私とは何か――「個人」から「分人」へ
今回ご紹介する本はこちら!
『私とは何か――「個人」から「分人」へ 』平野 啓一郎
です。
佐渡島さんの『WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE. 〜現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ〜 』の巻末に収録されていて、気になったので読んでみました。
「あぁ、なるほど。」とかなり納得感があるし、
「あぁ、だからか。」と自分を肯定しやすくなる一冊でした。
”本当の自分”ていうワードはよく聞くし、それが一体なんなのか分からないことが不安になることもあるけど、そのことに対して不安になる必要も無いし、他人を批判する必要も無い。
そんなことを思わせてくれる一冊でした!
<どんな本か>
小説家・平野啓一郎さんによる「分人主義」という価値観についてまとめられた一冊。
分人主義とは?
サブタイトルにも【「個人」から「分人」へ】と記載があるように、人間は「個人」からさらに細分化した「分人」という価値観で捉えられるよね、ということが巻末まで記載されている内容。
では、その「分人」とは何か。
本書の中では、下記のように説明されている。
一人の人間の中には、複数の分人が存在している。両親との分人、恋人との分人、親友との分人、職場での分人、・・・・あなたという人間は、これらの分人の集合体である。
個人を整数の1だとすると、分人は分数だ。人によって対人関係の数はちがうので、分母は様々である。そして、ここが重要なのだが、相手との関係によって分子も変わってくる。
関係の深い相手との分人は大きく、関係の浅い相手との分人は小さい。すべての分人を足すと1になる、とひとまずは考えてもらいたい。
たしかに、両親の前での自分、友達の前での自分、お仕事相手の前での自分、恋人の前での自分…。
そのひとつひとつが「分人」であり、それらが集まっているのが「自分」ということ。
「分人」はどのように発生してゆくのか
ステップ1:社会的な分人
多数の人とコミュニケーション可能な、汎用性の高い分人
ステップ2:グループ向けの分人
ステップ3:特定の相手に向けた分人
※もっとも、すべての関係がこの段階まで至るわけではない。
→だからこそ、尊敬する人の中に、自分のためだけの人格を認めると、うれしくなる
筆者いわく、上記のステップで分人化が発生していくとのこと。
これを読んで、八方美人な人って反感を買いやすいのはなんでだ?とちょうど疑問が出たところで、本書の中にきちんと筆者の見解を記載してくれていた。
八方美人とは、分人化の巧みな人ではない。むしろ、誰に対しても、同じ調子のイイ態度で通じると高を括って、相手ごとに分人化しようとしない人である。
なるほど。「高を括って」というところがポイントなのかな。
個性とは分人の構成比率
誰と付き合っているかで、あなたの中の分人の構成比率は変化する。その総体が、あなたの個性となる。
分人のモデルには、自我や「本当の自分」といった中心は存在しない。しかし、その時々に大きな比率を占めている分人はある。
つまり、付き合う人によって、その時に創出する個性に違いが出る、ということ。
「今の自分、あんまり好きじゃないな」と思うことが私にはある。
その時って、きっと、私自身が好きな、私にとって居心地の良い分人の構成比率が少なくなっている時なのかも。
だからこそ、何かを変えたいと思った時は、「付き合う人を変えろ / 環境を変えろ」と言われるんだろうな、と納得。
分人の構成バランスを自分にとって心地の良いものにもっていくことが大事だな。
<まとめ>
「自分が抱えている分人の中で、どういう分人が最も大きくなるか」
自分の中でどんな分人が存在しているのかを認識し、どんな分人が好きで(どんな分人の構成比を上げたくて)、どんな分人は好きじゃないのか(どんな分人の構成比率を下げたいのか)、を区分していくことができると、理想としている自分に近づくために、何が必要かを考えられるようになるのでは、と思った。
久々に、ビジネス書というより「ひと」にフォーカスした本を読めて、自分自身と対話できた気がして、すごく楽しかった。