【流 通】愛知医科大学と東レ ALSに対する薬効評価技術を確立
愛知医科大学(研究開発代表者:祖父江元、研究開発分担者:岡田洋平)と東レは、筋萎縮性側索硬化症(以下 ALS)に対する新薬創出を目指した共同研究を実施し、ALSに対する新薬候補物質の薬効を評価する基本技術を確立した。この技術はALSに対する新薬候補物質の患者に対する有効性を高精度に評価・予測できると考えられ、創薬の成功確率向上や加速につながるものと期待される。
ALSは運動神経細胞が傷害されることによって全身性の筋萎縮と筋力低下が起こり、死に至る難病で(発症後平均余命3〜5年)、日本国内では約1万人の患者がいると推定されている(※1)。またALS患者は病気の進行パターンの個人差が大きく、病態も多様なため、それぞれに対応した実験モデル(※2)の作製が困難であることが、ALS創薬の課題の一つとされていた。
ALS患者の臨床・遺伝情報が集積するJACALS(※3)のデータ解析結果から、病気の進行パターンが4つのグループに分類できることや、各グループの患者数の割合がすでに明らかにされている。
共同研究ではこの4つのグループから患者数割合に従って、30名の患者のIPS細胞(※4)由来運動神経細胞を効率良く作製し、新薬候補物質の薬効を評価する基本技術を確立した。この技術は新薬候補物質がどの病態パターンの患者に対して有効性を示すかを、評価・予測することができると考えられる。したがって特定の患者グループに対して有効性を示す新規ALS治療薬の創出につながることが期待される。
※1 厚生労働省が衛生行政報告例として公表しているALSを対象とした特定医療費(指定難病)医療受給者証所持者数をもとに推定
※2 実験モデル
ヒトの病気の状態を再現した動物や細胞であり、ヒトに投与する前の新薬候補物質の薬効評価に用いられる。
※3 JACALS
(JAPANESE CONSORTIUM FOR ALS RESEARCH)
ALS患者の臨床・遺伝情報の解析を通じて、病態解明と治療法の開発を目指す研究組織(中央事務局:愛知医科大学)日本国内患者2,000名以上の病気の進行パターン等の医療情報を収集・蓄積している
※4 iPS細胞(induced pluripotent stem cell)
身体の様々な細胞に変化できる力を持つ細胞で、人間の血液細胞等から作製できる。ALS患者由来のiPS細胞を用いれば、培養皿のなかで病気の状態を再現することができ、新薬候補物質の薬効評価に有用であることが示唆されている
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