250年経っても謎・・? 「濃」「淡」「薄」風と光の絵巻「乗興舟」(伊藤 若冲 作 1767年)
(「美の巨人たち」テレビ東京放映番組<2015.3.28>解説より引用)
「自分の絵の価値がわかる人を千年待つ」・・・伊藤若沖が言い遺した言葉である。
当時は、まだカメラの存在しない時代である。しかしながら、ここで描かれているのは、まさに、陰画の世界。長さ11メートルにも及ぶ絵巻。
注目すべきは、光と影が反転している黒一色の世界の中に、グラデーションの技法「拓版画」。「ぼかし」の超絶した技が取り入れられている。
若沖の側近に、京都の友禅染の染色業者がいたことは、ほぼ間違いない。と番組でも紹介されたが、それにしてもどうやっても再現できないと嘆く、現代版画家の言葉が印象に残った。
本作品(千葉市美術館所蔵)は、84歳まで生きた若沖が、50歳のときにはじめて旅らしい旅に出てのち、そこから着想を得て描いた。
その間、京都で観た円山応挙の作品「淀川両岸図巻」に触れ、ならばと、それを超えんとした「挑戦の作品」であったともされる。
(番組を視聴しての私の感想綴り)
写生の緻密さ、正確さ、精巧さにおいては、若沖を超える日本画家は皆無ではないか。
2014年の夏に、日本橋コレド室町で開催されていた「金魚と屏風のプロジェクション・マッピング」での表現描写を思い出した。
見事なグラデーションを、現代的な光のオブジェとして再現していたからである。それは、固定的な絵画ではなく、時間の経過とともに変幻自在に変化する、「ムービング・アート・グラデーション」ともいえる演出であった。
また、京都では、和服着物の艶やかな色彩を、「和硝子」にして再現し、リビングルームや展示会などでのオブジェとした鑑賞作品も拝見した。
光のライティング・グラデーションは、さながら現代版「風と光の絵巻」ともなるのではないか。2020年東京オリンピック・パラリンピックでの「和のおもてなし」にもなるであろうと、想像が膨らんだ・・・
写真: 上「美の巨人たち」テレビ東京放映番組<2015.3.28>より転載。同視聴者センターより許諾済。
下: 「プロジェクション・マッピングによるグラデーション屏風作品」(日本橋コレドにて<2014.8.20 主催者許可により撮影>)