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コラム:自動車関税、EUがトランプ氏を懐柔すべき理由

2018.06.24 01:36

コラム:自動車関税、EUがトランプ氏を懐柔すべき理由

REUTERS コラム2018年6月23日 / 08:33


[ロンドン 20日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米大統領が輸入関税を巡り、欧州連合(EU)に対して報復の報復に乗り出した場合、EU側は究極の選択を迫られる。さらに大きな報復措置で対抗するのか、あるいは緊張を和らげるために手を差し伸べるのだろうか──。

欧州のプライドは傷つくが、自動車輸入関税の削減を申し出た方が、経済へのさらなる打撃は避けられるだろう。

緊張を仕掛けたのはトランプ氏側だ。鉄鋼・アルミニウム関税に続き、自動車やトラック、自動車部品への関税も検討している。欧州は鉄鋼関税に対抗し、共和党の地盤であるケンタッキー州の名産品、バーボンウイスキーなどを狙い撃ちする報復措置を打ち出した。トランプ氏が自動車関税も実行に移すなら、EUはまた報復する可能性がある。


事態は悪化させないに限る。

エバーコア・ISIのアナリストらによると、トランプ氏が自動車関税を実施すれば、フォルクスワーゲン(VOWG_p.DE)、ダイムラー(DAIGn.DE)、BMW(BMWG.DE)のドイツ3大自動車メーカーは約53億ドルの打撃を被る。EUがこれに見合う対抗措置をとれば、欧州にも物価上昇という悪影響が及ぶ上、トランプ氏は世界貿易機関(WTO)への提訴にひるみそうもない。

幸い、EU側にはぶらさげられる「にんじん」がある。ツイッターへの投稿から判断するに、トランプ氏が最も不満を抱いているのはEUの米輸入車への関税率が10%なのに対し、米国側の関税率は2.5%にとどまっていることだ。EUのデータによると、実際は昨年EUに輸入された米乗用車65億ユーロのうち、10%の関税をかけられているのは10億ユーロ分にとどまるのだが。しかもフォード・モーター(F.N)など米メーカーは欧州で人気のセダンなどから他の車種に軸足を移しているため、突然ドイツ車をしのぐのは難しそうだ。

自動車関税で譲歩すれば、代償は伴うだろう。WTOの規則では、EUはすべての国に対して関税を引き下げる必要があるため、安い中国の電気自動車(EV)に欧州車の牙城を脅かされかねない。だからといって、最終的に消費者を罰することになる関税引き上げを実施するのは間違った解決策だ。EUは中国が実施しているように、EV投資の促進策を導入した方が良い。

譲歩すればトランプ氏の馬鹿げた行動に褒美を与え、悪しき前例をつくりかねないのも事実だ。しかし米国側が関税を取り下げるという条件をつけ、交渉のテーブルにつかせるための餌として利用するなら、そのリスクは取り除くことができる。いずれにせよ、全面的な貿易戦争に突入するよりは、ましな選択肢となる。

●背景となるニュース

*EUは20日、米国の鉄鋼・アルミニウム輸入制限への対抗措置として、鉄鋼、農産品からオートバイ、バーボンウイスキーに至るまで、25%、総額約28億ユーロの報復関税を課すことを決めた。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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