L.ヤナーチェク 弦楽四重奏曲 第1番 JW.Ⅶ-8 「クロイツェル・ソナタ」
ヤナーチェクといえば、村上春樹の長編小説「IQ84」に引用され、日本で広く知られるようになった作曲家で。
しかし生涯や作品の全貌についてはポピュラーであるとは言い難いでしょう?
ヤナーチェクは1900年をまたにかけて活躍したチェコ東部のモラヴィア地方出身の作曲家です。
20世紀最大のオペラ作曲家の一人で、室内楽も多作です。
当地の民俗音楽を研究し、それを基礎とした作風が特徴とです。
モラヴィアの民俗音楽はスロヴァキアやハンガリーのそれに近いものがあり、その東洋風の性格は私たち日本人の琴線に強く触れるものがあります。
弦楽四重奏曲第1番の正式なタイトルは「トルストイ作の小説『クロイツェル・ソナタ』に霊感を受けて」です。
その内容は主人公の妻とヴァイオリン弾きの伊達男がベートーヴェンの「クロイツェル・ソナタ」を共演したことがきっかけで不倫に陥り、夫は嫉妬を募らせ、その末に妻を殺害するというものです。
禁欲がテーマの小説。
ヤナーチェクはその筋書きを音楽化したのですが、それは敬意ではなく反意を表するためだったのです。
当時69歳のヤナ―チェクは38歳下の女性と道ならぬ恋をしていました。
家庭に恵まれなかったヤナーチェクには純愛であり、彼女から明るい光を照らされ、晩年の創作力の高まりを授かっていたのです。
ヤナーチェクはこの楽曲で俗的な不倫賛同ではなく、「真実の愛」とは何かを訴えたのです。
全楽章で16分ほどの長さ。
妻と伊達男の愛の時間、そして夫の苛立ちと嫉妬がからみながら曲は展開していきます。
なお第3楽章の冒頭の旋律はベートーヴェンの「クロイツェル・ソナタ」の引用。
すなわち妻と男が愛を語り合う場面です。
終楽章の愛の時間の最中に夫が踏み込み、一転して修羅場。
(;^_^A
破局へと向かい、悲劇が終わった後、先のヤナーチェクの胸中の吐き出しが響いて幕。
それでは、この曲の動画をどうぞ!
第2楽章 4′00”~ 第3楽章 7′55”~ 第4楽章 11′30”~