第51回定期演奏会の曲順・構成について
今日は、今回の曲順・構成について、語らせていただきます。
この日、ご来場されない方にとっても、とても大切で有意義な内容と確信しております。
お目通しいただけましたら幸いです。
当夜は
・L.v.ベートーヴェン
弦楽四重奏曲 第11番 ヘ短調 作品95 《セリオーソ》
・L.ヤナーチェク
同 第2番 JW.VII-13 《ないしょの手紙》
・W.A.モーツァルト
同 第18番 K.464 《ハイドン・セット》第5番
です。
モーツァルトの作品が
終曲に配されていることに
???と思われる方が多いのでは。
曲の規模などからは
・モーツァルト 第18番 K.464
・ベートーヴェン 《セリオーソ》
・ヤナーチェク 《ないしょの手紙》
が常套でしょう。
当初、エクセルシオからもこの順で提案されました。
では何故に?
モーツァルトの第18番 K.464は、多くの音楽家、音楽学者、弦楽四重奏愛好家から、モーツァルトの最高傑作の弦楽四重奏曲と評されています。
一方で、モーツァルトの弦楽四重奏曲の中では異質で、愉悦さは影を潜め、 高揚は抑制され、ロマンティズムへの傾きはほんのちょっぴり、哲学的な空気を醸す不思議な、捉えどころが難しい音楽です。
こうした楽曲ですので、来場の皆さまにしっかりと受け留めていただくためには、そうできなくとも、魅力の一片を持ち帰っていただくためには、1曲目に配してはいけない!と思った次第です。
演奏会の開幕曲に際して、オーディエンスは、演奏会の空気に慣れるため、心が落ち着きません。
モーツァルトの第18番 K.464、この魅力に乗っかれないまま、通り過ぎてしまう。
そして、続く2曲では作曲家の濃厚な吐露を体感するのです。
繊細なモーツァルト作品の印象がかき消されてしまう…
そう危惧したのです。
そこで、濃厚な音楽2曲を前半に配して、休憩を挟み、心の転換を十分にはかった後に、モーツァルトの楽曲をお聴きいただこうと。
エクセルシオにそうお願いして、曲順の変更をお願いした次第です。
《エクセルシオに曲順の変更の提案?何て不遜なことを!》と思われましょう。
ですが、オーディエンスがモーツァルトのK.464と対峙できるためには、今回の曲順はこれがベストであり、他の2曲は激情の音楽ですから、前半に聴いても印象は残り続けましょう。
曲順・構成はそれほどまでに大切なのです。
その日の全体の印象を決めるばかりか、それぞれの曲の印象をオーディエンスの心に残すためにも。
また、30年ほどのキャリアでありますエクセルシオにとっても、モーツァルトのK.464はまだ2回目の取り組み。
この室内楽定期演奏会では、満を持してです。
それほど慎重に慎重に重ねる大切な楽曲であります。
私自身、生で体感できるのは、今後、1~2回と覚悟して思っております。
オーディエンスの皆様が、当夜の体感を通じて、モーツァルトのK.464に触れ、曲構成・順の大切を感じて、また一つ成長してくださることを願います。
戦後、日本のクラシック音楽に求められ続けたのは、オーディエンスの成長です。