Appleから発表された「ITP2.0」について
F.O.Xでコンサルタントを担当しております石田 麻美(イシタ アサミ)です。
今回は先日WWDCで発表されておりました内容のうち
今後の広告計測に影響することが予測される「ITP2.0」についてお話させていただきます。
ITP(Intelligent Tracking Prevention)とは
昨年2017年にAppleからリリースされたiOS 11.0/Safari 11.0 にてセキュリティ強化のために追加された
3rd Party Cookie(アクセス先のドメインとは異なるドメイン)の読み取りを制限する機能です。
Safariブラウザ上のユーザ行動の追跡の制御等が目的となります。
ITP(Intelligent Tracking Prevention)が追加されたことにより、
サイトを横断して情報取得(クロスサイトトラッキング)をしていると判定されたドメインは
サイト閲覧+クリック(interaction)後24時間以内は3rd Party Cookieとして利用が可能ですが、
24時間以上経過後Cookie情報が利用できなくなり、30日経過後にはCookie情報は削除されます。
上記の機能追加により、3rd Party Cookieを利用しての計測やリターゲティングの一部に
影響が及ぶ可能性があります。
※F.O.Xでは3rd Party Cookieではなく、1st Party Cookieを取得して広告流入元の判定を行っているため、
2018年7月現在、広告経由の計測にITPの影響はございません。
ITP機能の設定については、iOS端末上の設定画面>Safari内にて表示されている
「サイト超えトラッキングを防ぐ」項目でON/OFFの切り替えが可能です。
こちらはデフォルトONの設定となっているため、ユーザーが意図的に設定を変更しない限りは、
設定が有効な状態のままになります。
図1:iOS端末での設定画面
ITP2.0とは
2018年のWWDCでAppleから新たにITP2.0が発表され、
Safari 12.0にて、これまでのITP機能がより強化されることとなりました。
AppleのWebKit Security Engineerの方の解説(https://webkit.org/blog/8311/intelligent-tracking-prevention-2-0/)によると、
変更点として以下が記載されています。
・3rd party Cookieが利用不可となる。(これまでは24時間保持されていた)
・ユーザーが許諾した場合にのみStorage Access APIのiframeにて1st party Cookieに情報を格納可能となる。
→ユーザーの許諾はサイト毎に行われ、30日間許諾が無い場合にはデータが削除される。
・トラッキングシステムがクローリングし、ユーザー特定を行っている事を検知した場合には、データを削除する。
また、F.O.Xでも上記情報をもとに、現在公開されているbeta版を使用し、F.O.XでのITP2.0の影響を調査したところ、
現段階では問題なく広告流入元の判定・計測が行われる状況であることを確認しています。
ITP2.0の狙い
WWDC2018では、ITP2.0と同時に今夏Apple search Adsの対象ストアが
日本・韓国・ドイツ・フランス・イタリア・スペインの6ストアでも拡大されることが発表になりました。
AppStoreのWAUは5億UUともいわれており、
Appleではもちろんユーザーのセキュリティ強化を重要と考えているものではあるかと思いますが、
Safariブラウザ上のCookie情報・ユーザ行動の追跡の制御をすることで、
WEB広告からApple search Adsへのシフトを進めていきたいのではないかと考えられます。
iOSでのOS普及スピード
以前当ブログでも記載させていただきましたが、
iOS9リリース当時1週間で約30%、1か月弱で50%に到達するスピードで普及しており、
iOS10,iOS11リリースの際にも同様のスピードで普及していたことから、
iOS12でも同様のスピードで普及していくことが予想されます。
図2:iOS端末のOS普及スピード
アプリ企業が対応すべきこと
3rd Party Cookieの読み取りが制限されるということは、
広告出稿についてCookie情報を使ったキーワードでのリターゲティングは配信量が減少することが予測されます。
従来のリターゲティング広告を補うためにも、F.O.Xなどの「計測ツールで取得しているデータ」や
自社の「ユーザー情報のデータベース」の情報をもとにした配信へシフトしていくことが重要となり、
今後は配信先(メディア)の選定と「休眠日数情報」や「アクション情報」を掛け合わせ、
最も効果的な配信設計を行うことが更に重要となることが予測されます。
F.O.X側では引き続き今後のITP2.0リリースまで動向を追い、計測等への影響について調査を進めます。