山水
こんばんは。
高槻市にある、民藝の器、暮らしの道具、食
に関する古書のセレクトショップ、発酵食品
中心のカフェ、テマヒマ
火曜日水曜日は定休日!
プロデューサー,バイヤーの太田 準です。
相馬(福島県)、益子(栃木県)、信楽(滋
賀県)、明石(兵庫県)、野間(福岡)など
で作られていた山水土瓶と言われる土瓶があ
ります。文字通り山や水(河川)などの自然
のモチーフを絵付けした、主に関東一円でご
く普通に使われていた土瓶ですが、中でも益
子の山水土瓶は、濱田庄司が「自分と益子の
縁を結んだ」と述べているような存在。
絵付け師の皆川マスは、1日に500個は普通に
描き、(作り手として、土瓶の景気として)
最盛期には1000個も描いたとされ、仕事を始
めた10代からその生涯で400万個を超す驚異
的な数の絵付けをしたと言います。
柳宗悦は、この土瓶の特徴として、
・決して天才の筆になる絵附ではなく、平凡な無学な者が描いている
・独創的な仕事では少しもなく、自分が生んだ図柄でもない
・稀有な品物ではなくざらにあるものである
・美しさが分って作られたものではない
・展観されたり鑑賞されたりするものでない
・個性の表現など見当らない
・同一のものが無数に反復されている
・安ものの実用品に過ぎない
・労働を伴う汗の多い仕事である
・どこにも落款(らっかん/作り手の銘のこと)が見られない
ことを挙げています。(柳宗悦「民藝紀行・
益子の絵土瓶」より抜粋・編集)
民藝とは何か?を考える時、この山水土瓶に
はそれを分かりやすく説明し、理解する、あ
る意味、象徴的な存在の一つに思います。
山水画は風景画と違って実際の風景というよ
りは想像(創造)の景色であり、山水土瓶で
は、数多くしかも素早く描かれることで、よ
り簡略化、象形化していきます。
柳宗悦は、「写実を越えていわば"絵そら事"を
示しますが、この嘘こそは真実なものの強調
で、美の表現が必然に求める道である」とし
ています。少し話は変わりますが、遠藤周作も「事実」と「真実」とは同じでないと言っ
てたような。
柳宗悦は「反復」して描かれる絵付けににつ
いても、「反復であって反復でない」「いつ
も今描かれている絵」として、少しも反復の
退屈さがなく、筆の跡はいつも新鮮で活々い
きいきしている、決して線も点も眠っていない、と評しています。そして「反復が退屈に
なる場合は、自分と仕事とが二つに別れる時
であります。」と述べています。手仕事でな
くとも、日々の仕事や暮らしの中にルーティ
ーンなもの、反復することはあって、飽きたり、退屈してしまったりすることもあるもの
。この言葉は考えさせられることでもありますね。。
そして、「益子の絵土瓶」の中には時間のことについて書いている一節があります。
手仕事は機械生産の場合の如く、「時間の短縮」を権利として必ずしも要求致しません。むしろ時間を知らぬ仕事、時間なき仕事でありました。この場合「時間がない」というのは、時間の終りなき延長ということではなく、むしろ長短を持たぬ時間の意味なのであります。それ故手仕事においてはしばしば長い時間をも忘れたり、明日が待てず、夜をふかしたり致します。時計のない仕事であります。
以前、テマヒマブログでもご紹介した、芭蕉
布の平良敏子さんの「夜が来なければいいの
に」という言葉にも通じますが、兎角、「時
短」だったり「タイパ(タイムパフォーマン
ス)」が言われる現代、(手仕事でなくても
)時間を忘れて没頭すること、幸せってありま
すよね。
そして、時間を忘れ、描き続けられ、この土
瓶に掛けられた時間は数分数秒かもしれませ
んが、それこそ濱田庄司の「15秒と60年」と
いう言葉のように、積み重ねられた年月がそ
こに込められているのですね。
並のものでありながら、並々ならぬ美しさを
持っている(柳宗悦)、そんな山水土瓶につ
いて長々と書き連ねてきました。益子の山水
土瓶については、皆川マスさんの孫、皆川ヒ
ロさんが2016年に他界したことで後継者を失
ってしまったそうです。
この洗練された図柄を沢山の人に知ってもら
いたいという思いから、陶芸家の岩見晋介さ
んが描き、栗谷昌克さん(オフィスましこの
ね)がデザインしてMashiko Sansui Tシャツ
が生まれ、ご縁があって、テマヒマでもお取
り扱いさせて頂くことになりました。益子以
外では静岡でのイベントを除いてここ高槻の
テマヒマのみでの販売となります。
プリントTシャツ ¥3850(税込)
S(メンズS、レディスM)
バスト97,肩幅41,袖丈19,身丈64cm
M(メンズM、レディスL)
バスト100,肩幅42,袖丈19,身丈67cm
●綿100%●洗濯機OK●バングラディシュ製
6/1(木)より店内で販売致します。通販やお取
り置きも承りますのでお気軽にお問合せ下さい。
これに合わせて、古いモノ・今のモノ展でも
お世話になりました古民芸たつのさんより、
益子山水土瓶を一点お分け頂きました。使用
状況により経年変化が違うのでいつぐらいのものかを判断するのは難しいそうですが、今
残ってものの多くは昭和初期のもので、皆川
マスさんのモノより後だと思われます。是非
こちらも店頭でご覧下さい。少し欠けなどは
ありますが、もしコチラが欲しい!という方がいらっしゃったら、ご相談下さい。
集中してたら時間を忘れて書いていました。
そして思いの他長いブログとなってしまいました。
今日明日は火曜日水曜日で定休日です。
6/1(木)11時オープンで皆様のお越しをお待ち
しております。
それでは、好いモノ、好いコト、好いトキを
テマヒマで。
好い夜をお過ごし下さい。