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インファーノGT3コラム Vol.1:進化論

2018.06.21 08:00


昨年、1/8スケール GTカテゴリーのブーム火付け役ともいえるインファーノGT2がフルモデルチェンジを遂げ、インファーノGT3に進化を果たした。当時、「次期モデルはショートホイールベース仕様になるのでは?」と予想していたユーザーも決して少なくなかったはずだ。なぜなら、競合他社がリリースする同カテゴリーのマシンをみていくと、いずれもショートホイールベースが採用されており、それが現在では本流と思われているからだ。しかし、インファーノGT3では……

ナビゲーター:京商・宮崎和弘

インファーノGT3開発担当者。EP/GP、競技モデル/ファンモデルを問わず、あらゆるRC モデルの開発に従事する。


アイデンティティは“ロングホイールベース”にあり!

京商が選択したのはインファーノGT2の流れをくんだロングホイールベース仕様だった。そして、この決定こそが「京商の“こだわり”といっても過言ではありません」と宮崎は語る。

「ショートホイールベースのマシンは回頭性や旋回性が高いいっぽう、操縦性が少々シビアで万人向けの安定感に欠けるといわざるを得ません。また、インファーノGTの歴史を辿ると、初代から2代目へのモデルチェンジの際にホイールベースがショートからロングに変更されました。だから、GT3でショートに戻すことは、その歴史を否定することにもなります。正直な話をすれば、GT3ではホイールベースのショート化も検討しましたが、先に述べた理由などから、最終的には“ロングで!”という想いのほうが上回ったということですね。だから、GT3ではロングホイールベースならではの安定感を活かしながら、ショートホイールベースなみの回頭性や旋回性を実現するために、多くの時間をテストに費やしました。それに、ロングホイールベースのほうがボディをカッコよく作れるというメリットもあります。“カッコよさ”もRCカーでは重要なファクターのひとつですからね」。GT2からの流用パーツがほとんどないフルモデルチェンジが行われたGT3。「ショートホイールベース仕様の他社製マシンとも互角以上にわたりあえるだけの高い戦闘力を備えています」と宮崎も自信をのぞかせる。

GT3のベースは1/8エンジンバギーのインファーノMP9 TKI4
世界選手権を8度にわたって制覇した世界最強の1/8エンジンバギー、インファーノシリーズの最新モデル『MP9 TKI4』がベースとなっているGT3。素性のよさは折り紙付き。GT3では、そこに昨今のトレンドを盛り込んだカテゴリー最新スペックを有する。


【ポイント1】重量配分の適正化で全体のバランスが大幅に向上

シャシーのディメンションはGT2(左)とGT3(右)でほぼ同じだが、写真を見てもわかるように、GT3ではすべての搭載物がフロント寄りに配置される。その狙いを宮崎は次のように語る。「GT2は重量配分が若干リア寄りだったため、安定感は高いものの曲がらないのが弱点でした。結果としてタイヤをこじるように操舵するため、タイヤの減りが早かったことも事実。そこで、GT3ではフロントタイヤに仕事をさせるため、重量配分をフロント寄りに変更。この変更でシャシーの重量配分が適正化され、より曲がる特性を得ることができました。また、シャシー後方にスペースがありますよね。このスペースを利用して重量配分の調整ができることもロングホイールベース仕様のメリットです」


【ポイント2】前後デフの軽量化が多くの恩恵をもたらす

ギヤデフ1個あたりの重量がGT2の96.7g(左)に対して、GT3では76.6g(右)と20gの軽量化を実現。「デフは前後でふたつ使いますので、トータルで40gの軽量化になります。単にシャシー総重量が軽くなるだけではなく、回転物であるデフが軽くなることは加速時のピックアップ向上やブレーキの負担軽減など多くのメリットをもたらします。ブレーキフィーリングが最初から最後まであまり変わらないというのは、長時間のレースで大きな武器になりますね」と宮崎は語る。


【ポイント3】あらゆる状況にも対応可能なセッティング幅が広い足周り

GT2でも細かいセッティングは可能だが、最新の1/8エンジンバギーがベースとなっているGT3では足周りのセッティング幅がより広がっていることも特徴。さらに、GT3ではセッティング変更時の“時短”にも配慮がなされている。例えば、ロールセンターやトーの変更ひとつをとってみても、GT2ではサスマウントごとの交換が必要だったが、GT3ではサスマウントに挿入する樹脂製ブッシュを入れ換えるだけで作業完了。このように、GT3ではメンテナンス性も大幅に向上している。

GT3になってサスマウントがブッシュ式に改められたのが大きなトピック。これによりロールセンター、トーの調整がしやすくなり、その調整幅も広がっている。同様にフロントアッパーアームのマウントもブッシュ式となり、キャンバー変化量の調整が短時間で行えるようになっている。


GT2ではCハブの交換が必要だったキャスターの変更も、GT3ではブッシュ交換だけで±1°の範囲で微調整可能に。「短時間でのセット変更もレースの世界では重要」とメンテナンス性にも重きを置く宮崎ならではのこだわりだ。加えて、Cハブ用のピンもEリング固定方式からナット固定方式にして作業性を向上。


GT2のサスアームも“簡単には壊れない”と評価は高かったが、GT3では路面追従性と旋回性能のさらなる向上を目指してMP9 TKI4用を採用。オプションとして長さ違い、硬さ違いのサスアームも用意されているため、走行シチュエーションに合わせた細かいセッティングも可能だ。


アッカーマンの適正化によって高い回頭性を実現したことも特徴のひとつと語る宮崎。「引っ掛かりが少なく、かつ丸く曲がれるように見直しました。ビッグボアダンパーとの相乗効果もあって、路面ギャップの大きいサーキットでも安定したコーナリングが可能です」


【ポイント4】路面追従性が高いビッグボアダンパー

MP9用をベースにショート化した新設計のビッグボアダンパー&スプリングを標準装備。GT2に比べて容量を増やしたことで路面追従性が大幅にアップしていることに加えて、Oリングの交換などメンテナンス性に関してもGT2ダンパーに比べて向上している。


GT2用(左)から4㎜の大径化が行われたGT3用ダンパー(右)。スプリングもGT3専用品となり、オプションとして硬さ違いも発売されているため、セッティング幅も広い。


ダンパーピンはDカットのみのGT2用(左)に対して、GT3用(右)は全周に溝加工がなされており、抜け止め対策も万全。細部にわたって改良されていることにも注目。


KYOSHO CUP 2018  ※インファーノクラス開催予定日程はこちら

7月28日(土)/29日(日)関西大会 奈良県『OSフィールド』
8月18日(土)/19日(日)北日本大会 長野県『しらかば2 in 1サーキット』
9月16日(日)      北海道大会 北海道『オーム輪厚RCサーキット』
11月3日(土)/4日(日)  四国・九州大会 香川県 『ホビーセンターSPK』


次回のインファーノGT3コラム Vol.2 は『デフの組み立て』をお届けします。

お楽しみに!