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佐藤信の五行日記

劇場は誰のもの?

2023.06.21 01:46

座・高円寺の次期芸術監督が、演出家・劇作家・俳優のシライケイタさんに決定した。
公募を経ての採用という、あまり例のないかたちでの選任だったが、74名という多数の応募者をはじめ、選考委員の氏名と全応募者の採点結果の公表、年間の事業予算額をふくむ業務にかかわる座・高円寺データの情報公開など、芸術監督としてのつとめを終えるにあたって考えていた公共劇場の芸術監督の透明性をもった制度の確立に向けて、具体的な歯車がひとつ回ったのではないかと思っている。

ぼく自身は、今回の公募による芸術監督選任への積極的な賛同と情報拡散への協力のほかは、選考過程には一切のかかわりをもたず、文字通り「固唾を飲んで」結果を待つ立場だったが、公共劇場の将来に向けて、意欲をもって公募に参加して下さった応募者の皆さん、74件の応募資料の読み込みから最終候補者へのヒアリングまで、多大なご負担と責任をともなう作業を真摯につとめていただいた選考委員のみなさん、応募要項の作成から選考委員会による決定までを遂行した杉並区担当セクションの皆さんには、あらためて、こころからの敬意と感謝の気持ちをお伝えしたい。

公共劇場における、「地方自治法」上の「公の施設」と、「文化芸術基本法」「劇場、音楽堂等の活性化に関する法律(通称「劇場法」)」上の「劇場」との両立については、未解決な諸要素とともに、将来に向けてのあたらしい課題が数多く残されている。そのような状況の中で、今回の芸術監督の公募というひらかれたかたちでの選任の過程と結果が、制度についてのひとつの先行事例としてひろく検証され、発展的に継承されることを願っている。

劇場は誰のもの? という問いへの答えはただひとつ。

劇場は観客のために存在する。芸術監督はその実現のために存在する。


写真は、在任中、舞踊家の竹屋啓子、絵本作家のツペラツペラとの共同演出でつくり、現在も上演がつづいている座・高円寺のレパートリー『ピン・ポン』(初演出演者)。