「あの日、パナマホテルで」ジェイミー・フォード
このブログでも紹介した「丙午の女」や「マンザ
ナールよさらば」の著者であるJ.ワカツキ・
ヒューストンさんのことをインターネットで調べて
いるときに見つけたウェブサイト「ディスカバー
日系」(リンクは一番下にあります)。そのサイトの
コーナーの一つ「日系アメリカ文学を読む」で
紹介されていた本が「あの日、パナマホテルで」。
原著は2009年1月発売で原題は「On the Corner of
Bitter and Sweet」。ジェイミー・フォード著。
すごいベストセラーになった本で、つい4日前には
ご本人のインスタグラムで57版目が印刷に入った
ことを報告されていました。これは買わねば!
翻訳された日本語版は2011年12月に発売されて
います。
主人公はアメリカはシアトルに住む中国系アメリ
カ人のヘンリー。お父さんは中国で生まれ育って
から移住してきた世代。メインはその男の子と
日本町で生まれ育った日系アメリカ人の女の子の話。
第二次世界大戦前後のシアトルやそこに住む日系
アメリカ人の人たち、それからその人たちがそれ
ぞれの立場から持っている異なる感覚、価値観、
体験、思いを垣間見れることもこの本の素晴らしい
ところだと思います。
この時代背景の本では、いつも強制収容を体験した
日系アメリカ人の人たちの当事者目線からでの本
しか読んだことがなかった。だから同じ時代背景の
話を当事者とは異なる立場の人物から捉えている
この本は自分にはすごく新鮮に映りました。
ディスカバー日系のコーナーに記載されている
紹介文を読んだ時は全然気づいてなかったけど、
オレゴンの語学学校時代にたまに行った(そして
大変お世話になった)日系スーパー宇和島屋が
小説の中で出てきて「うわー!」と一気に懐か
しくなりました。と同時になんか勝手に自分も
長い歴史の中でちょっとだけ、ほんのちょっ
とだけ、この小説に出てくる人たちや物語の
中の一部になったような気にもなったりして。
作者が実はモンタナ在住だということにも
勝手に親近感を抱きました。
そして小説自体はフィクションですが、パナマ
ホテルは実在するホテルで今も営業されている
ことや、ホテルの地下に日系人の方たちが収容所
に持っていけなかったたくさんの荷物が置かれた
ままになっているのも本当のことだと本を読み
終わってから知って、さらにまたグッとこみ
あげてくるものがありました (あとで本の
紹介文読んだら実在するホテルって書いて
あったけど、読む前ってなかなかそういう情報
頭に残らんのかも)。
いつかこのパナマホテルに行けたらいいな。
そして原著を手にいれて今度は英語でこの
物語をもう一度ゆっくり味わいたいです。
素晴らしい一冊でした。