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MARIKO IKEDA

ポンペイ島でのタコノキ採取

2017.06.19 15:00

2017年、ミクロネシア連邦の首都のあるポンペイ島でタコノキの実を採取しました。

島にはパンダヌステクトリウスという種があちらこちらに自生しています。中には庭木として栽培されているものも多く見られます。地元ではデイブや、キパール(カイパー)と呼ばれているそうです。 

モキール環礁では栽培品種に名前をつけて大切に管理していましたが、ポンペイに住む人々はパンダヌスに食べ物としての興味はないようです。市場でも売られていませんでした。

ポンペイ島の各地にレストランがあり、タロイモ、キャッサバ、バナナ、ココナッツなどを用いた地元の料理を食べることができます。特に蒸した芋類などは素材の味が良いのか、もっと食べたいと思わせられる味でした。醤油が置いてあり日本人好みの味付けも多いです。 

対照的に、ホテルではハンバーガーやポテトなどのいわゆるジャンクフードが提供されていました。それらの食材は島の外から輸入されるため鮮度も良くなく、ここまできてわざわざ食べるほどではないと感じました。町の中に点々とあるコンビニでは、輸入された様々な飲み物やお菓子が販売されています。地元の人にとっては、こちらのジャンクフードの方が魅力的に見えるようです。 

タコノキ採取にご協力いただいたアイランドフードコミュニティーは、前述のような近代化した食生活の改善や、伝統的な農業への回帰を目的に活動するNGO団体です。地場作物を使った試作品開発や、環礁にタコノキの挿し木をする伝統文化の推進事業、ミクロネシア大学の学生への技術指導などを紹介していただきました。

ポンペイ産のコショウとカラチバナナは、味と栄養価において世界的に有名です。農作物の栽培と聞くと、管理された広大な畑で育てるものと想像しがちですが、ポンペイではジャングルの中での混植栽培が一般的です。例えば、ツル性のヤムイモを作る場合には支柱が必要になるため、適度な枝振りと日陰を作るパンノキと混植するという伝統的なノウハウがあります。ジャングルの多種多様な植物が枯れて堆積することで肥沃な土壌が得られる点も、混植栽培が受け継がれる理由です。

このような伝統的な混植農法は大量生産には向きませんが、島の食生活を支えるのには十分です。単に蒸しただけの芋がとても味わい深く感じたのは、ジャングルの恩恵を受けているからだと納得しました。

しかしながら、近年はポンペイ島のコショウに目をつけた海外生産者が入り込んで、量産のためにジャングルを開墾して畑を作り、化学肥料を使って手っ取り早く作物を育てるようになりました。また、世界遺産に登録されたナン・マドール遺跡への集客を見込み、大都市からの直行便の新設も計画されているそうです。 


 近代化の波は、植物の環境だけでなく人間の文化も大きく変化させます。難しい問題なので無責任なことは言えませんが、将来的に植物も人々も幸せであるよう願うばかりです。