6月のお道具「安南染付」
今月のお道具の取り合わせで光っていた安南手のお茶碗やお茶入れが大変可愛らしいので取り上げてみたいと思います。
●興隆寺収蔵のお道具たち
興隆寺のお茶のお稽古はできる限り良いものを使って、お道具の楽しみも知りながらお作法を学ぶことをコンセプトにお稽古をしています。当山住職は大変古美術に造詣が深く、お道具にまつわる歴史小話など大変興味深いものです。
興隆寺のお道具は、もともとお寺のものというよりは、師範の先生方から譲り受けたものなど様々です。いろいろな人の手を渡り、興隆寺に行き着いた素敵なお道具たちがお稽古の度に登場します。住職の記憶力もすごいもので、大変たくさんのお道具がある中、季節にピッタリのものをヒョイと取り合わせてくれます。
お茶道具の整理というのは本当に大変なもので、娘の私はあまりの果てしなさに、毎度木箱の山に圧倒されているところです。いつか、お茶道具の収納方法についてもまとめられたら・・・と思っています。様々な大きさの木箱に困っていらっしゃる方も多いのではないかと。
●今月のお道具
今月はお天気も良く、お庭の準備も整いましたので、晴れた日はお外で野点のお稽古をしています。野点では陽の元で美しく見えるものを、ということで色の鮮やかなお道具を取り合わせています。室内でのお稽古では、高麗青磁や安南染付などが取り合わせられています。陶器にあまり馴染みのない方にとっては「あんなんそめつけ?」「あんなんで?」と耳にしても、何のことかピンとこないかもしれません。
「あんなん」について取り上げてみようと思います。
●安南(あんなん)って何?
安南というのは現在のベトナムの事。フランス統治時代のベトナム北部から中部を示す歴史名称だそうです。ベトナムで作られた陶器のことなのですね。ベトナムで陶器が作られ始めたのは、12世紀ごろから、南中国の技術が伝わり色のある釉薬の焼き物が焼かれました。その後、14世紀ごろ、中国陶器を思わせる染付などの磁器に下絵を描いたものが作られました。
6月第4週目に取り合わせられた小ぶりな茶入れや、いくつかの染付のお茶碗は安南染付といわれるものでした。図案も中国の染付とは異なり、釉薬との滲みや図案のラフさが日本の茶人好みにはまったのでしょう。滲みのある染付、ぼんやりとした景色や透明釉薬の貫入が味わい深く、経年の変化も想像され、愛着を持たせてくれるように感じられました。