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Evidence Based Physical Therapy - 理学療法士 倉形裕史のページ

私が、珍しく(?)少しプンプンした話:インソール(靴の中敷き)のこと③

2018.06.24 22:00

おはようございます。夢のまち訪問看護リハビリステーション 都賀の理学療法士の倉形です。

前回の続きです。


科学的な根拠についての続きです。

④『インソールの治療効果に関して、膝から上(膝も含む)の関節での効果は期待できない』


議論の完全な決着はついていませんが、徐々に『効果がない』という方向に議論は傾いてきています。

例えば、変形性膝関節症の痛みに対して、マンチェスター大学のチームがまとめたメタアナリシスでは、

(天下の(?)JAMAに掲載された論文です。)

(メタアナリシスは、ざっくりと『現在までの研究論文を決まった手順で集めて、評価したもの』位で捉えてください。)


「変形性膝関節症の痛みに対するインソールの効果に関しては議論がある」としています。つまり、ある程度、質の高い研究を集めるて詳しく見てみると、『効果あり』と結論している研究と、『効果なし』と結論付けている研究の両方があるということです。

「両方があるならインソールを試してみてもいいのでは?」と思われるかも知れません。ですが、少し落ち着いて論文を読み進めると、こうも書かれています。「より緻密にデザインされた研究においては、『効果がない』と結論付けている」と。


ややこしくなったきたので、少し詳しく書くと、

質の高い研究の条件として

 ①患者さんがランダムに分けられている。

 ②片方のグループは調整されたインソールを使い(本当の治療群)、もう片方のグループは調整されていない平なインソールを使う(偽の治療群)。

 ③患者は自分がどちらのグループに振り分けられたかわからない。

という風になっています。


さらに、「より緻密にデザインされた」として、「調整されたインソールは、フラットなインソールの裏側の一部に少しだけ厚みを増すためになんらかの素材を貼り付ける。その素材の分の重みも加えた平なインソールを偽の治療群に使用する」ということを行っています(文は私のが情報をまとめながら意訳してます)。


こんなことを、わざわざするのには理由があります。

その理由は、本当の治療群に振り分けられた患者さんが、インソールのわずかな重みの違いを感じ取って、「あっ、自分は本当の治療群に割り振られたな」と勘付かないようにするためです。


このように意地悪というか( ゚Д゚)、「より緻密にデザインされた研究」では、インソールはプラセボ効果(期待による思い込みで痛みが治ること)を上回る効果が示せていません。つまり、調整されたインソールも平なインソールも痛みの改善効果に差がなかったんです。


この様に、膝関節へのインソールの効果はあまり期待出来ません。


長くなりましたので、今日はここまでにします。次回はさらに上の関節に関して書きます。


今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございました。

理学療法士 倉形裕史