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桜桃忌に寄せて

2018.06.19 03:51

6月も中旬が過ぎ、紫陽花が庭に色づく季節となった。

この時期はなぜか落ち着かない。

心を静めるために仕事を半日休み、物思いにふけっている。


文学をする者にとって、今日は桜桃忌という特別な1日である。

1909年6月19日に彼は生まれ、1948年6月19日に彼の遺体は発見された。

38歳で彼はこの世を去った。


彼の遺書には「誰よりも愛してゐました」という言葉や「小説を書くのがいやになつたから死ぬのです」といった言葉がかかれている。

本当のことは知らない。

ただ、そうして大宰治は死んでいった。


やはり心が落ち着かない。

安らぎを求めてスマートフォンを開くと、さまざまな文字や写真が飛び込んでくる。

痛ましい事件に、震災。

暴力や人間の欲望に並んで、可愛いらしい投稿もある。

おそらく、正義というのは一つではない。

太宰が死んだことに、今日の私が何かをいっても仕方ないだろう。

程度の差はあれ、今日が誰にとっても、特別な1日であることには違いない。

広告に仏陀の言葉、誰かの不正を訴える投稿に、誇らしい笑顔をスクロールし、同じように私も、何かを投稿する。

明日もまた、誰かにとって特別な日がやってくる。

明後日も。