【切ない話】「沖縄行かない?」母が結構しつこく言ってきた訳は・・
2016.01.12 01:11
「沖縄に行かない?」
いきなり母が電話で聞いてきた。
当時、大学三年生で就活で大変な頃だった。
「忙しいから駄目」
と言ったのだが母はなかなか諦めない。
「どうしても駄目?」
「今大事な時期だから。就職決まったらね」
「そう・・・」
母は残念そうに電話を切った。
急になんだろうと思ったが気にしないでおいた。
それから半年後に母が死んだ。
癌だった。
医者からは余命半年と言われてたらしい。
医者や親戚には息子が今大事な時期で、
心配するから連絡しないでくれと念を押していたらしい。
父母俺と三人家族で中学の頃、
父が交通事故で死に、
パートをして大学まで行かせてくれた母。
沖縄に行きたいというのは
今まで俺のためだけに生きてきた母の
最初で最後のワガママだった。
叔母から母が病院で最後まで持っていた
小学生の頃の自分の絵日記を渡された。
パラパラとめくると写真が挟んであるページがあった。
絵日記には
「今日は沖縄に遊びにきた。
海がきれいで雲がきれいですごく楽しい。
ずっと遊んでいたら旅館に帰ってから
全身がやけてむちゃくちゃ痛かった。」
・・・というような事が書いてあった。
すっかり忘れていた記憶を思い出す事が出来た。
自分は大きくなったらお金を貯めて
父母を沖縄に連れていってあげる。
というようなことをこの旅行の後、
言ったと思う。
母はそれをずっと覚えていたのだ。
そして挟んである写真には
自分を真ん中に砂浜での三人が楽しそうに映っていた。
自分は母が電話をしてきた時、
どうして母の唯一のワガママを聞いてやれなかったのか。
もう恩返しする事が出来ない・・・
涙がぶわっと溢れてきて止められなかった。