W.A.モーツァルト 弦楽四重奏曲第18番イ長調 K.464 ハイドン・セット第5番
前回の投稿で、当夜の終曲にモーツァルトの第18番 K.464を据えました大切な理由を伝えさせていただきました。今日はその第18番 K.464についてです。
W.A.モーツァルト
弦楽四重奏曲 第18番 イ長調 K.464 《ハイドン・セット》第5番
タイトルの《ハイドン・セット》とは、モーツァルトがハイドンに捧げた6曲の弦楽四重奏曲集のことで、《狩り》や《不協和音》などの名作が連なります。
当夜の第18番 K.464はその第5番です。
《交響曲の父》ハイドンは弦楽四重奏曲の父(=創始者)でもあり、娯楽音楽としてこのジャンルを始め、その繊細な響きから、後に芸術作品へと発展させました。
その一里塚が作品20、作品33(ともに6曲集)で、2つの曲集には8年ほどの隔たりがあるほど、熟成に時間がかかりました。
この2つの曲集に対峙したモーツァルトは、それぞれの回答として、2つの6曲集を書き上げたのです。
《ハイドン・セット》はその後者ですが、このK.464は、モーツアルト自身に大変な思い入れがあるだけでなく、多くの音楽家、音楽学者、弦楽四重奏曲愛好家から神童の四重奏曲の最高傑作と評されているのです。
実はモーツァルトの四重奏曲の中では、異質であるのですが…。
ベートーヴェンはこの曲にしこたま愛情を注ぎました。
自作の初の弦楽四重奏曲集 作品18に、K.464と同じ調性・同じ構成の曲を同じ第5番に据え、モーツァルトからの影響、への敬意を表したほどです。
この画像はウィーンを初めて訪れたベートーヴェンの演奏に耳を傾け、批評するモーツァルトです。
こちらが、この曲の動画です。
第1楽章 高い構成美を有し、理知的な香りを醸す音楽。それは始まりの弱と強の主題が集中的に使われ、この楽章の骨格を築いているからです。
第2楽章 メヌエット、本来、愉悦である音楽ですが、それは影を潜め、対位法を巧みに使って、格調高い音楽を聴かせます。流石です。
第3楽章 長大な主題と変奏。与えられた命題に考察を重ね、煮詰まっていくような哲学的な雰囲気です。短調に転じ、ロマンティズムに熱く傾いた後、突然、遠くからチェロによる太鼓連打。緊張がほぐれて、穏やかな風が抜けます。
第4楽章 壮大!浮遊し、どこへ辿り着くのか?結末は聴き手に宿題を与えるような不思議な幕。
このようなな音楽です。
動画をしっかりと耳に通して、演奏会に臨んでくださいませ。
3倍以上、楽しめます。