2018.6.17 慶應定期戦、最悪の出来ながら辛くも勝利!
愛知県豊田市のトヨタスタジアム。名古屋市の郊外にドーンと居座る。2001年の竣工なので、20年近くを経過しながら近代的な存在感は圧倒的であり、45000人も収容できるサッカー専用球技場である。すり鉢状の観客席は観客本位で設計されている。羨ましい限りの施設だ。
ただ、Jリーグ名古屋グランパスの本拠地ながら、日韓ワールドカップサッカーの負の遺産としても有名。豊田市が中心にトヨタグループとともに設立した三セクは赤字を垂れ流し、毎年、数億もの税金が投入されているとも仄聞した。売りものだった開閉式屋根も高コストオペレーションが祟り、ほとんど使われることなく使命を終えた。(メンテ終了、使用不可)
されど、ここで同志社・慶應・明治・早稲田を集めた企画は、オールド大学ラグビーファン待望のものであり、素晴らしいの一言に尽きる。是非とも毎年やって欲しいものである。
ただ、如何せん「箱」が大き過ぎた。さすがに今回、7000~8000人もの観客が動員出来たと思えるが、キャパが大き過ぎて余りにもスカスカの印象である。見栄えが悪過ぎ、少し淋しい限りだ。
カメラのファインダーを覗いて驚いた。すり鉢の底、B2(地下2階)に相当するピッチが余りにも暗いのである。トップ光(真上からの光)は、美女も化け物に映ると言われるほど写真撮影に適していない。しかも、カメラで明るさを測光すれば、観客席よりピッチが暗く逆光状況である。
明らかに、今は使われていない開閉式屋根が悪さをしている。私のカメラ機材や技術ではとても無理な撮影環境であった。(←弁解?)コスト問題なのか補助光も点灯されていなかった。
かくして上の写真の様な光の状態。写真撮影はともかく、アスリートファーストとはとても言い難い。手元暗がりと言うやつだ。しかもゴールエリアは極めて狭く、花園ラグビー場の3分の1くらいだ。
また、後で聞いた話だが、サッカー用に切り揃えられた芝丈は長く、少し力を入れて踏むと捲れ上がったという。とてもまともなスクラムが組めなかったとのことだ。選手は、両チームともサッカー専用球場の悲哀を味わった。
このところ同志社は、上げ潮だった。京都産業大学・明治大学と続く対戦では、積極的に前で止める防御網が確実に機能した。防御から局面を大きく切り返す例の「アタッキング・ディフェンス」は、もはや今シーズンの同志社の特徴になりつつあった。低いタックル、速い集散は、幾度ものターンオーバー実現の原動力になっていた。
しかも慶応大学は、前週対戦した明治大学に較べ、見るからに体格が劣後していた。見た目には、強さを感じる戦術も圧力も個人技も感じることはなかった。
慶應は集散も遅く、バックス展開のスピードも悲しいくらいに遅かった。何もかも同志社が上かと思えた。心配していたスクラムでさえ、同志社が敵ゴール前の相手ペナルティをスクラム選択するまでの余裕を見せた。傍目には負ける要素は全く感じられなかった。
然るに同志社の出来は最悪だった。上げ潮どころの話ではない。さして強くもないと思えた慶応大学の防御ラインを前に、パスミス、ノッコーンを連発(自滅)し、前半早々から受けに廻ったのだ。慶應も決定力がなく、イジイジとフォワード中心に地道に攻めるのみだ。ああ、何たる凡試合!しかもボール保持率は、後半こそ持ち直したものの、前半は同志社4・慶應6程度だと思われた。
前半は双方とも得点のない時間帯が続き、さしたる盛り上がりも感じなかった。大差を確信していた同志社ファンのイライラが募った。典型的な凡試合で、何の迫力もない恥ずかしい限りのダラダラ試合が続いた。
前半も終了間際、ファンのイライラが沸点に達しようとしたその時、局面を大きくブレークするプレーが出現した。自陣深くからターンオーバーしたCTB山口主将④は、敵ディフェンスをステップでかわし、ゴール下へ独走トライし、やっと同志社ファンの留飲を下げしめたのである。(D7:0K)
後半は、早々から同志社ペースとなった。ラインアウトの不安定さは相変わらずだが、スクラムでは、訳の分からぬコラプシングを取られることなく、意外にもむしろ優位に立った。
もうこうなれば、もはや同志社が負けることはないと思えた。展開スピードや寄りは明らかに同志社が上であり、ブレークダウンも優位に推移した。早くも後半1分、敵陣ゴール前のラックからLO服部選手③が飛び出し、ゴールライン上に立ちはだかる慶応のタイガージャージの黄色い壁を、仕事人FL嶋﨑選手③がこじ開けてゴールポスト横に飛び込んだ。(D14:0K)
もうこうなれば、私など「もう一方的な同志社のペースで大差での勝利」と勝手に目論んだが、しかしながら、その後の流れは全く逆。同志社自陣ゴール前で良く見えなかったが、ごちゃごちゃとした(←としか見えなかった)フォワード戦の末、安直にも慶応に2トライを献上し、後半20分には、あれよあれよと追いつかれた。(D14:14K)
その後、同志社はハーフ陣に原田・古城の修猷館コンビを投入、同志社に力強さとスピードが戻って来た。球が大きく動き始めた。
案の定、例のアタッキング・デフェンスにより、FB安田選手④とCTB山口主将④の独走トライに繋がり、勝負を決めた。
イジイジとした閉塞感を一気に切り開いた最大の立役者は、この日2本の独走トライを決めた山口主将に他ならない。それを観れただけでも遠路大阪から豊田市にやって来た甲斐があった。
どうも同志社は、先週の明治戦と7月の天理戦に焦点を合わせていた節がある。その意味で、慶応戦にはさしたる策もなく自然体で対応したのではないかと勘繰ってしまう。ある意味、稀に見る凡試合だったのも止むを得ないのかもしれない。更に、京都→上越→京都→豊田の転戦は、選手に大きな疲れをもたらしていることであろう。
かくして日本最古の101回目のラグビー定期戦は、同志社の勝利で終わった。心地よい勝利とはとても言えたものではないが、強いチームは幾ら出来が悪くても勝つものである。今シーズンの同志社は、そこそこ強いことが証明された。
ただし、所詮は「そこそこの強さ」である。強さが本物かどうかは、来る7月1日に如実に証明されることだろう。そう、今シーズン全国トップクラスの実力と噂される天理大学戦(田辺G)である。外人選手の3名の出場を認めた新制度が、どう影響するのかも楽しみ(不安?)の一つである。
伝統4校は、外人選手を入れない従来路線を踏襲している。正にガラパゴス路線。ジャパンやトップリーグの各チームとは大きく異なる路線だ。
大量の外人選手の導入で強化に余念のない強豪新興大学とも大きく異なる。その意味で明治大学の強さは特筆に値するが、伝統4校の今後の帰趨は大いに楽しみである。差し当たり、来る天理戦に大きな期待と不安が交錯する。
蛇足ながら、先週の明治戦と言い、今般の慶應戦と言い、後半終了間際の自陣ゴールライン付近でのフォワード戦による被トライ、どう考えても余計だった。踏ん張って欲しかったものである。ふぅ~~。 (2018.6.20 文責:F)
以上