ペットとのお別れについて考える
タイトルを目にして、「ペットとのお別れなんて、考えたくない」「縁起でもない」
と不快に思われたら申し訳ありません。しかし、残念なことにペットは私たちよりも速く歳をとります。そして、飼い主ならば最後のお別れのときまで責任をとる義務があります。
必ずやってくる愛するペットとのお別れの時に途方にくれてしまわないために、ペットとのお別れについて、少し考えてみませんか?
いつかは訪れる、ペットとのお別れ
獣医学は日々進歩し、一昔前と比べてペットの寿命は格段に延びてきました。これまでは手の施しようのなかった病気でも治療することが可能になったり、予防医療の普及により感染症にかかる確率が減ってきたためです。天寿を全うするペットが増えてきたのはとても喜ばしいことです。しかし、ワンちゃんやネコちゃんはどんなに長生きしたとしても、人よりも早くその一生を終えることには変わりありません。一緒に暮らす時間が長くなるほど、私たちは辛い別れを迎えることになるのかもしれません。
悲しみの心とその変化
長年一緒に暮らしてきた家族である愛するペットが亡くなってしまったら、誰でもそれを冷静に受け止めることは出来ないでしょう。人はこのような強い悲しみに直面した時に、次のような心の動きを見せることが多いといわれています。
1.否定
一番初めは、亡くなってしまったということを受け入れることができません。
まさか、うちの子がこの世からいなくなってしまうなんて、と誰もが考えます。
2.感情の混乱
次に大きな悲しみ、孤独感に襲われたり、「どうしてうちの子が…!」という怒りが芽生えることもあります。「あのときこうしていればよかったのではないか」という後悔の念にとらわれることもあります。
3.無気力
そして、それらのことを考えすぎて今度は何も考えられなくなり、ひどく心が沈んだり、無気力になったりしてしまいます。感情の混乱が落ち着いたからといって、悲しみや苦しみが消えるわけではありません。なかには孤独感が強くなる方もいます。
4.許容
そして時間をかけてゆっくりと死という概念を受け入れ、時間と共に悲しみが癒されていくのです。アメリカの精神科医によると、ペットロス体験者が立ち直るには、約10か月間かかるのが平均的だといいます。
また、死を受け入れるということはペットを忘れるということではありません。ペットとの生活を良い思い出として振り返ることができ、普段の生活に戻れることを言います。
グリーフワークとしての葬儀
しかし、ペットを亡くした悲しみが非常に強かったり、事故などで突然の別れになってしまったなどでその気持ちをうまく処理することができないと、いわゆるペットロスといわれる「うつ」の状態になってしまうことがあります。悲しみから立ち直るためには、自分の悲しいという気持ちを直視し、受け入れ、乗り越えていかなければなりません。この乗り越えるために行う一連の作業のことを「グリーフワーク」といい、ペットを心をこめて葬儀してあげることもまたグリーフワークのひとつです。葬儀を行うことで、死というものを直視し、ペットと過ごした日々を思い出し、同じ悲しみを持った者同士で話をすることで悲しみを共有し、立ち直るきっかけを作るのです。
ペットが亡くなったときにすること
ペットが亡くなったとき、その遺体はどうしたらいいのでしょうか。昔は近所の山に埋めたりしていたこともあるようですが、今はそのようなことは法律で許されていません。
現在、ペットが亡くなってしまったときの対処の仕方は大きく3つに分けられます。
<その1:自宅に埋葬>
前述のように、公園などの共有地や他人の敷地内にペットを埋葬することは法律で許されていません。空き地や山の中だとしても誰かの所有地になりますのでやめましょう。
もし自宅にとても広い庭や土地を所有している場合はそこに埋葬することもできますが、その場合でもいくつか条件があります。
① 埋葬によって土壌や水質に影響を与えないこと
② 他の動物等に掘り返されたり、においが出ないように十分に深く掘って埋葬すること
③ 近隣の建物のそばではないこと
など、くれぐれも気をつけた上でおこなわなければいけません。
ずっと家族と一緒にいられる、家族を見守ってくれるという意味では理想的な埋葬法かもしれませんが、将来的にその土地を誰かに売ることになった場合は掘り起こされてしまう可能性もあります。
<その2:行政に委託>
自治体ではペットの遺体の引取りを行っています。管轄はそれぞれの自治体によって異なり、清掃局もしくは環境衛生課・衛生局などさまざまです。どこが行うのかは各市町村、都道府県に電話で問い合わせてみましょう。しかし、自治体で引き取ってもらった場合、有料ゴミ扱いとなる場合もあります。合同で火葬、供養までは行ってくれても遺骨は返してくれない地域もあるようですので、よく確認をしておきましょう。また逆に、ペット霊園と同じように個別で火葬し、遺骨を返してもらうことができたり、自治体がペット専用の火葬施設を持っておらず、自治体から民間の葬儀社に委託している場合も中にはあるようです。
<その3:ペット霊園>
ペットが家族の一員として扱われるようになった昨今、ペットの葬儀も人と同じように行い、供養してあげたいと思う人が増えました。そしてそれに伴い、かつてはごく一部の宗教施設で行われていたペットの葬儀が今は全国どこでも普通に行えるようになってきました。このように、人の葬儀社と同じような仕事を受け持っているのがペット霊園です。今では全国に1000以上の施設があるといわれています。ペット霊園では遺体を火葬にするだけでなく、葬儀、遺骨の安置、法要まで執り行ってくれる場所がほとんどです。
霊園できちんと葬儀をしたほうがペットとお別れができ、気持ちに整理ができる、と感じる人が多いようです。
ペット霊園での葬儀の流れ
亡くなったペットはお棺に入れ、お別れのセレモニーを執り行います。そしてそのあと、火葬施設で火葬され、遺骨が供養されるのが大まかな流れです。
施設に飼い主さん自身が遺体を持ち込み、すべての葬儀に立ち会うこともありますが、霊園の方に遺体を迎えにきてもらい、全てお任せする例もあります。
<火葬>
ペットの火葬には「移動火葬車」による自宅での火葬と、霊園内の施設での火葬と2通りがあります。移動火葬車は車に火葬施設が積んであり、家のすぐそばで火葬をしてくれます。個別での火葬になるため、遺骨はその場で引き取ることが可能です。
施設内での火葬の場合は、個別で行うことももちろんできますが、合同火葬といって数遺体を同時に行う場合もあります。
<納骨>
骨壷に納められた遺骨はペット霊園で供養をしてもらうか、自宅に持ち帰って供養します。持ち帰った遺骨は家族と一緒の墓地に納めて供養する方もいらっしゃるようです。
合同火葬された遺骨は持ち帰ることができないため、そのままペット霊園の合同供養施設に納めてもらいます。亡くなった後も大勢のお友達と一緒のほうが寂しくないだろうと考える方が合同火葬にされることが多いようです。
メモリアルグッズ
亡くなった後、いつまでもペットを身近に感じていたいという人のためにメモリアルグッズを作ってくれる会社があります。たとえば、写真をもとに肖像画を描いてくれたり、遺骨を納めたペンダントを作成してくれたり、遺骨を原料にしてアクセサリーや置物を作ってくれたりなどです。
メモリアルグッズを作るとことは、いつまでも悲しみから抜け出せない行為のようにも感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、亡くなったペットを何らかの形として残し、ペットと過ごした楽しい日々を思い出すことによって少しずつ悲しみから抜け出せることもあるため、メモリアルグッズを作るという行為もグリーフワークの一つの方法なのです。
それでも悲しみが止まらない時には
もしもペットの葬儀を終えたあといつまでたっても涙が止まらず、気持ちが沈んだままだったり、なかなか眠れないなどの症状があったときには、ペットロスの専門カウンセラーを探してみましょう。悲しみやつらさはとめどなくあふれてくるように感じますが、少しずつでも吐き出していけばゆっくり心が回復してくるはずです。
ペットが亡くなって悲しい気持ちになるのは、それだけそのペットを愛していたということですよね。そして、あなたにそんなふうに愛されたペットはとても幸せだったはずです。そしてペットもまた、あなたの幸せをいつまでも願っていることでしょう。ペットのために涙を流すことはちっとも悪いことではありませんが、涙を出し切ったら笑顔で「いままでとっても楽しかったよ、本当にありがとう」と言ってあげることが、お空に帰ったペットにあなたがしてあげられる最高のことだと思います。