土中環境プロジェクトのはじまり
そもそも、山や森林にさほど詳しくない私(編注:土中環境プロジェクト会長)が、「土中環境」という、普通に学校で学んでいる限りでは知り得ない、自然の仕組みを知ることになったかといえば、2021年7月3日に発生した熱海の土石流災害がきっかけです。
その日は、麗花(編注:土中環境プロジェクト会長のお子さん)の誕生日で、車の移動中にその様子を見ていました。熱海は昔から好きで、長期休みのとき神奈川の実家に戻った際は、必ずと言っていいほどMOA美術館へ行くのですが、何度も車や列車で通過したことがある場所を、土石流が流れていったというのは、他人事には思えなかったのです。
土石流災害が発生してから数日経ち、長周新聞に高田宏臣さんの記事が一面に掲載されました。驚いたことに土石流の原因は、雨量だけの問題ではないと書かれていたことです。当時、大手マスコミは、土石流の原因は雨量だと言っていましたので、半ば信じ難かったのですが、高田さんは、さらに崩落現場そばにある本宮社について次のように言及しています。
土石流の起点と終点、一連の谷筋、そして鳥居から本殿へ続く参道と奥の院本宮。まさにこの谷を見下ろす位置に本宮があり、ここが集落にとって大切な環境の要であることを、暗に伝えているようです。
https://www.chosyu-journal.jp/shakai/21377
参禅したり、大学院で仏教思想や日本思想を学んだことはありましたが、神社仏閣がなぜ安全なのか、聖地であるかは、こうも具体的に解説した先生にはお会いしたことがなかったので、「高田さんはホンモノだな」と、生意気にも直感的に思ったのです。
このような高田さんとの出会いと、防災に興味があった麗花の夏休みの自由研究のテーマは、「熱海土石流」に決まりました。
今回は萬福寺の環境調査ツアーをしますが、神社仏閣は祈りの場でもあり、周辺地域にとって大事な
土地の要にあるのはなぜなのか、みなさんと一緒に学びながら、人間と自然の共存について考えていきたいと思っています。