面白い/ユニークな選考方法は基本的にメリットしかない?
突然ですが「開いたトランプ」というアガサクリスティの小説をご存知でしょうか。日本でも人気のエルキュール・ポワロ シリーズの一冊です。あらすじを引用するとこんな感じ。
名探偵ポアロは偶然から、夜ごとゲームに興じ悪い噂の絶えぬシャイタナ氏のパーティによばれた。が、ポアロを含めて八人の客が二部屋に分れてブリッジに熱中している間に、客間の片隅でシャイタナ氏が刺殺された。しかも、居合わせた客は殺人の前科をもつ者ばかり…ブリッジの点数表を通してポアロが真相を読む。
もう少し詳しく紹介すると、悪趣味な奴として有名なシャイタナ氏が8名のゲストを呼んでパーティーを催します。そのうち4名は名探偵ポワロや現役の刑事など「探偵サイド」。そして残り4名が過去に恐らく殺人を犯し上手く逃げ切っていると思われる「犯人サイド」。つかまっていない殺人者をパーティーに呼んで、探偵や刑事と会わせてみて、本人はその様子を見てニヤニヤするという本当に趣味の悪い企画です。でも、そのパーティーの間、みんなでブリッジというトランプゲームをしている間に、誰かがシャイタナ氏を殺してしまうのです。犯人は恐らく、殺人の秘密を知られた事を悟った「犯人サイド」の誰か・・・。というお話です。
で、この小説で特徴的なのがポワロの推理ロジック?灰色の脳細胞はブリッジの得点表をもとに各人のプレースタイルとシャイタナ氏殺害の手法に共通する心理的な傾向を読み取り、犯人を特定していくのです。人間の本質は勝負事に表れる。ということでしょうか。ヒトフレの更新担当は、この小説が子どもの頃、大好きで何度も繰り返して読んだために、会社の同僚と麻雀をすると、そのプレースタイルが本性なのではないかと思ってしまう大人になってしまいました。
で、本題です。
勝負事に人間の本質が表れる。毎年、話題になり恒例になりつつあるスターティアさんなどの「麻雀採用」も、そんな考えが下敷きにあるのかもしれません。そしてこういうユニークな採用手法って、本当にここ数年で増えた印象がありますよね。まとめ的な記事をさらにまとめてみると、こんな感じになります。
■【ちょっと変わった】面白い選考方法取り入れている会社【就活】 naver まとめ
■採用が面白い!つい応募したくなる斬新な選考方法の会社まとめ ジョブリエ
■【厳選30選】ユニーク採用やるっきゃない!面白い採用方法の事例まとめ 婿養子の島根移住ブログ
■採用担当者必見!面白い採用選考で学生を大量ゲット!学生は楽しい就活を望んでいる MEDIA FOR YOU
■【何コレおもしろい!】ユニークな新卒採用・応募・選考・PR集めました!Part 1 SR 人事メディア
■おもろい!ちょっと変わった採用をしている企業10選 MAKEPO
で、なんでここまでユニークな採用選考をする企業が増えているのかというと、1つは「売り手市場(特に新卒)で人材獲得の競争が激化していること」、もう1つは「基本的にメリットしかないこと」と言えると思います。そのメリットはいくつかあります。
■パブリシティ上の効果
ユニークな採用選考はメディアに取り上げられやすく、一度、大きく取り上げられればそのパブリシティ効果は、かなりものになります。多くの人に企業名を覚えてもらうことはもちろん、多くの求職者に採用活動を行っていることを告知できます。
■採用ブランド上の効果
近年、旧来の日本型雇用慣習への批判が高まっていますから、その常識を破るようなタイプの新卒採用は学生からも好感度を得やすいと言えます。またリクナビなどのナビサイトで採用広報をする上でも、いいコンテンツになります。初任給を3万円あげるよりははるかに安上がりです。
■優秀な人材獲得にワンチャン
相対的な採用弱者と言える企業に限って言えることですが、ユニークな選考方法を行うことで通常の選考では応募してくれない層からの応募の可能性が高まるため、優秀な人材獲得の可能性が少しだけ高まります。
と、基本的にはメリットしかありません。もちろん内容によっては企業のブランドイメージを毀損してしまったり、コストがかかりすぎたりする可能性はありますが、その他の施策に比べて圧倒的にコスト面やリスク面で優れています。
採用ブランディングを考えると、今の趨勢でいうとそういった選考面でのチャレンジをやっていない方がマイナスという雰囲気すらあります。相対的に採用強者と言える大企業が通常コースとは別にユニークな採用選考を行う特別コースを設けるケースが増えているのもそのような事情を踏まえてと考えられます。
とは言え、こういった選考方法も陳腐化しつつあるため、これからはユニークなだけの選考方法では話題にもならないかもしれません。