ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第6番 変ロ長調 作品18-6
1800年、ベートーヴェンが故郷ボンからウィーンへと移り7年が経ちました。
30歳の時。
最初の創作の興隆期を迎え、スケッチや断片が次々と楽曲へとなり、交響曲第1番や弦楽四重奏曲の処女作 作品18をはじめとする大作が生まれたのです。
そしてこのころに生涯を通じての理解者となったヴルンスヴィック伯爵家の2姉妹テレーゼとヨゼフィーネ、従妹のジュリエッタ・グイチャルディと出会います(ベートーヴェンは彼女ら3人に楽曲を捧げている)。
それら精神的な充足を反映して、この作品18の6曲集は激情をあらわに綴った第4番をのぞいて、晴朗さと若々しい抒情、そして音楽的な成功に裏付けられたしなやかな自信に溢れています。
当夜の第6番は曲集の終盤ゆえに筆を重ねた成果が表れ、楽曲全体の頂上がこれまでの第1楽章から終楽章へと移り、全体をより引き締めるものとなりました。
その後のベートーヴェンはもちろん、楽章構成音楽の在り方の源流となったのです。
そしてさらに終楽章では新しい試みを聴かせます。
「憂鬱」と題され、「できる限り繊細な感覚をもって」と演奏指示がされた長大な序奏に始まります。
その前の第3楽章の軽妙さと続く主部の溌剌さとの間に挟まれて、大きな効果を生み出しているのです。
規模の大きさや深刻な内容から、これはただなる序奏の域を脱したものと言えましょう。
さらに終結部に突入する前に序奏部分は短く再現され、ためらいがちに主部の主題へと戻るのです。
この「喜」と「憂」の気分の劇的な交代は、社会的な成功を収めながらも、耳の疾患の進行に悩まされていた楽聖の心の内ではないでしょうか?
それでは、そのYoutube音源をどうぞ!
第2楽章 6′00”~ 、第3楽章 12′30”~ 、第4楽章 15′40”~