」という漫画に「住まいは木から」というギャグ(?)があったことをなぜか今思い出しました)
プラセボ効果に関する逸話にこんなものがあります。第二次世界大戦中、アメリカ従軍医のヘンリー・ビーチァー医師が困った状況に陥りました。
傷ついた兵士がたくさんいるのに、痛みを和らげるためのモルヒネが足りなくなってしまいました。そこでビーチァーさんは、しかたなく生理食塩水(純粋な水)をモルヒネの代わりに負傷した兵士達に注射しました。その結果、負傷した兵士の痛みがモルヒネを打ったかのようにで改善しました。ということがありました。このようにプラセボ効果は時に、非常に大きな効果を示します。
プラセボ効果は非常に強力なため、お薬の開発において非常に注意深く扱われます。お薬の効果を調べる研究(治験)では、通常は『対照群』とか『コントロール群』という名目で、実際の薬と見せかけてブドウ糖など治療効果が期待できない物質を摂取してもらうグループを設定します。実際の治療をしたグループには治療効果に加え、プラセボ効果による症状の改善もあります。実際に治療をしたグループとしなかったグループを比較することではじめて、プラセボ効果抜きでの真の治療効果を知ることができます。
このようにプラセボ効果もありますので、『症状の改善』が『真の治療効果』なのかは慎重に判断しないといけないと思います。
長くなりましたので次回に続きます。(一回でサクッと書くはずだったのに、悪い癖です・・・)。
今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございました。
理学療法士 倉形裕史