親の背中を子どもは見ている
「本当に、すごいと思ってるんです」
ある高校3年生との進路の面談中、そんな言葉がポロッと彼女の口から出てきました。
彼女が目指しているお仕事は、看護師。そして、それは彼女のお母様のお仕事でもありました。
看護の学校の推薦について話していたのですが、このとき彼女は「お母さんがすごすぎて、私なんかができるかどうか心配…」と少しナイーブになっていました。
たしかに看護師は責任ある大変なお仕事です。そして、彼女のお母様もとてもパワフルで素敵な方。彼女が不安になるのもごもっともです。そして、その不安は、進路を決める上で、今きっととっても大切にしなくてはならないものです。
友達や学校の先生は言ってくれるそうです。彼女の抜群のコミュニケーション力と天性の明るさをもってすれば、きっとすぐに患者さんに愛される看護師になれるんじゃないかと。勉強は頑張る前提でね。
彼女、一度、道端で怪我をしたおばあさんを介抱したことがあるんです。血も出ていたのに応急処置をして救急車を呼んで対応したのです。それって、誰にでもできることではありませんよね。
それでも、まだまだ不安がる彼女。いざというときのために、面談でお母様としていたお話を伝えました。
「でも、そのあなたがすごいと思っているお母様が、あなたもすごい看護師になれると思うって言ってたよ」
目が一瞬まん丸くなった後、確かな輝きを持ったのがわかりました。ああ、それだけお母さんの存在って大きいんだなぁと、なんだかこっちまで感動した瞬間でした。
もちろん、僕としてもお母様としても、無理に看護師にさせたいわけではありません。ただ、「やってみたいけど私には無理かもしれない」という理由で諦めてほしくないだけなのです。
面談で、お母様はこんな風なお話をされていました。
「あの子の人生だから、どうするかはあの子が決めればいいと思います。でも、私もこのお仕事に誇りと愛着を持っているから、あの子が選んでくれたら嬉しいとは思います。大変ですけどね、あの子には向いていると思うんですよ」
実際に働いていて、そのお仕事の酸いも甘いも知っているお母様のお言葉ですから、重みがありますね。
お母様の言葉を伝えてから、彼女の顔が明るくなってきたので、雑談がてら「え?何科の看護師がいいとかはあるの?」なんて話を振ったら、「整形外科か小児科」と即答でした。それ、お母様の影響めっちゃ受けてるじゃん。
もっと突っ込んで「お仕事の内容以外の魅力は?」と訊いたら「安定」と返ってきました。たしかにローンの審査とかでも看護師と学校の先生はすぐ通るっていわれますもんね。これは昨年の面談でも言っていたので本音でしょう。
「私も忙しくて、仕事のことそんなに話す機会はないんですけど」とお母様はおっしゃっていました。でも、やっぱり見ているんですね、親のこと。
後日、「お子様がお母様がすごい!というお話をされてましたよ」と当のお母様に伝えると、「またまた。あの子、外面は良いんですよ」と笑っておりましたが、とっても嬉しそうでした。
子どもたちにとって、一番身近にいる大人が、親。
色んな影響を知らず知らずのうちにやっぱり受けながら育っているんだなぁと、実感して僕も少し嬉しくなったお話でした。
と同時に、自分がもしも親になったときの背中にも気をつけようと心に誓ったのでした。
本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。
良いも悪いもちゃんと見せることが大事なのかも。