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いわぶち動物病院

去勢手術、避妊手術の危険性はどうなのか?

2023.06.28 07:38

いつも去勢避妊は実施した方が良いと説明していますので、多少存在する、手術の危険性をお話したいと思います。


まず、去勢手術のほうは、ほとんど危険性というものがありません。

避妊手術の様に、お腹を開けて、出血を起こすこともまず無いためです。


では避妊手術の何が危険なのかを説明していきたいと思います。

まず最初に問題になってくるのは、手術する子の、内臓脂肪が多いか少ないかがひとつ目のポイントです。


当然ですが、内臓脂肪が多いと、糸が滑ってしまう、また、糸を通す部分が発見しにくい、というのがあります。


次に、これも内臓脂肪の量が関わってきます。

卵巣が取りやすいかどうかが重要になってきます。


脂肪があるほど、卵巣周囲の血管にダメージを与えやすいために、念入りに卵巣切除をする必要があります。


ワンちゃんは特に顕著で、猫ちゃんより卵巣が奥深くにあるために、血管を千切らないように、少しずつ持ち上げて、隠れた卵巣(猫ちゃんと異なり、ワンちゃんの卵巣は外見的には確認できず、少しずつ表面の卵巣をみえるようにしていくことが必要になります)


ここまで来れればもう安心です。

当院では卵巣だけを取って、子宮は切除しません。

この利点は、子宮はホルモンが無くなり、かってに萎縮するため、子宮切除の危険をおかさずにすむこと。(支給切除することでまれに膀胱内の根本を縛ってしまう、ということがありえます。新人獣医くらいしかやりませんが、それを予防出来るのも利点もいえます)


子宮を切除すると、特に大型犬の1割ほどが、将来的に尿漏らしを起こす事があります。

卵巣だけを切除することで、それを防ぐことができます。



今までのをまとめると、避妊手術で危険なこと、というのは、脂肪が多い場合、滑って糸がうまく縛れないことがありうること、卵巣のある場所は深いため、それを引っ張りあげて結ぶ、ということが必要なため、卵巣の靭帯が切れてしまうことがあること(靭帯がキレることは特に危険ではありません。ごく稀に、一緒に血管が切れてしまうことがあるためです)。ですが、血管が切れるとすぐにわかるので、すぐに止血をすることが可能です。


尿漏れを誘発することがあること。これは卵巣のみ切除することで予防できます。


こうして羅列すると、危険なのはほとんど内臓脂肪が多いせいであることがわかります。


ちなみにオスの去勢手術で危険なことはほとんどありません。


メスの避妊手術をするにあたって、内臓脂肪が少なければすぐに卵巣が発見できます。

発見した後に、卵巣の前後を縛るのですが、脂肪が少なければ滑ることが無くなり、卵巣も体外に出しやすくなります。

脂肪が多いと、何度も卵巣周囲を縛って、少しずつ卵巣を外側に出してくる必要があるんです。

出した卵巣を切除する時も、脂肪で隠れているので、ここでも脂肪がない方が安全に取れるし、取り逃しが起こることもありません。


卵巣の取り逃しとは、卵巣を完全に取りきれず、少し残ってしまうと、卵巣が再生し、数年後に再び発情が起こってしまうことです。


避妊手術をしてすぐに再び発情が来た!という時は、卵巣の再生ではなく、たまに起こる、ホルモンの影響による、卵巣が完全に存在しないのに起こる発情であることが多いです。

言っている意味が難しいかとは思いますが、こういう発情の場合、カバサールという発情を押さえるホルモン薬を使用すると、その後のおかしな発情は起こらなくなることがほとんどです。



こうして状況を整理してみました。

まず、ワンちゃん猫ちゃんとも、オスの場合、去勢手術での危険性はほぼありません。


メスの場合、脂肪が少ない方が安全性が増します。

卵巣を体外に出す際、猫ちゃんの方が脂肪に覆われていない、柔らかい、ワンちゃんは脂肪で隠されている、体内の奥の方に入っており、体外に出す際に、より慎重を要する。


子宮も切除すると稀にですが、将来的な尿漏れや、避妊手術の素人だと、膀胱を縛ってしまうことがある、などがありますが、当院では卵巣のみの切除のため、その心配は無し。


手術の危険性は

犬猫の去勢手術<猫の避妊手術<犬の避妊手術

と言った感じになります。


また、基本的には脂肪が少ないほど安全性が保たれると思って良いかと思います。


こうして危険性を書きましたが、当然ながら、健康体のワンちゃん猫ちゃんを手術するため、本当に危険かというと、そうでもない。

という話になります。

まだ避妊手術をしていない方は、上記のことを参考にして、手術の予約を取っていただくと良いかと思います。