ベースモルフの呼称と認知 2023.10.18更新
管理人の飼育個体(W&Y RAPTOR) - 撮影:Masa
世界中で販売されるレオパードゲッコーには、様々な表記が与えられます。
例えば
「トレンパーアルビノ」という表記は、t+アルビノのベースモルフの呼称です。
「ブレイジングブリザード」という表記は、トレンパーアルビノとブリザードのコンボモルフの呼称です。
「タンジェリン」という表記は、オレンジ色の表現に対する総称です。
「ブラッド」という表記は、JMG Reptileによるタンジェリンのラインの呼称です。
主にこれら4つのパターンに分類される呼称が混ざり合い、レオパードゲッコーの表記は完成します。
本記事ではこれらの中でも最も基礎知識として必要になる
「ベースモルフの呼称」
を中心に解説を行っていきます。
尚、発展の著しいラインの呼称については下記記事にて解説を行っています。
ベースモルフの特徴については、多くのブリーダーにより検証が行われており、情報の更新が常に行われています。
その為、現在国内で出版される書籍の多くには、情報の遅れや不足、誤りがある状態です。
本記事は、遺伝性の検証が進んだ全てのベースモルフの記載と、認知の誤りを正す事を目的としています。
そして、従来の書籍では敬遠されがちなモルフに紐付いた障害等の問題も含めて全て記載します。
その為、一部の内容は商業ベースにおける販売業者への配慮が行われませんが、多くの飼育者が本種のベースモルフを正しく認知する事を望みます。
本記事は最終更新日までの情報を取りまとめた見解です。
情報の追加、誤りがあった際には、該当箇所の更新を随時行っていきます。
又、作出者情報に併記される西暦はオリジナル個体の誕生年であり、発表年ではありません。
本記事の目的は正しい認知を広げる事にあり内容はフリーですが、商業利用はお控えください。
以下、下記の内容を前提とした関連記事になります。
・多因子遺伝と表記について※現在校正中
[潜性遺伝するベースモルフ]
●エクリプス/Eclipse
LeopardGecko.comより出典 - 2006年の個体
作出者:LeopardGecko.com - Ron Tremper氏 / 2004年
眼と体色、模様に影響を与えるベースモルフで、遺伝性のあるEye mutationとして最初に流通を始めました。
エクリプスの作出者はRon Tremper氏であるというのが一般的な認知ではありますが、2004年以前から同一の表現は流通しており、作出者自体は他におり普及させたのがRon Tremper氏であるとする説もあります。
この説を立証するには、2004年以前に流通したエクリプスと同一表現をした個体による遺伝検証が必要であり、現在までにそのような遺伝検証の報告はありません。
その為、今回はRon Tremper氏を作出者とする主流説に則り記載しています。
現在流通するレオパードゲッコーの多くに、潜在的に含まれているベースモルフの一つです。
[エクリプスのホモ接合体(2copy)の特徴]
1. 殆どの場合、眼に色素が加わる表現をする。
管理人の飼育個体 - 2011年のMack Snow Eclipseの個体(Ron Tremper氏による販売個体)
眼の表現には振れ幅があり、その状態により別途呼称が与えられていますが、遺伝子は全て同じエクリプスです。
・眼に色素が100%加わる状態
⇒ソリッドアイ、フルアイ等
・眼に色素が1~99%加わる状態
⇒スネークアイ、ハーフアイ、パーシャルエクリプス等
・眼に色素が加わらない、0%の状態
⇒アビシニアン、クリアアイ、0%エクリプス等
この内、眼に色素が加わらない状態である"アビシニアン"という呼称については、一時期独立したベースモルフとして扱われました。
しかしながら、遺伝検証が行われる中で実際にはエクリプスである事が判明し、現在ではエクリプスの表現の状態の一つを示す呼称として扱われます。
この特徴は、選別交配によりある程度制御が可能です。
又、各アルビノと組み合わせた場合に極端に光に嫌う個体が生まれる事が報告されますが、この症状はアルビノ側に存在する弱視が原因であると考えられています。
2. 殆どの場合、淡く薄い体色表現をする。
本種のEye mutationは、多くの場合で体色にも影響を与える傾向にあります。
エクリプスには体色を淡く薄くする効果があり、殆どの場合で褪せた色合いとなってしまいます。
この特徴は、選別交配によりある程度制御が可能です。
3. ランダムで、鼻先や首元、手足が白く色が抜けた(パイド)表現をする。
Geckomaniaxより出典 - 2020年の個体
本種にはベースモルフとしてのパイド(部分的な白抜け表現)はまだ存在しませんが、エクリプスに付随したパイド表現を選別交配により広げた、多因子遺伝の形質を持つパイドが存在します。
手足のパイド表現については、古くはホワイトソックスとも呼ばれましたが、この呼称は現在ではあまり使用されません。
この特徴は、選別交配によりある程度制御が可能です。
4. ランダムで、細かいピグメント表現をする。
Geckos by Sophieより出典
同様に細かいピグメントを表現する、後述のブリザード及びマーフィーパターンレスの項目にて解説するダイオライトとは、表現がやや異なります。
この特徴は、選別交配によりある程度制御が可能です。
[エクリプスのホモ接合体(2copy)及びヘテロ接合体(1copy)の特徴]
1.ランダムで、リバースストライプの表現をする。
Geckoboaより出典 - 2013年のReverse Stripe Eclipse 66% het Tremperの個体
本種のEye mutationは、模様にも影響を与える場合があります。
エクリプスはホモ接合体(2copy)及びヘテロ接合体(1copy)において、ランダムでリバースストライプの表現をします。
尚、これらの表現をする=エクリプス(ヘテロ エクリプス)であるという構図ではなく、エクリプスの発生前から存在する表現です。
この特徴は、選別交配によりある程度制御が可能です。
2.ランダムで、パターンレスの表現をする。
Jürgen Wagner氏より出典 - 2016年のMackSnow Eclipse het Tremperの個体
本種のEye mutationは、模様にも影響を与える場合があります。
エクリプスはホモ接合体(2copy)及びヘテロ接合体(1copy)において、ランダムでパターンレス(パターンレスストライプ)の表現をします。
尚、これらの表現をする=エクリプス(ヘテロ エクリプス)であるという構図ではなく、エクリプスの発生前から存在する表現です。
この特徴は、選別交配によりある程度制御が可能です。
Source1:Eclipseについて(Recessiveの項)
以下、Ron Tremper氏によるエクリプスの出自
"Eclipse
In March 2004 the gene for all jet black eyes emerged in the new A.P.T.O.R. project - the ECLIPSE. This exciting new morph expresses the gene for all black-eyes. ECLIPSE hatch with and retain totally black eyes throughout their lives. Their typical pattern is a series of longitudinal rows of black spots or dashes with white feet, lips and nose with freckling while the body is yellow and often combined with a carrot-tail. Some ECLIPSE have greatly reduced body spotting. As of June 2005, there have been no jungle phase or banded phase ECLIPSE produced suggesting that there may be a genetic link or gene combination occurring between the eye color and pattern. Additionally, the thinking at this time, is that the ECLIPSE/RAPTOR is not related genetically to the Super Snows. However, many people think that crossing the ECLIPSE/RAPTOR with a Mack Super Snow will be an interesting experiment. I agree.
The new ECLIPSE mutation was crossed with the Tremper albino gene in order to make the R.A.P.T.O.R. morph."
●ゴールデンアイ/Golden Eye
CsytReptilesより出典 - 2013年の個体(Mack Snow Bell Albino Golden Eye)
作出者:CsytReptiles - Tamás Márta氏 / 2012年
リリースはされておらず、現在は作出者であるCsytReptilesのみが所有します。
眼に影響を与えるベースモルフで、本種に多く存在するEye mutationの一つです。
ゴールデンアイは、CsytReptilesの保有するマックスノーベルアルビノのグループから2012年に出現しました。
この背景から全てのゴールデンアイは、ポッシブルヘテロ ベルアルビノ、ポッシブル マックスノーの状況にあります。
尚、作出者であるCsytReptilesのHP上では遺伝形質についての明言はされていませんが、Ron Tremper氏による最新の著書におけるインタビューにおいて、潜性遺伝の形質を持つと回答しています。
以下、Ron Tremper氏による最新の著書での解説
"Test breedings have since proven that the Golden Eye is a new recessive gene. The numerous small flecks of bright gold across the eye is most impressive with all red eyes."
[ゴールデンアイのホモ接合体(2copy)の特徴]
1. 必ず、眼に色素が加わる表現をする。
CsytReptilesより出典 - 2018年の個体(Bell Albinoを含む)
眼の表現には振れ幅がありますが、上の写真のような眼の中に星を散りばめたような固有の表現を持ちます。
CsytReptilesより出典 - 2015年の個体(Bell Albinoを含む)
中にはエクリプスやマーブルアイ等、他のEye mutationと区別のつかないような表現の個体も存在します。
2. 必ず、体色や模様に影響を与えない。
CsytReptilesより出典 - 2013年の個体(Mack Snow Bell Albino Golden Eye)
本種のEye mutationは、多くの場合で体色や模様にも影響を与える傾向にあります。
ゴールデンアイは体色や模様に影響を与えない数少ないEye mutationと考えられています。
●サイファー/Cipher
Geckoboaより出典 - 2020年の個体
作出者:Geckoboa - John Scarbrough氏 / 2012年
眼と模様に影響を与えるベースモルフで、本種に多く存在するEye mutationの一つです。
サイファーは、Geckoboaの保有する純粋なマーブルアイのグループから2015年に出現しました。
Geckoboaより出典 - 2012年の"Crazy 8"
遺伝検証の結果、2012年に誕生した"Crazy 8"と名付けられた個体がヘテロ サイファーである事が判明し、オリジナル個体である可能性が示唆されています。
この背景から現在流通する全てのサイファーはポッシブルヘテロ マーブルアイであり、表現の近しいEye mutationを二つ含むあまり望ましくない状況にあります。
本家Geckoboaによりサイファーからマーブルアイを分離する試行が続いています。
又、解説の中でCipherに紐づいた先天的な障害は存在しない事が明記されています。
[サイファーのホモ接合体(2copy)の特徴]
1. 必ず、眼はソリッドアイの表現になる。
Geckoboaより出典 - 2020年の個体
眼の表現は必ずソリッドアイとなり、表現に振れ幅はありません。
2. 必ず、ハッチ時にリバースストライプ表現になる。
Geckoboaより出典 - 2019年の個体(上)
ハッチ時に必ずリバースストライプ表現をとります。
本種において同様の特徴をもつエクリプスとは、必ずリバースストライプになる点で特徴が異なります。
尚、このリバースストライプ表現は多くのリバースストライプと同様に、成長後も必ずしも残る訳ではなく、成長と共に失われる場合もあります。
3.体色を濃くする効果を持つ可能性がある。
Geckoboaより出典 - 2020年の個体 "This Cipher has very plain wild type genetics with no color in it's background"
本種のEye mutationは、多くの場合で体色にも影響を与える傾向にあります。
WCBの個体との交配において、明らかにタンジェリン化した個体が得られている事から、サイファーには体色を濃くする効果があると考えられています。
この特徴は現在検証中の段階にあり、確定した特徴ではありません。
●サテン/Satin
BC-reptiles Eublepharisより出典 - 2019年の"Satin"と名付けられた個体
作出者:BC-reptiles Eublepharis - Eelco Schut氏 / 2017年
リリースはされておらず、現在は作出者であるBC-reptiles Eublepharisのみが所有します。
鱗に影響を与えるベースモルフで、遺伝性のあるスケールレスとして最初に発表されました。
BC-reptiles Eublepharisより出典 - "Satin"を産んだ"Pasa"と名付けられたオスと"Masa"と名付けられたメス(2019年)
サテンはマックスノーとエクリプスを含むペアから、2017年に2体出現しました。
この2体はそれぞれ個体名として"Satin"と"Demi"と名付けられており、どちらも黄色色素が減退した表現をしています。
この表現は両親がマックスノーである事に起因し、サテンと紐づいた表現ではありません。
又、現在までにサテンに紐づいた先天的な障害は確認されていない事が、発表されています。
BC-reptiles Eublepharisより出典 - 2020年の"Demi"と名付けられた個体
少しややこしいですが、2017年に誕生した2体のスケールレス(仮称)には、それぞれ個体名として"Satin"と"Demi"が与えられています。
その後の遺伝検証により表現の再現性が得られる中、2021年には鱗の状態に応じた表現の呼称として"Satin"と"Demi"が与えられています。
最終的に、ベースモルフの呼称として"Satin"が与えられています。
[サテンのホモ接合体(2copy)の特徴]
1. 必ず、スケールレスになる。
BC-reptiles Eublepharisより出典 - 2022年のSatin(画像下)
2. 完全に鱗を失う表現と、脇腹に鱗を残す表現が存在する。
BC-reptiles Eublepharisより出典 - 2017年のSatin表現の個体
作出者であるEelco Schut氏は、完全に鱗を失う表現を"Satin"("なめらか"を意味する)と呼称しています。
BC-reptiles Eublepharisより出典 - 2017年のDemi表現の個体
同様に、脇腹に鱗を残す表現を"Demi"("半分"を意味する)と呼称しています。
以下、Eelco Schut氏による2021年の解説
"Demi is french for half.
A Demi has a smooth back but still some tubercless on the sides"
3. 生殖能力を持つ。
特徴として記載するか悩みましたが、他の爬虫類でのスケールレス品種が生殖能力を持たない報告や、作出者であるEelco Schut氏がオス個体の生殖能力について課題としてとりあげていた背景もあり、特徴として記載しました。
2022年の繁殖結果より、オスメス共に生殖能力を持つ事が証明されました。
●トレンパーアルビノ/Tremper Albino
Leopardgecko.comより出典 - 1997年の"Rosie"と名付けられた世界初のTremper Albino
作出者:不明 / 1996年
体色に影響を与えるベースモルフで、遺伝性のあるアルビノとして最初に発表されました。
テキサスアルビノとしても表記されます。
トレンパーアルビノは、野生捕獲のペアから1996年に誕生した"Rosie"※と名付けられたメス個体から始まります。
※Ron Tremper氏により2019年に出版された"LEOPARD GECKO MORPHS"では"Rosy"と記載されますが、今回は同氏が2011年にReptile Magazineへ寄稿した内容から"Rosie"と記載します。
一般的にトレンパーアルビノ = Ron Tremper氏によって作出されたベースモルフと認知されますが、正しくはRon Tremper氏により固定・普及が行われたベースモルフです。
トレンパーアルビノは、南カリフォルニアのブリーダーが所有していたパキスタン産の野外捕獲のレオパードゲッコーのペアから、1996年に誕生しました。
南カリフォルニアのブリーダーは繁殖計画に失敗し、レオパードゲッコーにおける初めてのアルビノを固定化するというプロジェクトはRon Tremper氏へと委任されました。
LeopardGecko.comより出典 - 1998年の"Bubba"
"Rosie"は残念な事に虚弱体質であり、結果として1匹も子供は得られないまま1997年頃に死亡しました。
その為、この"Rosie"の兄弟であった"Bubba"と名付けられたノーマルのオス個体が、Het Tremper Albinoである事に期待され検証が進んでいきました。
その後、無事1999年の4月中旬にTremper Albinoが再度得られた事により、今日までこのベースモルフが維持されています。
現在流通するレオパードゲッコーの多くに、潜在的に含まれているベースモルフの一つです。
LeopardGecko.comより出典 - 2000年の個体
又、作出者であるRon Tremper氏による最初期の販売個体は、現在流通する個体よりも随分と黄色味が強かった事が伺えます。
これは市場で流通する多くのレオパが潜在的にタンジェリン化が進んだ結果として、多くのトレンパーアルビノもタンジェリン化が進み生まれた差であると考えられます。
[トレンパーアルビノのホモ接合体(2copy)の特徴]
1. t+アルビノ(チロシナーゼポジティブ アルビノ)である。
現在、レオパードゲッコーに存在する全てのアルビノは全てt+アルビノであり、t-アルビノ(チロシナーゼネガティブ アルビノ)は存在しません。
その為、ある程度のメラニン色素を生成する事が可能であり、純白に赤目というウサギのようなアルビノではありません。
リリース初期の個体には極端な弱視の問題がありましたが、現在ではある程度解決しています。
2.孵化温度により色素沈着を起こす。
「高温で孵化した場合に明るく薄い体色となり、低温で孵化した場合に暗く濃い体色となる。」
という説は、本種においてよく話題となり賛否両論ですが、これまでの歴史を振り返る限りでは、ことトレンパーアルビノはそのような特徴を持っていると言えます。
実際にRon Tremper氏もこの説を提唱し、美しいアルビノを産む為の手法として紹介されています。
これらは"Tremper method"と呼ばれ賛否両論を呼びました。(基本的には未熟児や奇形児の原因となったケースが多く報告され、意図的に高温で孵化を行う手法ついては否定的な意見が多いです。)
尚、色が明るく薄い体色=高温孵化でなければ出現しない。という構図にはならず、あくまでもトレンパーアルビノの特徴の一つとして、高温で孵化した場合によりメラニン色素を失うという考え方の方が、実際に近いと考えられます。
以下、Ron Tremper氏による視力についてのQ&A
"Q. Why do albinos seem to shy away from light or act like they are blind?
A. Albinos are sensitive to light and need to be 3-4 months old to get used to light. They are very able to catch crickets in low light conditions and mostly feed in dim light when young. Turn off room lights when feeding. "
以下、Ron Tremper氏によるTremper methodについて
"Q) If low temps produce dark colored albinos how can I produce light colored albino females?
A) Sex in leopard geckos is determined within the first 3 weeks of incubation. So if you let albino eggs experience 78-83F for 22 days that will lock in the female sex and then you merely move those female eggs to a constant 90F for the remainder of incubation to get the best looking possible female offspring."
●ノワールデジール/NDBE(Noir Desir Black Eye)
CoolLizard.comより出典 - 2016年の"Lavinia"と名付けられたMandarin Tangerine NDBE
作出者:Gecko Genetics - Jason Haygood氏 / 不明
眼と体色に影響を与えるベースモルフで、本種に多く存在するEye mutationの一つです。
CoolLizard.comより出典 - 2015年の"Tabasco"(CoolLizard.comにおいて、初めてNDBEのホモ接合体を生んだ♂親のMandarin Tangerine Het NDBE)
ノワールデジールの作出者であるGecko Geneticsはこのベースモルフの発現に気付かず、偶然ヘテロ接合体(1copy)を入手したGeckoboaとCoolLizard.comにより遺伝性の検証及び固定が行われました。
その為、このベースモルフの命名者はCoolLizard.comとなっており、Gecko Geneticsによりノワールデジールとして販売された個体は存在しません。
又、ノワールデジールの固定を行ったブリーダーの一人であるGeckoboaは、後述の遺伝性疾患の点から本モルフより撤退しています。
[ノワールデジールのホモ接合体(2copy)の特徴]
ノワールデジールは、ハッチ時にはソリッドアイの表現をします。
その後、成長に伴い殆どの個体がムーンアイと呼ばれる固有の表現へと変化します。
ソリッドアイの状態を維持する例も報告されており、眼の表現には多少の振れ幅があります。
尚、殆どの個体はムーンアイへと変化する過程で視力が低下・喪失する問題を抱え、ノワールデジールに紐づいた遺伝性疾患の一つとして数えられます。
2. 殆どの場合、両側若しくは片側の眼球が小さく産まれる。
ノワールデジールに紐づいた遺伝性疾患の一つです。
この特徴は、選別交配によりある程度制御が可能です。
CoolLizard.comより出典 - 2015年の"Lavanda"と名付けられたMandarin Tangerine NDBE
本種のEye mutationは、多くの場合で体色にも影響を与える傾向にあります。
ノワールデジールには体色を暗く濃くする効果があり、タンジェリンやメラニスティック等の表現と相性が良く、主に交配されています。
この特徴は、選別交配によりある程度制御が可能です。
又、この特徴はヘテロ接合体(1copy)にも発現する可能性が論じられています。
4. 必ず、メスが不妊体質となり有精卵を産む事が出来ない。
ノワールデジールに紐づいた遺伝性疾患の一つです。
この問題は解決はされておらず、ホモ接合体のメスは基本的に繁殖に用いる事は出来ません。
ここまでに記述した眼に関する問題と、不妊に関する問題を踏まえ、多くのブリーダーが取り扱いを停止しています。
これら遺伝性疾患の詳細については、NDBE(ノワールデジール)の特異性記事にて個別に解説を行っています。
以下は余談となりますが、本モルフの体色を暗く濃くする効果には大きな期待が集まり、上記の遺伝性疾患が露見するまでの間、世界中で盛んに繁殖が行われました。
初期の流通背景から"マンダリンタンジェリン"の呼称が与えられた個体には、表記されていないだけでNDBEを含んでいる可能性があり、このベースモルフが必要でない場合の導入には注意が必要です。
Source4:NDBEの障害について(Recessiveの項)
●ブラックアイ/Black Eye
国内ブリーダー I氏より出典
作出者:国内ブリーダー I氏 / 2000年頃
リリースはされておらず、現在は作出者である国内ブリーダー I氏のみが所有します。
眼と体色に影響を与えるベースモルフで、本種に多く存在するEye mutationの一つです。
ブラックアイは、2000年代初頭に国内へ輸入された野生捕獲の個体を発祥とするベースモルフです。
尚、呼称は暫定的なものであり、今後変化する可能性があります。
その他詳細については、ヒョウモントカゲモドキ品種図鑑にて解説が行われています。
[ブラックアイのホモ接合体(2copy)の特徴]
1. 必ず、眼はソリッドアイの表現になる。
国内ブリーダー I氏より出典
眼の表現は必ずソリッドアイとなり、表現に振れ幅はありません。
2. 必ず、黄色色素を減退させる効果を持つ。
国内ブリーダー I氏より出典
黄色色素を減退させる効果があります。
尚、黄色色素をある程度保つ個体も存在する事から、あくまでも黄色色素の減退が効果であり、欠乏ではありません。
本種におけるスノーの一つとして分類されるかどうかについては、今後の検証が待たれます。
●ブリザード/Blizzard
準備中…
より出典 - 年の個体
作出者:Prehistoric Pets - Jay Villa氏 / 1995年
眼と体色、模様に影響を与えるベースモルフで、遺伝性のあるパターンレスモルフとして二番目に発表されました。
現在流通するレオパードゲッコーの多くに、潜在的に含まれているベースモルフの一つです。
Prehistoric Petsより出典
初期に誕生したベースモルフの一つでありますが、作出者であるPrehistoric Petsによる販売個体と現在流通する個体を比較しても、さほど大きな特徴差は感じられません。
[ブリザードのホモ接合体(2copy)の特徴]
1. 必ず、パターンレス表現になる。
ブリザードは、ハッチ時から完全なパターンレスであるという点で、表現の近しいマーフィーパターンレスと特徴が異なります。
又、比較的白い個体が多いという点でも特徴が異なりますが、完全な白色パターンレスという訳ではなく、多くの個体は成長に伴い黄色味を帯びます。
この特徴は、選別交配によりある程度制御が可能です。
2. ランダムで、遺伝性の無いエクリプス表現をする。
Pet Guruより出典 - 2018年の個体
実際の表現としては、マーブルアイが最も近いです。
ブリザードによる眼の表現について、遺伝制御に成功したラインは現在までに存在せず、基本的には遺伝性のない特徴となります。
3. ランダムで、遺伝性の無い黒いパラドックススポット表現をする。
Pocket Dinos Designer Leopard Geckosより出典 - 2012年の個体
レオパードゲッコー全体でのパラドックススポット(=遺伝性のないピグメント)の報告は多いですが、ブリザードでの報告例は特に多い傾向にあります。
ブリザードによるパラドックススポットについて、遺伝制御に成功したラインは現在までに存在せず、基本的には遺伝性のない特徴となります。
4. ランダムで、神経質で野生的な面を持つ気性の荒い個体を発生させる。
ベースモルフと気性がリンクするこの特徴は、ブリザード固有のものです。
尚、この特徴は単一のブリザード個体が多く流通した時代に報告が相次いだ背景があり、現在のようにコンボモルフの構成要素の中にブリザードが含まれる個体が多く流通する中での報告数はあまり多くありません。
この特徴は、多重コンボ化することで消失するのか、或いはオリジナルとなった個体から20年以上の累代繁殖が続く中で失われつつあるのか。
遺伝制御に成功したラインは現在までに存在せず、この特徴の詳細は不明です。
[ブリザードのヘテロ接合体(1copy)の特徴]
1. ランダムで、ダイオライト※と呼ばれる非常に細かいピグメントを持つ表現をする。
Ramsey's Reptilesより出典 - 2020年のダイオライト表現の個体(Mack Snow het Blizzard)
ランダムで、全身に細かなピグメントを表現し、ダイオライトと呼称されます。
この特徴は、選別交配によりある程度制御が可能です。
ダイオライトの詳細ついてはラインの呼称と認知記事にて解説しています。
Source1:遺伝性の無いエクリプスアイについて(現在アクセス不可の為以下に原文)
以下、Kyle Johnson氏創設のLeopard Gecko Wiki内での記述
"Blizzard Eclipse
The Blizzard Eclipse trait also randomly popped up in Blizzard groups. As of right now, there seems to be nothing genetically behind the Blizzard Eclipse. When breeding two Blizzard Eclipses, non Eclipse Blizzards can be produced as well as Snake Eyed Blizzards and Blizzard Eclipses."
●ブルーアンバーアイ/Blue Amber Eye(B.A.E.)
LeopardGecko.comより出典 - 2019年の個体(レインウォーターアルビノを含む)
発表者:LeopardGecko.com - Ron and Helene Tremper夫妻 / 2014年
眼に影響を与えるベースモルフで、本種に多く存在するEye mutationの一つです。
B.A.Eは、Ron and Helene Tremperが取り組むレインウォーターアルビノのプロジェクトから2014年に出現しました。
インフォメーションではノンヘテロである事が強調されますが、Didiegecko AFTの繁殖結果から、エクリプスの出現が報告されています。
この背景から現在流通する全てのB.A.E.はポッシブルヘテロ エクリプスであり、表現の近しいEye mutationが二つ含まれるあまり望ましくない状態にあります。
[B.A.E.のホモ接合体(2copy)の特徴]
1. 必ず、眼は深く暗い青みがかった色になる。
Baron Kevin氏より出典 - 2021年の個体(レインウォーターアルビノを含まない)
眼の表現は必ず、深く暗い青みがかった色になります。
インフォメーションで強調されるほど、青みを実感する事は難しく、エクリプス等の他のEye mutationと比較する事で表現の差を感じる事が出来ます。
●ベルアルビノ/Bell Albino
Geckoboaより出典
作出者:Reptile Industries - Mark and Kim Bell夫妻 / 1999年
体色に影響を与えるベースモルフで、遺伝性のあるアルビノとして三番目に発表されました。
国内ではフロリダアルビノとしても表記されますが、海外でこの呼称をみかける機会は殆どありません。
[ベルアルビノのホモ接合体(2copy)の特徴]
1. t+アルビノ(チロシナーゼポジティブ アルビノ)である。
現在、レオパードゲッコーに存在する全てのアルビノは全てt+アルビノであり、t-アルビノ(チロシナーゼネガティブ アルビノ)は存在しません。
その為、ある程度のメラニン色素を生成する事が可能であり、純白に赤目というウサギのようなアルビノではありません。
2. ランダムで、遺伝性の無い乱れた虹彩表現をする。
Artifactより出典 - 2019年の個体
ランダムで、虹彩表現が乱れ、既存のEye mutationのいずれとも異なる表現をします。
ベルアルビノによる眼の表現について、遺伝制御に成功したラインは現在までに存在せず、基本的には遺伝性のない特徴となります。
3. 存在するアルビノの中で最も黒色色素が残り、茶色いピグメントを多く有する。
ベルアルビノはチロシナーゼの活性度が最も高いアルビノであり、メラニン色素が多く生成される傾向にあります。
尚、全てのアルビノは選別交配により色素を濃くも薄くも制御する事が可能であり、外見的特徴のみからベルアルビノと判断する事は不可能です。
4. パターンレス化する事が難しく、多くの個体は成長の過程でピグメントを発生させる。
Geckos Etc. Herpetocultureより出典 - 2006年のBell Albinoの個体
ベルアルビノのベビーは成長に伴いピグメントを出現させる傾向が特に顕著であり、ブリザードやマーフィーパターンレス等のパターンレス化するベースモルフを用いず、ピグメントを消す事が特に難しいアルビノです。
Artifactより出典 - 2021年のRADAR(Bell Albino Eclipse)の個体
しかし、近年では安定してパターンレス化に成功したラインがいくつか存在しています。
ある程度難易度は高いものの、この特徴は選別交配によりある程度制御が可能です。
●マーフィーパターンレス/Murphy Patternless
Golden Gate Geckosより出典
作出者:Pat Murphy氏 / 1991年
体色と模様に影響を与えるベースモルフで、遺伝性のあるパターンレスとして最初に発表されました。
リューシスティックとしても表記されますが、海外においてはあまり一般的な呼称ではありません。
リリース初期の個体には一枚目の写真のように尾先が曲がる問題がありましたが、現在は殆ど解決しています。
現在流通するレオパードゲッコーの多くに、潜在的に含まれているベースモルフの一つです。
[マーフィーパターンレスのホモ接合体(2copy)の特徴]
1. 必ず、パターンレス表現になる。
マーフィーパターンレスは、ハッチ時には独特の模様を表現するという点で、表現の近しいブリザードと特徴が異なります。
又、ある程度下地となったレオパードゲッコーの表現に影響を受けるという点でも特徴が異なり、近年ではタンジェリンやメラニスティックとも組み合わせられています。
2. 必ず、ベビー時には独特の模様を表現し、成長に伴い消失する。
CsytReptilesより出典 - 2013年の個体
この独特の模様は、マーフィーパターンレス固有の表現です。
とても魅力的な表現であると個人的には考えますが、ベビー時の一時的な表現であり、成長に伴い必ず失われます。
[マーフィーパターンレスのヘテロ接合体(1copy)の特徴]
1. ランダムに、ダイオライト※と呼ばれる非常に細かいピグメントを持つ表現をする。
Jürgen Wagner氏より出典 - 2014年のダイオライト表現の個体(Mack Super Snow het Murphy Patternless)
ランダムで全身に細かなピグメントを表現し、ダイオライトと呼称されます。
この特徴は、選別交配によりある程度制御が可能です。
ダイオライトの詳細ついてはラインの呼称と認知記事にて解説しています。
●マーブルアイ/Marble Eye
SaSobek Reptilesより出典 - 2010年の個体
作出者:A&M geckos - Alberto Candolini氏 / 2006年
眼に影響を与えるベースモルフで、遺伝性のあるEye mutationとして二番目に流通を始めました。
エクリプスとの交雑が進んでおり、純粋なマーブルアイの入手経路は限られます。
マーブルアイはA&M GeckosのAlberto Candolini氏により初めて生み出されましたが、同氏はそれに気付いていませんでした。新しいベースモルフである事に気付き、固定を行っていったのはSasobek ReptilesのMatt Baronak氏です。
[マーブルアイのホモ接合体(2copy)の特徴]
1. 殆どの場合、眼に色素が加わる表現をする。
ベースモルフ名の通り、マーブル柄に眼に色素が加わる事が特徴の一つです。
表現には振れ幅がありますが、表現の近しいエクリプスと異なり別途呼称が与えられる事はありません。
しかしながら、エクリプスに続く多くのEye mutationがそうであるように、その状態については多くの場合エクリプスで用いられる呼称を踏襲します。
例:眼に色素が100%加わったマーブルアイ ⇒ ソリッドアイ マーブルアイ
2.殆どの場合、体色や模様に影響を与えない。
Impeccable Geckoより出典 - 2019年のMack Super Snow Marble Eyeの個体
本種のEye mutationは、多くの場合で体色や模様にも影響を与える傾向にあります。
マーブルアイは体色や模様に影響を与えない唯一のEye mutationと考えられています。
報告数は少ないながら、上の写真のように模様に影響を与えた例もある事から、今回は「殆どの場合」と解説します。
●レインウォーターアルビノ/Rainwater Albino
Geckoboaより出典
作出者:Rainwater Reptiles - Tim Rainwater氏 / 1998年
体色に影響を与えるベースモルフで、遺伝性のあるT+アルビノとして二番目に発表されました。
ラスベガスアルビノとしても表記されます。
存在する三つのアルビノの中で、視力に関する問題が最も軽微です。
又、オリジナル個体が野生捕獲のアルビノ個体であり、これはレインウォーターアルビノだけが持つ背景です。
余談ではありますが、Rainwater Reptilesの販売する爬虫類は全体的に状態が悪かった事が報告されており、2000年時点で顧客からの信用が失墜していた様子が伺えます。
これに付随する形で、レインウォーターアルビノはその存在自体が疑われていた時期もあります。
このような背景も、二番目に登場したアルビノでありながら市場流通量が大きく出遅れた要因の一つであると考えられます。
[レインウォーターアルビノのホモ接合体(2copy)の特徴]
1. t+アルビノ(チロシナーゼポジティブ アルビノ)である。
現在、レオパードゲッコーに存在する全てのアルビノは全てt+アルビノであり、t-アルビノ(チロシナーゼネガティブ アルビノ)は存在しません。
その為、ある程度のメラニン色素を生成する事が可能であり、純白に赤目というウサギのようなアルビノではありません。
Source1:Rainwater Reptilesについて
以上、潜性遺伝するベールモルフについて
[顕性遺伝するベースモルフ]
●アルビースノー/Albey Snow
Impeccable Geckoより出典 - 2020年の個体
作出者:不明 - 不明 / 不明
発表者:Impeccable Gecko - Miles Schwartz氏 / 2020年
体色に影響を与えるベースモルフで、遺伝性のあるスノーとして三番目に発表されました。
表現の近しいマックスノーとは、ホモ接合体(2copy)とヘテロ接合体(1copy)の表現が同じであるという点で特徴が異なります。
しかしながら、同じく表現の近しいGEMスノーとは外見から区別する事は困難であり、注意が必要です。
既存のスノーとして知られるマックスノーとGEMスノー(TUGスノー)の2つのスノーは複対立遺伝の関係にある事が既に判明しており、アルビースノーについても同じ遺伝子座における変異であるかどうかは検証の結果が待たれます。
尚、発表者としてImpeccable Geckoを記載しますが、作出者については不明です。
理由は以下の通りです。
Albey Snowは、Albey's Line Bred Snow(ライン)から出現した可能性が高いと考えられています。
Albey Snowを発表したImpeccable Geckoは、Albey's Line Bred Snow(ライン)をSasobek Reptilesより親個体を導入しています。
Sasobek Reptilesは、Albey's Line Bred Snow(ライン)をAlbey's "Too cool" Reptilesより親個体を導入しています。
Albey's "Too cool" Reptilesは、Albey's Line Bred Snow(ライン)を作出するにあたって、A1 Reptilesの販売したSnow Leopard Geckoを用いています。
このA1 Reptilesが販売したSnow Leopard Geckoは、野生個体を原資としています。
これらの背景から、Albey Snowはどの時点で出現したかが分かりません。
[アルビースノーのホモ接合体(2copy)とヘテロ接合体(1copy)の特徴]
1. 必ず、黄色色素を減退させる効果を持つ。
レオパードゲッコーに存在するベースモルフとしてのスノーの一つであり、黄色色素を減退させる効果があります。
表現の近しいマックスノーのヘテロ接合体(1copy)及び、GEMスノーと外見的特徴で区別する事は殆ど不可能です。
ベビー時には美しいモノトーンの表現をしますが、殆どの個体は成長に伴い少しずつ黄色を発色させる傾向にあります。
この特徴は、選別交配によりある程度制御が可能です。
●エニグマ/Enigma
管理人の飼育個体(Tangerine Enigma) - 2019年の個体
作出者:Reptile Industries - Mark and Kim Bell夫妻 / 2006年
眼と体色、模様に影響を与えるベースモルフです。
エニグマはReptile IndustriesのMark and Kim Bell夫妻によって初めて生み出され、H.I.S.SのKelli Hammack氏と共同で固定が行われました。
ホモ接合体(2copy)は亜致死となり、極端に孵化率が落ち込む事からエニグマ同士の交配は推奨されません。
ホモ接合体(2copy)とヘテロ接合体(1copy)に表現差はなく、前述の事情から流通個体の殆どはヘテロ接合体(1copy)です。
[エニグマのホモ接合体(2copy)及びヘテロ接合体(1copy)の特徴]
1. 殆どの場合、エニグマシンドローム(ES)と呼ばれる神経障害を抱える。
エニグマに紐づいた遺伝性疾患の一つです。
エニグマシンドローム(ES)と呼ばれる神経障害は、症状に程度はありますが、重度の個体では回転行動、ひっくり返る、捕食困難、歩行困難、不自然に痩せる等の問題を引き起こします。
又、健常に思えたESが軽微な個体であっても、繁殖行動を取る事で急激に悪化する例が報告されます。
ESについては異なる二つのシンドローム記事にて個別に解説を行っています。
尚、このESについては、エニグマの登場以来多くのブリーダーにより切り離し作業が試みられましたが、全ては失敗に終わっています。
スイス等の一部の国では繁殖そのものが禁止され、その他の国でも多くのブリーダーが取り扱いをやめています。
2. ランダムで、虹彩に赤色が加わる表現をする。
Geckos Etc. Herpetocultureより出典 - 2015年のRed Spotted Enigmaの個体
ランダムで、虹彩が赤~琥珀色となる場合があります。
この特徴は、選別交配によりある程度制御が可能です。
3. 殆どの場合、模様に影響を与える。
Geckos Etc. Herpetocultureより出典 - 2015年のSykes Emerine Enigmaの個体
表現の振れ幅は大きく、表現の近しいW&Yと似た表現をする場合があります。
横腹から背中に向けて、色が入らない白い部分がせり上がる事も特徴の一つであり、この表現はホワイトサイドとも呼称されます。
又、キャロットテールの表現を阻害する効果があるのか、フルキャロットテールのエニグマは現在までに作出されていません。
Source3:ESはエニグマから切り離せないという記述(Enigmaの項)
Source4:当時のES切り離しに対する試行(リンク先で触れられる独立したESという遺伝子は存在しません)
●コハクアイ/KOHAKU Eye
Affectionより出典
作出者:Affection - 松永 広美氏 / 2020年
眼に影響を与えるベースモルフで、本種に多く存在するEye mutationの一つです。
体色と模様に影響を与える可能性があります。
コハクアイは、Affectionの保有するエクリプスとラプターの交配から2020年に出現しました。
本種に存在するベースモルフとしては唯一(若しくは2例目)、表現を発現する為に前提となるベースモルフが必要となります。
エクリプス+コハクアイの2重コンボの状態で初めて表現を発現し、エクリプスを含まない場合には眼の表現に変化を与えません。
他のEye mutationとの互換性については、検証の必要があります。
[コハクアイのホモ接合体(2copy)及びヘテロ接合体(1copy)の特徴]
1. 殆どの場合、眼に色素が加わる表現をする。
Affectionより出典
殆どの場合、虹彩に琥珀色の表現が加わります。
表現には振れ幅があり、眼全体に琥珀色の表現が広がる個体や
Affectionより出典
部分的な表現に留まる個体、
Affectionより出典
眼に色素が加わらない個体が存在します。
この表現の振れ幅についてコハクアイの特徴であるのか。前提となるベースモルフであるエクリプスの特徴に依存するものなのか。その両方であるのか。
選別交配による表現の制御を含めて、検証の余地があります。
尚、この表現については加齢に応じて褪色する傾向があります。
2. 体色と模様に影響を与える可能性がある。
Affectionより出典
本種のEye mutationは、多くの場合で体色と模様にも影響を与える傾向にあります。
ピグメントがオレンジ色に変化させる可能性が、本家Affectionにより考察されています。
この特徴は現在検証中の段階にあり、確定した特徴ではありません。
●ゴースト(Ray Hine line)/Ghost(Ray Hine line)
K&N Reptilesより出典 - 2013年の個体
作出者:Ray Hine Reptiles UK - Ray Hine氏 / 1998年~1999年
本稿ではRay Hine Reptiles UKを発祥とする"ゴースト"について解説を行います。
体色と模様に影響を与えるベースモルフで、色素及びピグメントを減退・減少させる効果があります。
ゴーストは、1990年代後半(およそ1998年か1999年)にRay Hine氏が入手した野生捕獲のハイポメラニスティック個体を発祥とするベースモルフです。
このゴーストについては早期の段階でTangerineと組み合わされ"Ray Hine's Hypo"として世界的に流通します。
本質的にレオパードゲッコーの品種改良とTangerineの歴史は切り離せない関係にあり、同時にTangerineの発展の中で切り離す事の出来ないRay Hine's Hypoは、現在流通する殆どのレオパに潜在的に含まれています。(これらの歴史については、ラインの呼称と認知記事内のTangerineの項にて解説しています。)
つまり、シングルモルフとしてのゴーストが保存されないまま、多くのラインへと組み込まれた事で、最早ゴーストは含まれているのか含まれていないのかが判別出来ない状態にあります。
Impeccable Geckoより出典 - 2017年の個体
長らく、シングルモルフとしてのゴーストは完全に途絶えたと考えられてきましたが、近年Ray Hine氏により最初期に販売された個体を使用した繁殖が行われています。
当該の個体群は2000年にK&N ReptilesのKevin and Nicole Elliser夫妻がRay Hine氏より購入した個体の子孫であり、現在はImpeccable GeckoのMiles Schwartz氏により保存されています。
この個体群はRay Hine Reptiles UKを発祥とするゴーストとして、商業ベースにおいて現存する最後の血統であると考えられます。
[ゴースト(Ray Hine line)のホモ接合体(2copy)及びヘテロ接合体(1copy)に共通する特徴]
1. ハイポメラニスティックの効果を持つベースモルフである。
前述の通り、非常に多くのレオパードゲッコーに含まれるはずのベースモルフでありながら、シングルの保存が行われなかった為、現在名言出来る特徴はこの一つに限られます。
黒色色素をある程度減退させる効果(=ハイポメラニスティック)がある事は、上記の背景から確実と言えるでしょう。
Source2:ゴーストについて2(現在アクセス不可の為以下に原文)
Source5:ゴーストとRay Hine's Hypoの関係について
以下、Kyle Johnson氏創設のLeopard Gecko Wiki内での記述
"The original, genetic Ghost-line is said to be eighter created by Ray Hine or Alex Hue (exact datas are unfortunately missing). The Ghosts popped up in one of their Hypo-lines, and Alex Hue bred and sold them for many years.
There is a huge difference between a genetic Ghost, and an ordinary Hypo: True Ghosts never show the typical bright yellowish colouration present in hypos. In addition, most non-albino Ghosts & Ghost-Kombos develop green shades that range from a very light hue over sea-green to a deep "millitary green". True Ghosts also lighten up and their colour fades - in comparison to most young hypos which get more brilliant and deeper in coulours each shed.. Most Ghosts also show a strong tendency to change their colours depending on their current mood and/or the time of the year: they can be almost appear to be "smokey dark" one day, and bright light coloured on the next day.
The Ghost-Gene acts dominant. The Ghost can be crossed into almost all other different morphs, and like enigma or W&Y he can "change" the look of other mutations(where normal faded geckos sold as "ghosts" will never have this effect in breeding)."
●GEMスノー/Gem Snow
Reptilian Gemsより出典
作出者:Reptilian Gems - Jim Holler氏 / 不明
体色に影響を与えるベースモルフで、遺伝性のあるスノーとして二番目に発表されました。
表現の近しいマックスノーとは、ホモ接合体(2copy)とヘテロ接合体(1copy)の表現が同じであるという点で特徴が異なります。
しかしながら、同じく表現の近しいアルビースノーとは外見から区別する事は困難であり、注意が必要です。
現在、The Urban GeckoがGEMスノーをリネームし、TUGスノーという呼称を用いて販売を行っており、同一のベースモルフに対して二つの呼称が存在するややこしい状態にあります。
[GEMスノーのホモ接合体(2copy)とヘテロ接合体(1copy)の特徴]
1. 必ず、黄色色素を減退させる効果を持つ。
Geckos Etc. Herpetocultureより出典 - 2015年の個体
レオパードゲッコーに存在するベースモルフとしてのスノーの一つであり、黄色色素を減退させる効果があります。
表現の近しいマックスノーのヘテロ接合体(1copy)及びアルビースノーと、外見的特徴で区別する事は殆ど不可能です。
ベビー時には美しいモノトーンの表現をしますが、殆どの個体は成長に伴い少しずつ黄色を発色させる傾向にあります。
この特徴は、選別交配によりある程度制御が可能です。
2. マックスノーと互換性を持つ。
TeeGeckosより出典 - 2019年の個体
マックスノーと交配する事で、スーパースノーの表現が得られます。
冒頭で解説した通り、現在GEMスノーには二つの呼称が存在するややこしい状態にあります。
GEMスノーをリネームした呼称であるTUGスノーと、マックスノーを交配した際に得られるスーパースノー表現には"スノーストーム"という呼称が与えられています。
本来、GEMスノーとマックスノーを交配した際に得られるスーパースノー表現(呼称が異なるだけで遺伝的な情報は完全に同一である為)にも"スノーストーム"の呼称用いられる事が自然であると考えますが、TUGスノーという呼称の生みの親であるThe Urban GeckoがTUGスノー=GEMスノーである構図を認めない為、GEMスノーとマックスノーの交配から得られるスーパースノー表現には、特定の呼称が存在しません。
一般的にはスーパースノー=マックスノーのホモ接合体という認知であり、別の呼称を用意する必要があると考えますが、そもそも異なるスノー同士の交配は忌避されています。
その為、本来は作出の必要性がない表現であり、本種に存在する二つのスノーには互換性があるという認識があれば、それで十分であると考えます。
●W&Y(ホワイト&イエロー)/White&Yellow
Prohorchik Reptilesより出典
作出者:Prohorchik Reptiles - Sergey and Raisa Prohorchik夫妻 / 1996年
体色と模様に影響を与えるベースモルフです。
W&Yは、非常に表現の振れ幅が大きいベースモルフであり、遺伝性そのものについての議論が行われる機会も多くあります。
Prohorchik Reptilesより出典
上の写真は全てのW&Yのオリジナルとなったメス個体です。
1996年に得られたこのメスと兄弟のオス(W&Yではない)を用いて、2005年までの間に他のラインを混ぜる事なく※繁殖が行われた事がProhorchik Reptilesにより記録されています。
そして、このペアから初めて得られた次世代達は既に多様な表現(ある個体はより白く、また他の個体はより黄色く)をしていたと記録され、同時に公開された個体群は既に現在流通する多くのW&Yと同じ表現に到達していた事が確認出来ます。
この事から、流通の過程で選別交配が進み表現に振れ幅が生まれたと考えるよりは、元来表現幅が広いベースモルフであると考える方が自然です。
共通した特徴として、頭と尾のピグメントを減らし、白と黄色のコントラストが効いている点が挙げられています。当初、Prohorchik ReptilesはW&Yをハイポメラニスティックのような効果を持つモルフであると考えたようです。
※W&Yにおける模様を乱す効果が、他のラインから由来するものではない事を示唆しています。
Prohorchik Reptilesより出典 - W&Y Fire-flashの個体
尚、この表現の振れ幅については、作出者であるProhorchik Reptiles自身も混乱していた様子が伺えます。
現在流通するW&Yとして代表的な表現である上の写真のような個体を、Prohorchik Reptilesはホモ接合体(2copy)であると考え"W&Y Fire-flash"と呼称を分けていました。
実際には"W&Y Fire-flash"と呼ばれるこの表現はヘテロ接合体(1copy)からも得る事が可能であり、あくまでも振れ幅の一つです。
Prohorchik Reptilesより出典
作出者であるProhorchik Reptilesによる最初期の個体群と、現在流通する個体群には特徴差があります。
最初期のW&Yにはパラドックススポット(=遺伝性のない黒いピグメント)の出現が多く報告されていましたが、現在のW&Yには殆ど見受けられません。
この時点ではパラドックススポットとW&Yは、リバースストライプとエクリプスのように何らかのリンクがあった可能性もあります。
いずれにせよ淘汰されてしまった表現であり、検証を行う事は難しい状態にあります。
ホモ接合体(2copy)に問題があると考えられ、孵化率が落ち込む点や奇形・虚弱個体の発生率が上がる点から、W&Y同士の交配は推奨されません。
ホモ接合体(2copy)とヘテロ接合体(1copy)に表現差はなく、前述の事情から流通個体の殆どはヘテロ接合体(1copy)です。
[W&Yのホモ接合体(2copy)とヘテロ接合体(1copy)の特徴]
1. 現在、W&Yシンドローム(WS)と呼ばれる神経障害を引き起こす独立した遺伝子が蔓延している。
神経障害を引き起こす独立した遺伝子(WS)がW&Yを中心に蔓延しており、手順を踏んだ切り離しが必要です。
W&Yシンドローム(WS)と呼ばれる神経障害は、症状に程度はありますが、重度の個体では上にそり返るような異常行動、捕食困難、不自然に痩せる等の問題を引き起こします。
WSについては異なる二つのシンドローム記事にて個別に解説を行っています。
2. 殆どの場合、模様に影響を与える。
Prohorchik Reptilesより出典
表現の振れ幅は大きく、表現の近しいエニグマと似た表現をする場合があります。
横腹から背中に向けて、色が入らない白い部分がせり上がる事も特徴の一つであり、この表現はホワイトサイドとも呼称されます。
以下、Prohorchik Reptiles内での記述
"Eublepharis macularius W&Y; line
We first got White & Yellow(W&Y) in 1996. It was a spontaneous mutation in breeding group of normal Eublepharis macularius. It is important to say that in that time we didn't have any selected morphs of leopard gecko. Our main W&Y geckoes are the far descendants of spontaneously born W&Y female and her father - phenotypically normal leopard gecko. Till 2005 the selective work has been doing only inside of our group of geckoes. No designer morphs were involved in process. At present time we are trying to save the inbreeding group(W&Y x W&Y) and we cross our morph with other different known morphs. Every time we make sure that W&Y-trait is determined by some polymeric dominant hypo genes with one sided action. The accumulation of these genes in homozygout state improves the phenotype and making the dominant action of these genes stronger. Such lizards(with all W&Y-genes in homozygot state) we call W&Y Fire-flash. "
"Here are the characteristic traits of W&Y geckoes:
They have something like an orange ring on their tails.
Usually they have dark paradox spots of normal pattern on their hypo background.
Usually they have striped-pattern.
They have transparent grey-blue eye irises.
Their front legs have little yellow colour or totally white."
●マックスノー/Mack Snow
Reptiles by Mackより出典 - Mack Snowの個体
作出者:Reptiles by Mack - John and Amy Mack夫妻 / 不明
眼と体色、パターンに影響を与えるベースモルフで、遺伝性のあるスノーとして最初に発表されました。
表現の近しいアルビースノーとGEMスノーとは、ホモ接合体(2copy)とヘテロ接合体(1copy)で表現が大きく異なるという点で、特徴が異なります。
マックスノーは、ホモ接合体(2copy)とヘテロ接合体(1copy)で表現が異なる不完全顕性遺伝の形質をとります。
ホモ接合体(2copy)はスーパーマックスノーと、ヘテロ接合体(1copy)はマックスノーとそれぞれ呼称されます。
[マックスノーのホモ接合体(2copy)の特徴]
1. ランダムで、いくつかの先天的な疾患を抱える。
スーパーマックスノーに紐づいた遺伝性疾患です。
扁平な頭部を持つ個体が多く、形成異常に関係する問題が無視出来ない程度の量報告されます。
内容としては、鼻腔の閉塞、鼻先の膿瘍(のうよう)発生、眼球肥大等です。
又、その他にも生殖能力を持たないオス、虚弱体質(成長不良及び消化器系の問題)、TSDによる性決定が行われない可能性等が報告されます。
尚、ヘテロ接合体(1copy)では一切報告されません。
2. 必ず、黄色色素を欠乏させる効果を持つ。
Reptiles by Mackより出典 - Mack Super Snowの個体
レオパードゲッコーに存在するベースモルフとしてのスノーの一つであり、黄色色素を欠乏させる効果があります。
黄色色素を減退するのではなく、完全に欠乏させる事(=アザンティック化)が出来るこの特徴は、スーパーマックスノー固有のものです。
3. 必ず、眼はソリッドアイの表現になる。
眼の表現は必ずソリッドアイとなり、表現に振れ幅はありません。
[マックスノーのホモ接合体(2copy)とヘテロ接合体(1copy)の特徴]
1. GEMスノーと互換性を持つ。
TeeGeckosより出典 - 2019年の個体
GEMスノーと交配する事で、スーパースノーの表現が得られます。
現在、GEMスノーには二つの呼称が存在するややこしい状態にあります。
GEMスノーをリネームした呼称であるTUGスノーと、マックスノーを交配した際に得られるスーパースノー表現には"スノーストーム"という呼称が与えられています。
本来、GEMスノーとマックスノーを交配した際に得られるスーパースノー表現(呼称が異なるだけで遺伝的な情報は完全に同一である為)にも"スノーストーム"の呼称を用いる事が自然であると考えますが、TUGスノーという呼称の生みの親であるThe Urban GeckoがTUGスノー=GEMスノーである構図を認めない為、GEMスノーとマックスノーの交配から得られるスーパースノー表現には、特定の呼称が存在しません。
一般的にはスーパースノー=マックスノーのホモ接合体という認知であり、別の呼称を用意する必要があると考えますが、そもそも異なるスノー同士の交配は忌避されています。
その為、本来は作出の必要性がない表現であり、本種に存在する二つのスノーには互換性があるという認識があれば、それで十分であると考えます。
[マックスノーのヘテロ接合体(1copy)の特徴]
1.必ず、黄色色素を減退させる効果を持つ。
レオパードゲッコーに存在するベースモルフとしてのスノーの一つであり、黄色色素を減退させる効果があります。
表現の近しいGEMスノー及びアルビースノーと、外見的特徴で区別する事は殆ど不可能です。
ベビー時には美しいモノトーンの表現をしますが、殆どの個体は成長に伴い少しずつ黄色を発色させる傾向にあります。
又、ベビーから強い黄色を示し、次世代を得るまでマックスノーであった事が判明しない「隠れスノー」と呼ばれる個体も存在します。
この特徴は、選別交配によりある程度制御が可能です。
Source1:TSDに関する記述(現在アクセス不可の為以下に原文)
以下、Kyle Johnson氏創設のLeopard Gecko Wiki内での記述
"Another key feature of Mack Snows that while all the other Leopard Gecko morphs are temperature sexed, Mack Snow Leopard Geckos have not been proven to be consistently temperature sexed."
●レモンフロスト/Lemon Frost
The Gourmet Rodentより出典 - Lemon Frostの個体
作出者:The Gourmet Rodent - Bill Brandt氏 / 2012年
※注意※
レモンフロストは現在、致死性の腫瘍を発生させる問題を抱えます。
この問題について2020年3月31日にヴロツワフ環境生命科学大学獣医学部より論文が発表されております。
腫瘍問題が科学的なアプローチにより解決する日まで、趣味の範囲でブリードを行う事は推奨されない事が論文内で記述されています。
※注意※
眼と体色、パターンに影響を与えるベースモルフです。
レモンフロストは、ホモ接合体(2copy)とヘテロ接合体(1copy)で表現が異なる不完全顕性遺伝の形質をとります。
ホモ接合体(2copy)はスーパーレモンフロストと、ヘテロ接合体(1copy)はレモンフロストとそれぞれ呼称されます。
[レモンフロストのホモ接合体(2copy)の特徴]
1. 殆どの場合、皮ふ上及び臓器に腫瘍(ガン)を発生させる問題を抱える。
レモンフロストに紐づいた遺伝性疾患の一つです。
全身の皮ふは分厚くなり、臓器に腫瘍(ガン)を発生させます。
腫瘍の発生率については、生後6ヵ月-5年の149体を用いた実験において80%であったと報告されます。
原因がレモンフロストの遺伝子そのものにある事から、根治の手法はなく、多くの場合で安楽死の措置が取られます。
レオパードゲッコーに存在するベースモルフが遺伝性疾患を抱えるケースは珍しくありませんが、レモンフロストで報告される致死性の腫瘍は常軌を逸していると言え、論文やいくつかの科学的な根拠からも根絶されるべきベースモルフであると考えます。
腫瘍問題についてはレモンフロストの腫瘍に関する情報記事にて個別に解説を行っています。
2. 殆どの場合、頭部の形成に問題を抱える。
Geckos Etc. Herpetocultureより出典
レモンフロストに紐づいた遺伝性疾患の一つです。
眼球肥大、過度な短頭化、異常に分厚い瞼等が報告されます。
又、鼻腔の閉塞により開口呼吸を行うようになった例も報告されます。
この特徴は、選別交配によりある程度制御が可能です。
3. 殆どの場合、体色・模様に影響を与える。
Geckos Etc. Herpetocultureより出典 - 2017年のSuper Lemon Frostの個体
体色は白を追加したような独特の表現をし、尾全体が黒くなる場合があります。
この特徴は、選別交配によりある程度制御が可能です。
4. 必ず、虹彩に白色が加わる表現をする。
必ず、虹彩の殆どが白色になります。
[レモンフロストのヘテロ接合体(1copy)の特徴]
1. 殆どの場合、皮ふ上及び臓器に腫瘍(ガン)を発生させる問題を抱える。
Ramsey's Reptilesより出典 - 2021年の個体
レモンフロストに紐づいた遺伝性疾患の一つです。
全身の皮ふは分厚くなり、場合によってこぶ状の腫瘍を形成し、臓器に腫瘍(ガン)を発生させます。
腫瘍の発生率については、生後6ヵ月-5年の149体を用いた実験において80%であったと報告されます。
原因がレモンフロストの遺伝子そのものにある事から、根治の手法はなく、多くの場合で安楽死の措置が取られます。
レオパードゲッコーに存在するベースモルフが遺伝性疾患を抱えるケースは珍しくありませんが、レモンフロストで報告される致死性の腫瘍は常軌を逸していると言え、論文やいくつかの科学的な根拠からも根絶されるべきベースモルフであると考えます。
腫瘍問題についてはレモンフロストの腫瘍に関する情報記事にて個別に解説を行っています。
2. ランダムで、頭部の形成に問題を抱える。
Barry Gardner氏より出典 - 2018年の個体
レモンフロストに紐づいた遺伝性疾患の一つです。
眼球肥大、過度な短頭化、異常に分厚い瞼等が報告されます。
この特徴は、選別交配によりある程度制御が可能です。
3. 殆どの場合、体色・模様に影響を与える。
体色は白を追加したような独特の表現をし、尾全体が黒くなる場合があります。
この特徴は、選別交配によりある程度制御が可能です。
4. 殆どの場合、虹彩に白色が加わる表現をする。
殆どの場合、虹彩の殆どが白色になります。
この特徴は、選別交配によりある程度制御が可能です。
Source2:University of Florida Veterinary Medical Centerによる病理診断書
Source4:Iridophoroma associated with the Lemon Frost color morph of the leopard gecko
Source5:Genetics of white color and iridophoroma in “Lemon Frost” leopard geckos
以上、顕性遺伝するベースモルフについて
[ベースモルフの可能性がある表現]
本項では、ベースモルフの可能性がある表現を紹介します。
以下で紹介される個体はパラドックス(=遺伝性のない表現)である可能性も高く、十分な検証が必要とされる段階にあります。
その為、作出者ではなく発表者としてブリーダーを併記し、表記される年数については写真・情報が初出した年を記載しています。
●オッドボール/Odd Ball(Only Tangs line)
Only Tangsより出典 - 2022年の個体
発表者:Only Tangs - Barry Gardner氏 / 2014年頃
眼と体色と模様に影響を与える新しいベースモルフの可能性があります。
オッドボール(Only Tangs line)は、Only Tangsの保有するエクストリームボールドのペアより出現しました。
尚、発表者であるBarry Gardner氏により"Odd Ball"と呼称されますが、Odd Ballとは日本語で"変わり者"の意味を持ち、海外では以前から本種の風変りな表現をした個体に対して用いられてきた背景があります。
今回は他のOdd Ballと区別する為にも、Odd Ball(Only Tangs line)として記載します。
パイド表現に加え、霞がかかった異質な表現は、既存のベースモルフ、ラインと全く異なります。
Only Tangsより出典 - 2022年の個体
眼の表現については、マーブルアイに似た表現をしています。
又、皮ふを拡大して観察すると色素が散りばめられたような表現をしており、これはニシアフリカトカゲモドキにおけるゴーストに類似した発色の方法です。
Only Tangsより出典 - 2022年の個体
2022年の繁殖結果から、表現が遺伝した様子が公開されています。
本種においてこのような表現をした個体は往々にしてパラドックスであった為、この異質な表現に遺伝性があるかも知れないという可能性には、一飼育者として興奮が隠せません。
今後の検証が待たれます。
Source1:オッドボール/Odd Ball(Only Tangs line)について
Source2:オッドボール/Odd Ball(Only Tangs line)について
▲ゴースト(Alex Hue line)/Ghost(Alex Hue line)
Artlinksgeckosより出典 - 2007年の"Dove"と名付けられたMack Snow Ghost(Alex Hue Reptilesによる販売個体)
作出者:Alex Hue Reptiles - Alex Hue氏 / 不明
発表者:Dragoon Gecko / 2007年
本稿ではAlex Hue Reptilesを発祥とする"ゴースト"について解説を行います。
顕性遺伝の形質を持つ、体色に影響を与えるベースモルフの可能性があります。
本ブログで解説する全てのベースモルフやラインの中で、最も理解に苦しみ、未だ十分な情報が収集出来ていない事を最初に明記します。
まず、ゴーストと呼称されるベースモルフについて、出自が完全に特定出来ていないという事は本種のベースモルフの歴史における世界的な共通見解です。
Ray Hine ReptilesとAlex Hue Reptilesのどちらがゴーストのオリジナルを作出したのかは未だ不明なまま長い時が流れ、今では特定が出来ないという形で話が止まっています。
いずれのブリーダーも本種の表現の流行に従い、シングルモルフとしてのゴーストを消失させています。
どちらのゴーストについても調べる中で、現在まで残されるAlex Hue Reptilesを発祥とするゴーストの情報を取りまとめた個人的な見解としては、ベースモルフと言うよりはラインに近いのでは…と考えた為、ベースモルフとしての紹介を行っていません。
Ray Hine Reptilesを発祥とするゴーストの効果が「色素の減退」である一方で、Alex Hue Reptilesを発祥とするゴーストの効果は「色素の増強」であると解説がなされています。
しかし、そのような効果がハッキリと出ている個体の写真が無いのが現状であり、ゴーストに取り組んだブリーダーの少なさから、この解説が真実であるのか判断に苦しみます。
既に商業ベースでは純粋なラインは途絶えたと考えられてきましたが、近年Geckos by Sophieにより繁殖が再開されています。
当該の個体群は、Alex Hue Reptilesにより販売されたゴーストを複数保有していたArtlinksgeckosが、そのままDragoon Geckosへとペアで販売。そのペアを用いた繁殖個体がGeckos by Sophieの手元へと渡り、繁殖・販売されている個体群です。
Source1:ゴースト(Alex Hue line)について
●スミブラック/Sumi Black
発表者:DINA SHELT(TCBF) - 寺尾 佳之氏 / 2018年
潜性遺伝の形質を持つ、体色に影響を与えるベースモルフの可能性があります。
しかしながら、Ron Tremper氏による"シナモンアルビノ"の事例からスミブラックについてもラインの一つであるとする説もあります。
黒色色素を増進する効果があると考えられています。
又、トレンパーアルビノと組み合わせた個体はウッドブラウンアルビノと呼称されます。
●バイオレットポーション/Violet Potion
発表者:The Gourmet Rodent / 2016年
体色に影響を与える新しいベースモルフとして販売が行われましたが、最も特徴的な赤紫色をした発色部については、パラドックスである可能性が高まっています。
2016年にThe Gourmet Rodent(以下、TGR)より、同様の表現をした個体が2体販売され、以降は個体及び情報の流通はありません。
この内1体を保有するCSST Reptilesの遺伝検証によると、顕性遺伝の形質は持たず、F1において表現の再現はされていません。
更に、F1以降の交配においても、現在までに表現の再現はされていません。
予想外の事ではありますが、部分的にスケールレスの皮ふを持つ個体が報告されています。
以下は余談ともなりますが、発表者であるTGRは兼ねてより新しいベースモルフについて情報を公開しない事で非常に有名(2013年に誕生したLemon Frostについても3枚の写真を公開して以降は、2017年まで一切の新規情報を公開せず、流通後にスーパー体が存在する事が判明した程です。)なブリーダーです。
Violet Potionは写真すら公開されておらず、販売がアジア圏に限られた事からUSやEUの市場では存在すら殆ど認知されていません。
TGRは世界的に見ても1位2位を争う規模でレオパードゲッコーを繁殖・販売を行っている業者です。
兼ねてよりその繁殖結果の中で得られた突飛な個体(=パラドックス)をショー等で一点モノとして高額販売を行っており、このViolet Potionもその一つなのでは?と考えずにはいられません。
●仮称:Eye mutation(2019 C&R Revolution line)
発表者:匿名 / 2014年頃
潜性遺伝の形質を持つ、眼に影響を与える新しいベースモルフと考えられています。
作出者は匿名を希望しており、C&R Revolutionにより情報の公開と販売が行われています。
このベースモルフは"アイジャン"という呼称で販売されたとする話がありますが、確認は出来なかった為に今回は保留します。
2019年までに一般流通していたEye mutation(エクリプス、NDBE、マーブルアイ)とは互換性がない事が明記されています。
Source1:Eye mutation(2019 C&R Revolution line)について
●仮称:パイド(JBReptiles line)
JBReptilesより出典 - 2018年のMr.Storm(左)とMr.X(右)
発表者:JBReptiles - Jérémie Bouscail氏 / 2016年
体色に影響を与える新しいベースモルフの可能性がありましたが、現在ではパラドックスの一つと考える説もあります。
現在までにJBReptilesより、Mr.Storm(左)とMr.X(右)と名付けられたオスの2匹が公開されています。
遺伝性についての発表は無いまま、2019年12月1日に両個体とその子世代を含めたコロニー単位での販売が発表され、直近のHamm Showにて取引が行われています。
その為、発表者であるJBReptilesの手元にはこの個体群は残されておらず、この表現を固定するプロジェクトが継続されているかは不明です。
Source1:パイド(JBReptiles line)について1
Source2:パイド(JBReptiles line)について2
Source3:パイド(JBReptiles line)について3
●仮称:パイド(Millier Wang line)
Millier Wang氏より出典 - 年の個体
発表者:Millier Wang氏 / 2018年
体色に影響を与える新しいベースモルフの可能性があります。
現在までにMillier Wang氏より、2匹が公開されています。
Source1:パイド(Millier Wang line)について1
Source2:パイド(Millier Wang line)について2
以上、ベースモルフの可能性がある表現について
[ベースモルフから外された呼称]
本項では、遺伝検証の結果ベースモルフから外された呼称を紹介します。
以降に記載される呼称は、ベースモルフではありません。
その為、作出者情報については打消し線を引いています。
×アビシニアン/Abyssinian
LeopardGecko.comより出典
作出者:LeopardGecko.com - Ron Tremper氏 / 2005年
以前は、潜性遺伝の形質を持った、眼に影響を与えるベースモルフとして認知されました。
遺伝検証の結果、エクリプスと同一のベースモルフである事が発覚し、"アビシニアン"はベースモルフでは無くなりました。
LeopardGecko.comより出典 - SNAKE EYED ABYSSINIANの個体
又、一部のブリーダーにより「アビシニアンは必ず0%エクリプスになる、選別交配されたエクリプス」と解説されますが、本家Ron Tremper氏により"SNAKE EYED ABYSSINIAN"(上記写真)の名称で販売が行われていた事から、この解説は否定されます。
現在では、あくまでも"エクリプス"の表現の一つを示す呼称として用いられます。
余談ではありますが、アビシニアンについては海外においても大きな混乱を呼び、多くのブリーダーにより遺伝性の検証が行われました。当時の議論の一部を下記に記載します。
本家Ron Tremper氏のホームページ上からも情報は削除され、最新の著書においても独立したベースモルフとしての紹介は行われていません。
以下、Ron Tremper氏による最新の著書での解説
"Abyssinian
This morph cannot express black pigment and has a tremper albino eye. It is related to the eclipse genetic."
×スーパージャイアント/Giant
LeopardGecko.comより出典 - 2005年の"Moose"
作出者:LeopardGecko.com - Ron Tremper / 1999年
以前は、不完全顕性遺伝の形質を持った、体格に影響を与えるベースモルフとして認知されました。
遺伝検証の結果、多因子遺伝の形質を持つ事が発覚し、"スーパージャイアント"はベースモルフでは無くなりました。
現在では、多因子遺伝の形質を持つラインとして扱われます。
尚、本家Ron Tremper氏は遺伝形質についての情報を修正し、現在でも潜性遺伝の形質を持つベースモルフであるという主張を続けていますが、この主張は殆ど支持されません。
スーパージャイアントの詳細については、ラインの呼称と認知記事内のスーパージャイアントの項目にて解説を行っています。
×シナモンアルビノ/Cinnamon Albino
LeopardGecko.comより出典 - 2013年の個体
作出者:LeopardGecko.com - Ron Tremper氏 / 2012年
以前は、潜性遺伝の形質を持った、体色に影響を与えるベースモルフとして認知されました。
遺伝検証の結果、多因子遺伝の形質を持つ事が発覚し、"シナモンアルビノ"はベースモルフでは無くなりました。
現在では、多因子遺伝の形質を持つラインとして扱われます。
シナモンアルビノの詳細については、ラインの呼称と認知記事内のシナモンアルビノの項目にて解説を行っています。
×ダイオライト/Diorite
Ramsey's Reptilesより出典 - 2020年のダイオライト表現の個体(Mack Snow het Blizzard)
作出者:Dinodon 安川 雄一郎氏 / 不明
以前は、潜性遺伝の形質を持った、模様に影響を与えるベースモルフとして認知されました。
遺伝検証の結果、多因子遺伝の形質を持つ事が発覚し、"ダイオライト"はベースモルフでは無くなりました。
現在では、特定の表現に対する総称として扱われます。
尚、作出者については形式的に安川雄一郎氏としていますが、同氏の発表内容を見る限りではそもそも"ベースモルフ"ではなく"ライン"として発表されているように見受けられます。(マックスノーの中に出現した、ピグメントの細かい個体群による選別交配の結果)
本種における"モルフ"という言葉は、遺伝性の確立されたベースモルフのみではなく、あらゆる表現全てに用いられる傾向があり、このような背景がダイオライトをベースモルフとして認知させてしまったようにも感じます。
ダイオライトの詳細については、ラインの呼称と認知記事内のダイオライトの項目にて解説を行っています。
×TUGスノー/TUG Snow
The Urban Geckoより出典
作出者:The Urban Gecko - Craig Stewart氏 / 不明
以前は、顕性遺伝の形質を持った、体色に影響を与えるベースモルフとして認知されました。
遺伝検証の結果、GEMスノーと同一のベースモルフである事が発覚し、"TUGスノー"はベースモルフでは無くなりました。
現在では、The Urban Geckoにより販売されるGEMスノーの呼称として用いられます。
尚、作出者であるThe Urban GeckoはTUGスノーがGEMスノーであると認めず、現在でも顕性遺伝の形質を持つベースモルフであるという主張を続けていますが、この主張は殆ど支持されません。
余談ではありますが、同社がリリースするTUGスノーにはマックスノーの混入も進んでおり、極めて混沌とした状態にあります。同社の血統管理の体制については、杜撰であるとの指摘が以前から相次いでいます。
その為、TUGスノーとして流通する個体をGEMスノーとリネームし直す事は推奨されません。
Source1:TUGスノーについて(TUG Snowの項)
×タンジェロ/Tangelo
LeopardGecko.comより出典
作出者:LeopardGecko.com - Ron Tremper氏 / 2012年
以前は、不完全顕性遺伝の形質を持った、体色と模様に影響を与えるベースモルフとして認知されました。
遺伝検証の結果、多因子遺伝の形質を持つ事が発覚し、"タンジェロ"はベースモルフでは無くなりました。
現在では、多因子遺伝の形質を持つラインとして扱われます。
タンジェロの詳細については、ラインの呼称と認知記事内のタンジェロの項目にて解説を行っています。
×パステル/Pastel
LopardGecko.comより出典 - Pastel Tremper Albinoの個体
作出者:LeopardGecko.com - Ron Tremper氏 / 2008年
以前は、顕性遺伝の形質を持った、体色と模様に影響を与えるベースモルフとして認知されました。
遺伝検証の結果、多因子遺伝の形質を持つ事が発覚し、"パステル"はベースモルフでは無くなりました。
現在では、多因子遺伝の形質を持つラインとして扱われます。
パステルの詳細については、ラインの呼称と認知記事内のパステルの項目にて解説を行っています。
×レイハインアルビノ
作出者:不明 / 不明
以前は、潜性遺伝の形質を持った、体色に影響を与えるベースモルフとして認知されました。
遺伝検証の結果、トレンパーアルビノと同一のベースモルフである事が発覚し、"レイハインアルビノ"はベースモルフでは無くなりました。
現在では、完全に無効な呼称として扱われます。
名前の由来であると考えられるRay Hine ReptilesのRay Hine氏がオリジナルのアルビノをリリースした事実はありません。
最初期(2000年)にRon Tremper氏が初めてTremper Albinoを販売を行った際には、Bell AlbinoやRainwater Albinoはまだ出現しておらず、Tremper Albinoの多くは"Albino"として販売されました。
この際のイギリス展開における公式窓口がRay Hine ReptilesのRay Hine氏であった事から「Ray Hine氏の販売したアルビノのレオパードゲッコー」が発生しました。
これらの個体が国内へ輸入される過程で、何らかのエラーにより"レイハインアルビノ"という存在しないベースモルフを生んだと考えられます。
国内では主に、DINA SHELT(TCBF)によって販売が行われました。
以上、ベースモルフから外された呼称について