皮膚から毒が入るか入らないか(経皮毒について考える)
カルテNO00341
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海田まつたに鍼灸院
むかしから使われてきた膏薬
その始まりは奈良時代に端を発し
江戸時代後期に蘭学との融合を経て
民間医療も含め、伝統的に
“患部に膏薬(こうやく)を貼る”
という日本独自の文化が根付いていった
1970年代に
日本の西洋医学領域においても
縦・横何cmといった規格にきちんと成形された
成形貼り付け剤型の“パップ剤”が
湿布薬として日本で生まれ多用された
初期の日本の(成形)“パップ剤”は
貼り付けると清涼感(メントール、サルチル酸、カンフル)や
温感(唐辛子の成分であるカプサイシン)を感じさせる成分が
ゲル状の基材に含まれるのみでした
理論的にはこれによる冷感も温感も皮膚感覚のみのものであり
実際、温度的にはほぼ変化ない状況であったのにも関わらず
何故か、患者(日本人)の評判はよく
現場の医師・患者にも強く浸透し受け入れられていきました
1985年頃
日本の西洋医学領域における湿布薬(貼り薬)に関する考え方が変わってきます
従来、飲み薬や注射薬に使用されてきた
化学的な消炎鎮痛物質が成分として
含まれたパップ剤が販売されました
その頃から、貼り薬を
「経皮吸収型製剤」
として位置つけるようになりました
従来、薬物の投与経路は経口(口から薬を飲む)
経静脈(静脈注射、点滴)
皮下、筋肉(皮下、筋肉注射)が殆んどでしたが
本来バリア機能の強い皮膚を
薬物投与経路の一つとしてみなし
パップの基材を工夫することで何とか
消炎鎮痛剤成分を効率よく吸収させ
更には患部のより深い部分へ到達させ
効かせようというDDS
(Drug Delivery System:薬物輸送システム)の概念を
取り入れた製剤が開発され始めました
この、“皮膚を薬物投与経路の一つとしてみなす”という考え方は
ほぼ時を同じくして湿布薬以外の他の薬剤にも応用されるようになり
薬物の種類によっては、局所ではなく、皮膚からさらに浸透した先のリンパや血管を介して血流に乗せ、全身に廻らすことで効果を発揮することが可能ということがわかりました
そしてさらに基材の性能を工夫することで
その薬物の血中濃度維持力を
コントロールすることもできるようになりました
この概念をTTS(Transdermal Therapeutic system: 経皮治療システム)といい
その後、この仕組みを取り入れた製剤が
色々な分野で数多く開発されるようになりました
このような流れから、最近では、貼り薬は
局所作用型貼付薬と
全身作用型貼付薬 (TTS薬)に分類されます
目的は、皮膚を介してできるだけ患部の周辺に深く
薬剤を浸透保持することであり
目的は皮膚を投与経路として薬物を
血管やリンパに届かせて血流に乗せ
全身に作用を発現させることであり
これには喘息治療薬、狭心症薬、降圧薬、認知症薬、更年期治療薬(ホルモン剤)、頻尿治療薬、癌性疼痛に対する麻薬性製剤などがあります
皮膚から毒物が
入るか入らないか
今日はここまで