【事例編】都内で気軽に「地下水熱利用」を体感できる『むさしの自然観察園』
地中熱利用設備導入施設の事例紹介は今回で3件目となりますが、今回は東京都武蔵野市が導入した地下水利用の設備です。誰でも見学でき、体感できる環境教育的な側面からも注目される施設です。【エコビジネスライター・名古屋悟(ECO SEED代表)】
◆ビオトープ利用後の地下水を熱源としてカスケード利用
都内にまた1 つ地中熱利用が気軽に見学できる施設が誕生――。東京都武蔵野市はこのほど、「むさしの自然観察園」(武蔵野市吉祥寺北町3-13)に地下水熱活用空調設備を設置。一般にも公開しており、新たな地中熱利用普及啓発施設として注目されます。
「むさしの自然観察園」の地下水熱(温度差エネルギー)活用空調設備は、園内に汲み上げている地下水から採熱をし、ヒートポンプで冷温熱を作り出しているシステムです(下図:武蔵野市資料より)。
もともと自然観察園内に存在した深さ20 メートルの井戸からくみ上げた地下水の熱を、バタフライケージ内の池を経由した端末の排水池から採り、冷房能力5.6kW、暖房能力5.5kW のヒートポンプ(下写真:ECO SEED撮影)を経由して建物内のパネルヒーターで活用しています。
この冷温熱を触って体感することができるよう、空調方式を冬は温風・夏は冷風が出る既存の壁掛けルームエアコンから、輻射式冷温水パネルヒーター(下写真:ECO SEED撮影)に付け替え、輻射熱を活用した自然環境に近い空調方式となり、冬は日向のような温かさ、夏は木陰のような涼しさを感じることができるとしています。
園内事務局等建物内には「啓発モニター」(下写真:ECO SEED撮影)が設けられ、来園者が地下水熱(温度差エネルギー)利用を理解しやすくしています。武蔵野市では今後、運転データを蓄積し、実際の省エネ効果などの検証も進めていくとしており、注目されます。
武蔵野市は「今回の地下水熱活用システム導入の結果を見ながら、地下水熱活用のみならず、様々な手法で低炭素化社会実現に向けた施策を検討していく方針」としており、今後の取り組みも注目されそうです。
※「むさしの自然観察園」は身近な自然の回復を行う市内の拠点として、自然に関心のある人が自然環境について学ぶ場として2005 年7 月にオープンした施設。ビオトープが設置され、昆虫や植物などを観察できます。
【アクセス】JR 吉祥寺駅北口からムーバス吉祥寺北西循環 28ポケット広場 下車 徒歩約1分
※この記事は土地環境電子媒体「GeoValue」Vol.40(ECO SEED配信)に掲載したものです。
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