Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

派遣さんのこと

2010.10.03 23:23

今朝、会社に来るときに品川区長に立候補してる人が演説してた。信号待ちの間にぼんやり聞いてたら「派遣の問題を解消」と言っている。演説全部を聞いてないので、この人が何を言わんとしてたのかわからなかったが、さて、その、派遣雇用の件。ぼくはいま、会社で、製作チームの管理職だ。制作するスタッフは半分以上が派遣社員。この7年、派遣社員をとりまく境遇は大きく変化した。ざっくりに言うと、「派遣社員」という存在が怪しくなってきている。数年前に、偽装請け負いや、派遣切りみたいなことが話題になったが、そのあたりから労働基準監督署や労働局など、公からの通達?の骨子は「派遣社員の地位向上」とか「派遣社員の待遇改善」ではなく結果として「派遣社員という形態そのものをなくす方向」に向かっていると感じる。//意図としては「会社は正社員を雇用しろ」ってことなんだろうけど。こうなった背景のはじまりは、小泉改革のおりの様々な規制緩和施策。業績不振で、おもいきったリストラをせざるを得なくなった企業は正社員を減らしたり単価を下げたり(給与やボーナスカット)あるいは、「有能な人にはたくさんの金を、それなりの人はそれなりに」というように能力給を重視し、全体としての人件費をおさえにかかった。当然、ヒトが足りなくなったり、あるいは、「高い給料の正社員にやらせるべきではない」という まことしやかな理由で 単純な作業を派遣社員で補った。派遣社員は、企業から見ると労働に対する支払いが少なくて済む上に、その個人への保険とか年金などの保証責任がすくない。さらに、好きなときに解約/延長ができる ということで、人件費が変動費化される。これは大きい。反対に、働くヒトから見ると「しんどい社員として、がまんして会社に属して働く」より、「自分の能力(したいこと、できること)だけで、お金をもらえる。」=「そんな生き方はプロっぽくてカッコいい!」と とらえられた上に、「仕事をどんどん変えていける」、あるいは「すぐ辞められる」という気楽さもあって、派遣社員はどんどん増えた。給与も、歩合制・時給のことが多いし、キャリアアップしやすい側面もあった。実際、特殊能力で社員より秀でた派遣社員もたくさんいた。(うちにもいた)かつ、社会人になりたての「自分探し症候群」な若人にとっても有効に機能した。無理して就職活動して正社員雇用されるより、まずは自分の好きな事(たとえば音楽とか)やりながら、将来をゆっくり考えられて、しかも当座の金を得られるというハケンは 実に気楽な選択肢だった。また、派遣会社にとっても、派遣されるスタッフが増えれば増えるほど、そのもうけはふえる。たいがい企業からの支払いの20%-30%が派遣会社に入る仕組み。仮に時給2000円/hだとすると、実際派遣社員に支払われるお金は1600円弱/hくらいか。交通費も支給しない会社もある。簡単に言うと、 ・払いたくない(正社員を雇いたくない)が、指揮命令できる労働力は欲しい会社  ・まじめに働きたくない若人/キャリアップや成果給を求める若者 ・派遣先が増えれば増えるほどもうかる派遣会社で、おおいに繁栄したのだ。しかし!あまりにもめちゃくちゃな派遣社員の扱いをする会社があらわれ(たとえば、クビにするぞ!と脅してサービス残業させたり、 契約内容と全然違う仕事をさせたり。。。)当然、訴える労働者が出たり、病気になったりするハケン社員、事件も頻発。マスコミもこぞって取り上げる。そんなこんな状況の中、//政権が民主党に変わってから顕著なんだけど「正義の政策」、「あるべき論の政策」が行われはじめた。ようは、「企業は正規雇用しないで安い労働力で業務をまかなうのはよくない。もっと正規雇用しろ!」ということか。派遣社員に依託してOKな仕事は、契約した仕事だけ。//たとえば「デザインする人」として契約した派遣社員には  お茶汲みやコピーとりをさせてはいけない とか  営業や打ち合わせに連れて行っては行けない みたいになってきた。これに違反すると企業は派遣社員を雇えなくなるのである!いままで便利にハケン制度を使ってきた企業にとっては痛い話である。いま、企業は派遣社員を雇いにくくなってる。なぜなら「めんどくさい」から。//「ハケンさんを雇うお金がないから」だけではないのだと思う。そうなると、派遣社員だった人は どんどん契約打ち切りとなり再就職先もみつかりにくく、再派遣先もなく、無職状態の人が増えていく....というのが今の状態。この「正義の施策」には「実はハケン労働者はどう思っていたか」という見解がすっぽり抜けていると思う。働いてる人は、たとえばデザインをしながらも、プロジェクトに参画したり、一緒に出張に行き、会議に参加する事で「やりがい」を得ていた人も少なくない。もちろん、給与は正社員より少ないが、社会人経験を積めると思えば妥当だったのだ。安易にハケンという社会人生活を選んだということを、自身でわきまえてる人も多かった。ひどい扱いをした一部の企業のせいで「正義の政策」が行われ、結果、大勢の労働者が職を失うという、何とも悲劇。一説によると、首都圏で1000万人と言われる派遣社員。(ほんとか?)働き先としての大きな受け皿になっているのは明らか。派遣社員採用を控える企業がどんどん増える中再派遣先も無く、ましてや就職先も超氷河期な今、いったいどうなっちゃうんだろう。。。で、一時期、ぼくには何が出来るか? なにか出来ないか? とまじめに考えた。ハケンさんは会社の大事な仕事を一生懸命やってくれている。でも給与は変えにくく、増やしにくい。(仮に派遣会社に支払いを増やしても、本人に還元されるかは、派遣会社しだいだし。。。)ボーナスもなく、GWのように祝日が増えると業務時間が減るので 受け取る給料も減るハケンさん。。。おそらく支払い以上に会社は価値を受け取ってると思う。で、これに報いるには ・彼らにいい会社に再就職してもらう。 ・彼らが社員になりたいと言ってきたとき、正規雇用してもらえるように会社に工面する。みたいなことくらいしか出来ないと思った。なので、どんどんスキルアップできるように、なんでも教え、相談にのり実績としてわかりやすい「おいしい仕事」を彼らにあてがう工夫をした。結果。 6割がた なんとかうまくいったとおもう。いい会社に正社員で再就職していった人が多いし。数名は正社員登用となった。行きがかり上、起業した人もいる。その後、会社のありがたい取引先となった。全員の面倒を見れたとは思わないし、できないけどできるかぎりのことはしたとおもう。今後もしていく。さて、政治家ができることは仕組み枠組みづくりだがしかし、我々が それにすべてをゆだねるのはナンセンスだ。他力本願過ぎる。現場の我々は、考えれば出来ることも実は多い。ぼくのような会社に属する中間管理職が考えるべきは会社の利益と、メンバーの幸福度の 折り合いをつける事だと思う。それもひとつの社会参画だとおもう。