【事例編】養殖でも地中熱利用の効果~平成28年度地産地消型再生可能エネルギー面的利用等推進事業費補助金成果報告書より
近年の地中熱導入例から魚介類養殖において地中熱利用が進む可能性の高さに注目しています。一般社団法人新エネルギー導入促進協議会が公表してます「平成28年度地産地消型再生可能エネルギー面的利用等推進事業費補助金(再生可能エネルギー熱利用高度複合システム実証事業)」の成果報告書から一例を紹介したいと思います。(ECO SEED代表 名古屋悟【エコビジネスライター】)
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◆ウナギ養殖池で廃熱回収、地下水熱利用ヒートポンプでの加温システム導入
地下水熱利用の鰻養殖で自己資金投資回収2.8年――。一般社団法人新エネルギー導入促進協議会はこのほど、「平成28年度地産地消型再生可能エネルギー面的利用等推進事業費補助金(再生可能エネルギー熱利用高度複合システム実証事業)」の成果報告書を公開しましたが、この中で注目したのが、日洋、日鰻が取り組む「養鰻池廃熱回収及び地中熱利用ヒートポンプ導入による加温システムの省エネルギー事業」の実証成果です。
ウナギの養殖では安定した生育のため、年間を通して30℃の水温を維持して養殖されていますが、一般的にはボイラーで加温するなど化石燃料を多く使っています。
日洋、日鰻では2013年度から廃熱と地中熱を利用した高効率電気式ヒートポンプシステム装置に代替することで、効率の良い省エネシステムを構築する事業を進めています。
導入したシステムは、捨てられている廃水熱を利用して既存の熱交換器とは別に、より高性能の熱交換器を備えるプレート式熱交換器を直列に配置することで、徹底的に廃水熱を回収し、地下水の加温とヒートポンプの熱源として活用すると同時に、捨てていた廃水熱25℃を最大限利用できるシステムのループ回路としている点が特徴です。地下水と低温の廃水熱の2つの再生可能エネルギーを利用した高効率ヒートポンプシステムになっています。
ハウス式の養殖場で昼間は太陽熱をエネルギーとして有効に利用していますが、夜間の池の温度を30℃に維持するため、料金の安い夜間電力を使用しコスト削減できるシステムとし、電力の平準化にも貢献するシステムになっている点も特徴です。
このほどまとめられた2016年度の実績(分析・評価結果[仮説検証])によると、省エネ効果 54%以上削減、省CO2効果59.3%(2,439㌧/年)削減を目標としていましたが、省エネ効果は累計47.2%削減、省CO2効果累計47.9%削減(2,153㌧)と未達となっています。これは、地下水に含まれる遊離炭酸の影響で、ヒートポンプの吸熱部の熱交換器が剥離して故障したため、重油を使用しなければならなくなったことが影響したものとのことです。
一方、81%以上を目標にしている廃熱回収率は、累計88.7%と目標を達成。定期的に熱交換器の薬品洗浄を実施することで、より多くの廃水熱を回収利用できたとしています。
コスト回収は3年(自己資金のみ)を目標にしていますが、コスト(投資回収年数) 2016年4月から2017年3月までの12カ月間でコスト削減金額は、前々年比7,734万9,248円のコスト削減になったとしています。
設備投資金額については、4億2,230万6,400円÷(8,699万721円+7,734万9,248円)÷2=5.1年となり、補助金を除くと (4億2,230万6,400円-1億9,437万2,000円)÷8,216万9,985円=2.8年となり、自己負担の投資でみれば、予測回収年は目標を達成中としています。
補助金分を除いての計算ですが、短期的な投資回収のメドが経っており、この点は注目されそうです。
この成果報告書は、以下アドレスで確認できます。
http://www.nepc.or.jp/topics/pdf/170714/170714_8.pdf
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【記者の目線】
天然資源に依存する鰻養殖は近年のシラスウナギ不漁などで先行きが不透明な部分も多いですが、近年は海水魚の「閉鎖循環式陸上養殖」に取り組む事業者も増えています。
すでに長崎県総合水産試験所がクエ(九州でアラ、西日本地域でモロコ)の陸上養殖で地中熱を導入していますが、この方式ではこのほか、トラフグやマダイ、ヒラメ、シマアジ、クルマエビ、アワビ等の高級魚介類を扱うケースがほとんどです。
いずれも安定した生育を促す観点から鰻養殖同様に水温調整が必要であり、設備の更新時等において地中熱利用による水温調整システムに変更する余地が多いと見込まれます。
※この記事は、ECO SEED配信の「GeoValue」Vol.33(2017年8月6日付)で掲載したものを転載しています。
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広報「地中熱」~地中熱のススメ Presented By ECO SEED