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【事例編】『地下水熱』等でZEB実現~かまぼこ老舗の「鈴廣蒲鉾本店」

2018.06.19 05:18

◆水、エネルギーを使う企業がたどり着いた地下水熱エネルギーの魅力

創業150年を超える国内屈指の老舗かまぼこメーカー鈴廣蒲鉾本店(神奈川県小田原市風祭)は、2015年8月に「地下水熱ヒートポンプシステム」を備えたゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)となる新本社屋を完成しました。この本社屋は、神奈川県の「2015年度かながわ地球環境賞」を受賞。省エネ・創エネの取り組みを積極的に進める同社は、2016年度中には小田原市成田にある「惠水工場」でも更新に合わせ、「地下水熱ヒートポンプシステム」を導入するなど、足元の資源である地下水の熱利用を積極的に進めており、各方面から高い関心を集めています。【エコビジネスライター・名古屋悟(ECO SEED代表)】


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◆70m井戸1本で空調と給湯…システム全体で60%超の削減を実現

 ZEBとして2015年8月に完成した新社屋は、創業150年を記念して建築された3階建て延べ床面積2,134㎡の新築の建物で、経済産業省の「2014年度住宅・ビルの革新的省エネルギー技術導入促進事業」に採択されたものです。

 「これまで取り組んできた省エネ、創エネの集大成」と位置付ける新社屋には、建物の断熱性に配慮し、壁や屋根を断熱構造にし、窓はLow‐e複層ガラスを導入。屋上に太陽光パネル(38kW)を設置して発電するとともに蓄電池も設け、非常時にも備えています。

 また、照明は全てLED照明を採用し、光ダクトや大きくとった開口部から自然光を多く取り入れています。室内照度を一定にするためLEDを自動調光させることで照明電力を削減している点も大きな特徴になっています。

 そして新社屋の空調を賄っているのが、豊富な地下水を活用した井水利用熱源の外調機、水熱源ヒートポンプゼネラルヒートポンプ工業社製)、ヒートポンプ給湯器です。

 70mの井戸1本から年間を通じて温度が一定の地下水をくみ上げ、夏は冷房、冬は暖房に利用しています。1、2階では部屋ごとに水熱源ヒートポンプエアコンが設けられ、オフィススペースとなる3Fは床吹き出し空調が設置されています。また、地下水は職員が利用する社員食堂の給湯熱源としても利用されています。これらのシステムの導入により、エネルギー消費量は一般的な同規模の建物と比較して60%超の削減を実現しています。

◆熱利用した井水は散水や景観用水、トイレ用水などにも利用


 毎分740リットルくみ上げられて熱利用される地下水は、熱利用後にトイレ用水や散水用水、景観用水など中水利用も進められています。

 どうして食品メーカーの同社がここまで省エネ、創エネに力を注ぐのか?。同社施設技術課の廣石課長に話を聞くと、「かまぼこ等加工食品の製造では、原料の輸送や製造の工程で、冷蔵・冷凍、解凍、加熱の工程がいくつもあります。水やエネルギーを使うからこそエネルギー問題に取り組んでいるのです」と、その背景について話してくれました。



◆東日本大震災契機に創エネに注力

 従来から省エネに取り組んできた同社ですが、その取り組みを加速させることになったのが2011年3月11日の東日本大震災です。東京電力管内は計画停電となり、同社工場も計画停電に合わせた操業を余儀なくされました。ピークカットも求められる中、同社では一層の省エネを進めた結果、従来進めてきた省エネに加えてさらに20%のピークカットを達成。「まだ省エネができる余地があったことに驚きました」と廣石さんは振り返ります。

 さらに、東日本大震災で被災した東京電力福島第一原子力発電所の事故から、原発に頼らない方針を固め、創エネにも取り組みました。

 最初に取り組んだのが太陽光発電で、風祭店や同じ敷地にある食事処「千世倭樓」の事務棟などの屋根に太陽光パネルを設置。設置容量110kwを設置しました。


◆レストランには「地中熱換気システム」導入し、エネ消費20%削減


 さらに、かまぼこの里の一角にあるレストラン「えれんなごっそ」に地中熱換気システムを導入。このシステムは基本的にヒートポンプを使わないシステムで温度変動の少ない地下5mまで設置した熱交換パイプに外気を通し、夏は冷やし、冬は温めて室内に取り込んでいますが、ここでは以前から活用している井戸も利用し、地下水熱交換器を介してさらに冷暖房効果を高めているのが特徴です。このシステムの導入で、エアコンの負担が減り、年間電力消費量20%削減を達成しています。

 取り組みはさらに進み、団体客が昼食等で利用する施設を持つ風祭店に、井戸水を利用した太陽熱給湯システムを導入。太陽熱パネル30枚と2,220リットルの蓄熱タンクを設置し、店舗で使う給湯の補助として賄っているとのことです。従来のガス利用に比べ、年間ガス使用量の20%を削減したとしています。


◆「恵水工場」にも地下水熱導入


 各施設で省エネ・創エネを進める中、さらに「恵水工場」において、ガス吸収式冷温水機の更新に合わせ、「地下水熱ヒートポンプシステム」の導入を決定。こちらは「2016年度再生可能エネルギー事業者支援事業費補助」で採択され、整備されました。新本社屋とほぼ同じ70mの井戸を熱源に冷暖房システムが導入されています。こちらのシステムについても別途、機会を設けてご紹介させていただきたいと思っています。


※写真はいずれも取材時にECO SEEDが撮影


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