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こんぶトマト文庫のふみくら

6月19日(月)21時46分

2023.06.19 13:46

この前の土曜日、とても暑かった日。新しい試みを始めてみた。

原付で古本、引き取ります。

と題したチラシを、BOOK PORT CAFEから徒歩数分圏内の住宅へ投函して回った。いわゆるポスティングというものだ。これだけ配るのももったいないので、併せて再来週の一箱古本市のチラシとBOOK PORT CAFEのチラシも留めた三枚セットのものを投函した。

今のところこの試みは局所的にしか行なっておらず、チラシを投函したエリアのみを対象としている。

この度初めてポスティング作業そのものをしたのだが、なかなかどうしてこれは大変な作業だ。

とりあえずのおおよそでざっくりと1000枚用意したのだけど、集合住宅が少なく一軒家が立ち並ぶ地域では、1時間におおよそ200枚配るのが関の山だということを足で知った。実はもっと効率のいい方法があるのかもしれない、誰か教えてほしい。加えて作業を敢行した土曜日は大変に良い天気だった。何もこんな日にそんな重労働を…とこぼしたのは、途中涼みに逃げ込んだはますかむすびの方だった。ほかに良い日があればそれに越したことはなかったけれど、一緒に頒布した一箱古本市の事も考えるとこの土日がベストだろうとなったので、仕方ない。それに土日どちらも天気は良好な週末は久々で、せっかく配ったチラシが濡れてしまっては元も子もなく、そういう意味でも最良だったと思う。


本を引き取ってもらいたい、というニーズが潜在的に遍在していることは何となく予感していた。

元々、BOOK PORT CAFEで「本を引き取ってもらえないのだろうか」ということを尋ねられる機会が多かった。一応古物商許可は取っているので買取もできるし、そも無償の引き取りであるなら資格も特に必要ない。しかしそれを新たに業として確立させるには全く不十分なものが多く、いろいろと理由をつけて受けるのか否かを先延ばしにしていた。

それをこの度、「この形態なら無理なく対応していけるのでは」という折衷点を設けて始動させてみた形だ。分量は原付の荷台の籠に乗せられる分だけ。範囲はBOOK PORT CAFEから歩いてすぐの範囲だけ。動けるのはせいぜい週末だけ。


①市場価値がなく、また大変かさばるために古本屋も引き取らず、そして自分で処分するにも重労働となる類のもの

②思い入れが強い本であるけれど、今後も所有し続けることに対しては見切りをつけなければならないものであり、しかし思い入れが故に自分では処分できない類のもの

上記2点の理由で依頼を受けることがあるだろう、という予想は立てていた。そしてそれは今のところ当たっている様子だった。

日曜日、BOOK PORT CAFE在店中に早速電話がかかってきた。前日にチラシを配ったお宅から、百科事典があるからそれを引き取ってもらいたい、と。それが冒頭の写真になる。平凡社の世界大百科事典。刊行は1968年で全24巻。まさしく①に該当する、というより①を代表すると言っても過言ではない代物だった。何とか無理くり積んでみたが、車体は完全に後ろ重心で、少し加速すると容易くウィリー走行してしまいそうだった。いずれこの手のものも来るだろうとは覚悟していたけれど、まさか初手からこれが来るとは。この有り様で戻ってきた私を見たお店のお客さんは「チュートリアルとしては良い洗礼だったのでは」と言っていた。全くそう思う。

そしてそのお客さんとは別に、お店に直接来られた方もいた。受け取りに行くのは後日を希望されていたけれど、家にある本を引き取ってもらいたいとのことだった。具体的にどういったものがあるのかはわからないけれど、話を伺うに②のような本が多いようだった。自分で処分するには忍びなく、かといってそろそろものを減らしていくことを考えたら、というジレンマにあるもの。今は繁忙とのことなので、近日またご連絡いただけることになった。住所はやはり、前日にチラシを投函したエリアだった。


なぜこれをやるのか、と考える。

「本を処分すること」は、重労働であると思う。単純に質量がある物体であるし、また人によっては体積も大変なものになる。そしてそこには感情や思い入れ、過去やしがらみ、未練、損得などなど、後ろ髪を引かれる無形の要素が鬱蒼とこびりついていることもざらだ。大変に気が乗らない作業だ。

とはいえ、いつまで経っても本が勝手に腐って消えてくれることはそうそうなく、処分をするには一程度の覚悟と労力を資する必要がある。そんなやる気はなかなか出ない。

そういうものを肩代わりしてもいいのでは、他人だからこそ容易く処分できるものもある、そう考えた。私である必然は多分ない。誰かができるならそれでいいと思う。でもおそらく、というより確実に、家の中に処分しようにもできない本を抱えたお宅はそこかしこにある。出版業界の端っこもいいところに立つ身ではあるけれど、過去から続くその流れの中にいる者として、そこは正視しなくてはならない事実だと思った。

それに今私はこんぶトマト文庫を営利目的を主にして回してはいない。前々から他で生計を立てることを念頭に置いている。だったら尚の事、そういった身軽な立場でこそ担える役割もあるのではと思う。

もちろん、打算が全くないと言えば嘘になる。BOOK PORT CAFEへ来てお茶したり本借りたりに来てほしいし、その流れでこんぶトマト文庫で文庫の一冊買ってもらえたら万々歳だと思っている。その観点から見れば、途方もなくうっすい可能性に託した広告活動とも言える。言えるのか?言えないか。