丸編み生地製造という職業にたどり着くまで-3-
編み立て染色とおおまかな工程を実体験を通して学んだ僕は、生地の種類を覚えるべく事務所のハンガーラックの整理に着手する。
サンプルルームのハンガーは当時会社のスタッフが管理しやすいカテゴリーで分けられていた。
企画年度、編み組織、仕入先別など。
今思えばその分け方は、アパレルのお客さんが商談に来る時、提案する側がサッと取り出しやすいようにそうなっていたんだろうと思う。
しかし、商談時にお客さんと話しながら生地を提案していくスタイルをとっていた営業は、あまりおらずお客さんに勝手にハンガーを探してもらうスタイルが多かったと記憶している。
そこで、お客さんが生地を探しやすいグルーピングにしたら良いのではないか?と考え通常業務終了後に三ヶ月くらいかけてハンガーラックの整理を始めた。(その間に無事正社員になれた!)
↑これは2014年にロンドンで展示会した時のハンガーの様子
当時はまだまだペーペーのど素人だったので、生地に詳しくない人が生地を探す時にどういう目線で生地を探すか?ということが理解しやすかった。
この時の作業は、今でも非常に役立っている。
生地を深く理解するためには、生地に興味を持たないとできない。
この作業を通して生地をもっと深く知りたい、おもしろい!と思えるようになったのである。
それともう一つ、この時の「お客さんが生地を探す時の目線」を常に考えるクセがついた。これは後に大きな武器になる。
このハンガーラック整理の作業の後は、上司、先輩のアシスタントをしながら、生地を分解しては糸を撚りほどき、繊維質まで分解して疑問を持った事は質問して吸収していった。
当時の上司はとても出来た人で、生地のことで質問すると「わかんねーから仕入先さんに聞いて俺にも教えてくれ」と言ってあえて僕に調べさせ、知らないふりをして僕の説明を聞いてくれた。
時には仕入先の方に「そんなことも会社の先輩は教えてくれないのか?」と嫌味を言われながらも諦めずに教えを請うことで厚かましさも身についてきた。
こうして、入社した(正社員になった)年の年末に、ついに僕は丸編み生地の営業職になる。
続く