L.ヤナーチェク 弦楽四重奏曲第2番《ないしょの手紙》
ヤナーチェク
村上春樹の小説「IQ84」に彼の楽曲が引用され、日本で一躍、名前が知られるようになりました。
当夜の第2曲、《ないしょの手紙》はヤナーチェクの人間らしさに触れる名作です。
L.ヤナーチェク
弦楽四重奏曲 第2番 JW.VII-13 《ないしょの手紙》
ヤナーチェクは19世紀後半から20世紀初めのチェコ(モラヴィア)を代表する作曲家です。
創作分野は広く、作品数も多く残しました。
没後50年のカザルスと同時代で、二人には親交はありませんでしたが(おそらく)、ともに戦争や他国からの支配という辛い社会情勢に翻弄されました。
63歳のヤナーチェクは38歳下の人妻、カミラ・シュテスロヴァーに恋をします。
プラトニックな恋愛で、この曲の完成から半年後、彼はカミラの子供を救うために身を挺して、帰らぬ人となったほどです。
明るく女性らしいカミラ、ヤナーチェクのミューズとなりました。
晩年の彼に爆発的な創作力をもたらし、後に20世紀最大のオペラ作曲家として評価されることになるのです。
二人が交わした手紙は700通ほどにものぼり、《ないしょの手紙》はタイトル通り、音楽で綴った恋文です。
↓ 動画をどうぞ。
ヴィオラに要注目です!
カミラの象徴であり、曲全体を通して、重要な役割が与えられています。
第1楽章はカミラとの出会い。
衝撃と動揺。
その後、音楽は生き生きと邁進し、自分に正直となった決意のようです。
そうして、二人の親密な関係が始まり、第2楽章では期待と不安が交錯します。
第3楽章はカミラのイメージに抱かれる妄想です。
甘美な憧れ、心奮える高揚。
歓喜、安堵、確信が歌われる終楽章。
半端なく多様に変化(へんげ)していきます。
《恋をした時はこうしたもの。》と言わんばかりに。
どうでしょう?
きっと、
どなたにも身に覚えがあるのでは?