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ケアマネ矢田光雄のひとり言

ケアマネさんは考える

2023.06.09 10:06

人は心の中に空間を持つ自分を(ある時)認識する。以下はイメージである。未分化の心は世界と一体化している。年齢は多分1~3歳だろうが、外部との間に薄い被膜が突然(!)発生する。成長につれその膜は厚みや性質を変える。バリヤのように排他的なものもあれば、細胞膜のように浸透圧を持ち外部との出入りが可能なものもある。中には油と水の混合水のように振れば細かく混ざり合い、しばらくすると水と油の境が見えるようになるといったものもある。

さてその居住空間内で、胚の分裂みたく、これまた突然部屋のようなものがポツポツと出来、少しずつ機能ごとに分かれ、外部の情報はそれぞれの部屋に収納され、加工され、部屋の調度品のように収まるものは収まり、そうでないものはいつの間にか廃棄される。あらゆる情報は(本体は置いてけぼりになって)私仕様になっていく。

本人が知ったら(知ることはないが)迷惑な話である。自分の心の部屋でカスタマイズされた他者は常に現実のそれと比較され評価されるのである。内容によっては嫌な感じどころではないだろう。

ケアマネという職業人は、これが自分の職域で日常的に起こっていると見てしまうのである。で、とりあえずの区分けを2つ用意する。一つはその人が(自分も)他者をどの部屋のどこに、そしてどのように飾っているかを認識しているか。もう一つは、こちらの方が大事なのだが、それを当の他者にどの様に示しているかである。あらゆる関係性においてこの基本構造が存在する、ということからスタートしている。

そして現実と非現実、事実と妄想、距離、立場、愛憎のもつれ、同居人、隣人の存在等無限の要素が絡み合う対人間―間の交流の複雑さに困惑し、しかし、それでも惹かれていくのである。

令和5年6月9日