湖畔に溶け込む癒し空間の演出「旧イタリア大使館別荘」(アントニン・レーモンド設計 1928年)
(「美の巨人たち」テレビ東京放映番組<2014.12.13>主な解説より引用)
奥日光の中禅寺湖畔に佇む、簡素でありながら、凛として建てられた木造建築の建物。
外国の大使館別荘でありながらも、現地に溶け込ませるように、日光杉を材料にふんだんに使いつつ、日光の職人技を信頼して大胆にして、特色あるワンルームの1階空間を、見事に演出。
対岸の湖にそのまま吸い込まれそうなくらいに、空間・環境との調和というか、居心地の良さとしての一体感を、見事に醸し出している・・・
特に天井にそのこだわりが垣間見える。
フランク・ロイド・ライトに師事したアントニンではあったが、西洋的建築技法をそのまま輸入しただけの建物には、なんらか抵抗があったのではないか。
そこに、日本的ともいえる、石畳、市松、亀甲といったデザインを、網代(あじろ)として、天井のそこかしこに組み込む。
かつての千利休が、茶室の天井に取り入れていた日本的技法を取り入れたという点で、括目される建物である。
(番組を視聴しての私の感想綴り)
絢爛豪華ではけっしてなく、簡素で素朴な中にも、ヨーロッパ的風情というか、感性を、自然に取り入れつつ、見事な「癒し空間」を現出させている。
「床の間」ならぬ、「暖炉」の周囲に、こだわりがいくつも垣間見える。
ただ、それは決して押しつけではなく、立地している中禅寺湖の湖畔の中に、溶け込み、
調和し、別荘としての「安らぎ」と「落ち着いたたたずまい」を、まさに演出しているのである。
それは、「コーディネート」というよりは、「プロデュース」そのものであると感じた。
写真: 上「旧イタリア大使館別荘<外観> 中禅寺湖畔 アントニン・レーモンド設計 1928年」
下「 同別荘 <内観>」