詩集『根の水』が生まれました
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根の水は 地中の空
わたしたち いのちが
ひとつながりに 息づくところ
ひとしずくを てのひらに
受けとるように
水底のこえに みみを すませるように
うまれた光景 32篇
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わたしはわたしを追跡できない
いましも吐いた みじかい呼気
頬に受けた あまたの雨粒
一朶の雲に見入ったおもいさえも
またたくまにいまへ とけてしまって
「しろつめくさ」より
ひとみはうそをつけない
その一顆は とこしえの総力の萌しだから
ほんとうにものがたれるのは
おもてのだれかでありはしない
「水のうまれるところ」より
いましものびる枝葉を
見あげるたびに
つちのなかのほしくずたち
ゆらめくから
わたしでないものなど
どこにも
ありはしない
「地中の空」より
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目次
* (はてしなくうまれてはきえてゆくもの)
めざめ
ちひろ
あまね
しろつめくさ
万象
残月
ことのは
満天
月あかり
根の水
安堵
* (夜明けまえ)
うてな
重奏
地の銀河
うごかぬ旅
ひとみ
水のうまれるところ
千日の繭
やわらかな空き地
原石
六花
あたたかな結晶
追慕
十六夜
繊月
みずのありか
汀
あさつゆ
返歌
* (地中の空)
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3冊目の詩集、『根の水』がうまれました。
2冊目から2年半、長短でははかれないそのあいだには、水平にも、垂直にも、ほんとうにさまざまなことがあり、それらひとつひとつがひとつながりのようにも感じています。
そのすべてを、『根の水』は、うけとめてくれました。必要としてくださるかたの手に、どうか、届きますようにーー
6月19日から、北鎌倉・喫茶ミンカにて、販売していただいています。見本もありますので、ぜひお手にとってごらんください。
喫茶ミンカの店主さんが装幀デザインを、ミンカスタッフが装画を、手がけてくださいました。カバーにひかれた曲線は作者による描線です。本のカバーと、その上に重ねたグラシン紙は、作者が手作業でつけています。
喫茶ミンカで購入された方には、装幀のために描かれた絵の、特製ポストカードがついています(2種からお選びいただけます)。このポストカードは、購入もできますよ。
お取扱店は「profile」「poetry」ページにて、随時更新しています。
著者:かさいあさこ
装幀:川端美香
装画:こまつばらめぐみ
印刷・製本:株式会社inuuniq
発行:山川草木舎(私家版)
判型:四六判
造本:並製、カバー+グラシン紙つき
※カバーに箔押し(タイトル、著者名、著者による描画曲線)
※カバーとグラシン紙は、作者が手作業でつけています
収録作品数:29篇+序詩2篇+「地中の空」(おわりに)