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臍帯とカフェイン

Visit Labyrinth(0:0:2)

2023.06.30 15:52

協力:モモチヨロズ 様

リッジエル:初めまして、神父。

リッジエル:この度は取材をお受けいただきありがとうございます。

リッジエル:トリビューンタイムスで記者をしておりますリッジエルと申します。

ハインスタイン:トリビューンタイムス、

ハインスタイン:あの古ぼけた街の小さな新聞屋だね。

ハインスタイン:リッジエル……覚えたよ、リッジエル。

リッジエル:歴史ある街並みが今なお残る美しい街ですよ、神父。

リッジエル:今回の会話は記録させていただきますがよろしいですか?

ハインスタイン:歴史があるという事は、それだけ多くの惨事もあっただろう、リッジエル。

ハインスタイン:どの新聞社もそうだ。「新聞社がある街は、そもそも事件の多い街だ」と。

リッジエル:歴史には惨劇、悲劇、喜劇、様々な側面がありますからね。

リッジエル:そして、私の仕事はあらゆることがらを文章にて残すことです。神父。

リッジエル:もちろん、あなたのことも。

ハインスタイン:……録音ね、ああ、かまわないよ、

ハインスタイン:ぜひとも有意義な時間にしよう、リッジエル。

リッジエル:それでは、録音させていただきます。

リッジエル:有意義な時間になるよう私も務めます。神父。

リッジエル:申しわけありませんが、名乗っていただいても?

ハインスタイン:ガブリエル・M・ハインスタインだ。

ハインスタイン:わざわざ名乗らせるとは、君は中々に良い趣味をしているじゃないか、リッジエル。

リッジエル:取材の際のルーティーンのようなものでして、気分を害したのでしたら申し訳ありません。

リッジエル:それでは、まずは確認をさせていただきます、Mr.ハインスタイン。

リッジエル:あなたは過去12年の間に38人の善良な市民を殺害した。

リッジエル:これに間違いはありませんか?

リッジエル:もしも、訂正すべきところがあれば教えていただけますか。

ハインスタイン:正確には、38名の殺害と、1名の暴行と監禁だ。

ハインスタイン:……概ね、間違いはないよ、リッジエル。

リッジエル:その最後の1人を手にかける前に、あなたは逮捕された。

リッジエル:39人目の犠牲者となるはずだった者の名は……。

ハインスタイン:ベルコ

ハインスタイン:ベルコ=マクスウェル。

ハインスタイン:それが、彼の名だよ。

リッジエル:彼と初めて会ったのはいつですか?

ハインスタイン:さあ、いつだったかな。

ハインスタイン:遠い昔のような気もするし、つい最近出会ってばかりのような気もするね。

ハインスタイン:彼の事がそんなに気になるのかい?

リッジエル:えぇ、彼はあなたの被害者の中で唯一の生存者です。

リッジエル:彼の目から見たあなたも私は知りたいと思っています。

リッジエル:とはいえ、現在、彼は……。

ハインスタイン:彼がどうなっているか、は。

ハインスタイン:君のほうが詳しいのではないかね? リッジエル。

ハインスタイン:ここの牢屋の奴らは、外の情報に疎くてね

リッジエル:……暴行による傷は癒えましたが、心の傷は深く、今も療養中の身です。

リッジエル:あなたはなぜ彼を選んだのですか?

リッジエル:そして、彼にいったいなにをしたのですか?

ハインスタイン:リッジエル。

ハインスタイン:リッジエルリッジエルリッジエル。

ハインスタイン:それを聞いて『君はどうするつもりなのかね?』

リッジエル:『あなたを書き記すのですよ』Mr.ハインスタイン。

リッジエル:あなたがどこで生まれ、どのような環境で育ち、どのような神父であり、どのような殺人者であったのか。

リッジエル:あなたを歴史の数ある惨事の1ページとして書き記すのです。

ハインスタイン:『それを記録して何になる』、リッジエル。

ハインスタイン:なんの輪郭をなぞっている?

リッジエル:記録して何になるか。それは私にもあなたにも『関係のない』ことです。

リッジエル:それを読んだ者がどう思うかは、あずかり知らぬ部分です。

ハインスタイン:……見たところ君は、こういった犯罪者の取材に慣れているように思える。

ハインスタイン:アポイントのとり方、どうしたらその『犯罪者たち』が取材に応じてくれやすいか?

ハインスタイン:気持ちよくなる性感帯をいじるような言葉の手紙。

ハインスタイン:そして、私を見る目。態度。息遣い。

ハインスタイン:『犯罪者』を追って、長いだろう?……リッジエル。

リッジエル:流石、神父。よく見ていらっしゃる。

リッジエル:確かに私は今まで何人もの『あなたと同じ立場の方』に対し取材を行ってきました。

リッジエル:そして、その経験から取材を円滑に進めるために、私は相手の求める人物になるよう演じている。

リッジエル:例えば、あなたのような方と話す際には、知性とユーモアを併せ持つように。

リッジエル:ですが、実際あなたに会ってみると、神父であるにもかかわらず、なかなかにセクシャルな要素もお好きなようだ。

ハインスタイン:ふふ、ただの食わせ物かと思ったが、君は中々に面白い『人間』のようだ。リッジエル。

ハインスタイン:しかし、それなら尚のことわかるだろう?

ハインスタイン:『そう簡単に、今までの取材対象が口を割ったかね?リッジエル』

リッジエル:Mr.ハインスタイン。あなたは私のことを『面白い人間』と知っていただけたようですが、

リッジエル:あいにくと私はあなたが『どんな人間』なのかが未だわからないのですよ。

リッジエル:今回の取材を受けていただけると分かったその日から、私の頭の中はあなたのことで一杯だった。

リッジエル:Why? How? What for?

リッジエル:神父、有意義な時間にしようじゃありませんか。

ハインスタイン:ふふ、食えん男だ。

ハインスタイン:良いだろう、君のその度胸に免じて、質問に答えよう。

ハインスタイン:しかし、ただ答えるだけでは面白くない。

ハインスタイン:そうだな、私が一つ、質問に答えるたびに

ハインスタイン:『君がおかした過ち』を、一つずつ懺悔してもらおう。

ハインスタイン:いかがかね。

ハインスタイン:君たちは、好きだろう?こういった会話のキャッチボールが?

リッジエル:それはあなたから『赦しの秘跡』を受けるということですか?

ハインスタイン:私はもう『神父』ではないよ、リッジエル。

ハインスタイン:私はただの囚人だ、そうだろう?

ハインスタイン:君は『神』に、懺悔すればよい。

ハインスタイン:簡単だろう?

リッジエル:わかりました。

リッジエル:では、まずひとつめの質問です。

リッジエル:あなたは今までに38人もの市民を殺害し、39人目であるベルコ・マクスウェルをも手にかけようとしていた。

リッジエル:そして、恐らく警察に捕まらなければ、あなたはこの先も同じように凶行を繰り返し続けていたと私は考えています。

リッジエル:その根源となる動機をお聞かせ願いたい。

ハインスタイン:ふむ、そうだね。

ハインスタイン:私は、怖かったのだよ、リッジエル。

リッジエル:怖かった……?

ハインスタイン:ああ、そうだ。

ハインスタイン:私は臆病ものでね、リッジエル。

ハインスタイン:私に向けられた『愛』が、

ハインスタイン:『優しさ』が。

ハインスタイン:いつか消えてしまうのではないか、

ハインスタイン:いつか裏返るのではないかと、いつも怯えていたのだよ。

リッジエル:……だから、あなたに愛を向けた者を、優しさを向けた者を、消える前に、裏返る前に手をかけたと……?

リッジエル: ……。

リッジエル:Mr.ハインスタイン。もしや、あなたは……。

ハインスタイン:……さあ、質問には答えたよ。次は君の番だ

リッジエル:(ため息)

リッジエル:私が犯した罪を懺悔する、でしたね。

ハインスタイン:あぁ。

リッジエル:……私はさきほど自分が書いた記事を読んだ者がどう思うかは、あずかり知らぬ部分だとお伝えしましたが、新人だった頃はこのような考えではありませんでした。

リッジエル:それこそ、正義に満ち溢れ、自分こそが正義の代弁者だと思いあがってたのです。

ハインスタイン:ほう、濁すじゃないか。

ハインスタイン:つまり何が言いたいのかね?何に対しての懺悔なのかね?

リッジエル:……当時の私は記事に書いた加害者の家族がどんな目にあうのかまで思い至らなかったのです。

リッジエル:新聞記者になって5年目の夏、1人の少女が亡くなりました。

リッジエル:彼女は私が初めて取材を行った『あなた側の方』の娘さんです。

リッジエル:彼女はどこにいっても人殺しの娘として見られ、それを苦に自殺しました。

リッジエル:……懺悔します。私の記事が、いえ、私が彼女を殺しました。

リッジエル:それ以降、私は正義を口にすることをやめました。

リッジエル:私は事実を記すだけの、ただのペンとなったのです。

ハインスタイン:そうか、そうか。

ハインスタイン:リッジエル、よく話してくれたね。

ハインスタイン:ふふ、私はもう『神父』ではなく『囚人』だが。

ハインスタイン:ああ、神は君を赦すだろう。

リッジエル:ありがとう、Mr.ハインスタイン。

リッジエル:初めて他人に話したが、多少、心が軽くなったようにも感じる。

リッジエル:感謝するよ。

ハインスタイン:さあ、リッジエル。次の質問に進もうじゃないか。

リッジエル:えぇ、Mr.ハイン……、いや、ガブリエルと呼んでも?

ハインスタイン:当然だ。リッジエル。我々はもうすでに秘密の共有者だ。好きなように呼んでくれたまえ。

リッジエル:では、ガブリエル。2つ目の質問だ。

リッジエル:1つ目の答えを聞いて、私の中にひとつの仮説が生まれた。

リッジエル:その答え合わせがしたい。

ハインスタイン:聞かせてみたまえ。

リッジエル:『もしも、君の目の前に神がいたならば、君は神を殺すかい?』

ハインスタイン:私が?神を?ふふ。

ハインスタイン:はは、ははははは!!!

リッジエル:(笑いにかぶせるように)

リッジエル:神は私たちの前に姿を現すことはなく、言葉を交わすこともできない。

リッジエル:そんな神からの『愛』や『優しさ』だからこそ、君は怯えることなく、それを享受することができた。

リッジエル:だからこそ、君は神父になったのではないか?

リッジエル:神父が人殺しになったんじゃない。人殺しが神父になったんだ。

リッジエル:きっと君なら、目の前に神がいて、殺すことができる存在であったならば、

リッジエル:その神の『愛』と『優しさ』にすら疑念を抱き、怯え、数多の犠牲者同様、手にかけるのではないか?

ハインスタイン:「リッジエルくん」

リッジエル:……なんだ?

ハインスタイン:その答えは、ノーだ。

ハインスタイン:なぜなら、

ハインスタイン:「もう、殺したよ。」

リッジエル:そ、それはどういう……!

ハインスタイン:さあ、次は君の番だ。

リッジエル:……っ、わかった。

リッジエル:先ほどの懺悔で言ったように、

リッジエル:私は自分の記事で人を殺めてから、ただ事実を記すだけのペンであろうと自分に誓った。

リッジエル:ペンは心を持たない。なにがあろうと、ただ、事実を記すのみ。

リッジエル:――4年前、私はとある麻薬カルテルの幹部に取材を行った。

リッジエル:今回のように相手の求める記者となり、とても有意義な時間を過ごすことが出来たよ。

リッジエル:その翌日、記事を書いていた私のもとに一通のメールが届いた。

リッジエル:『書けば、殺す』と。

リッジエル:私はそのメールを気にも留めず記事を書きあげ、それはトリビューンタイムスの一面を飾った。

リッジエル:そして、その日のうちに、それまで私を支え続けてくれていた妻は、殺された。

ハインスタイン:ああ、『リッジエルくん。』

ハインスタイン:君はその正義の名の元に、自身を貫いたのだね。

ハインスタイン:そうか、そうか。

ハインスタイン:しかしその妻を殺したのは紛れもなく、君。そうだね?

ハインスタイン:一体何を恨んだかね、『リッジエルくん』

リッジエル:……ガブリエル、私は何度も言っているじゃないか。

リッジエル:正義? 恨む?

リッジエル:ペンはただ記すのみだ。

リッジエル:正義をうたうことも、呪詛をはくこともない。

リッジエル:確かに妻を殺したのは、私だ。

リッジエル:だがね、だから、なんだというんだ?

リッジエル:私は妻が殺されたことも記事にした。

リッジエル:さあ、ガブリエル・M・ハインスタイン。

リッジエル:今度は君の番だ。

リッジエル:『神を殺した』とはどういうことだ?

ハインスタイン:妻の死すらも!!飯の種にする!!!

ハインスタイン:はーーーっはっは!!そうかい、リッジエルくん、そうなのだね。

ハインスタイン:いい話を聞かせてもらった。

ハインスタイン:では、そうだね。

ハインスタイン:『リッジエルくん』、神とはなんなんだと思うかね。

ハインスタイン:私は、長年、聖職者として、この神という存在のことを考えた。

リッジエル:是非、ご教授いただきたい。

ハインスタイン:『神』とは、『心』なのだよ。

リッジエル:……心?

リッジエル:それはいったい誰の?

ハインスタイン:『それぞれの』

ハインスタイン:『己自身の』

リッジエル: ッ……!

リッジエル:では、神を殺したというのは……!

ハインスタイン:リッジエルくん、『神は愛してなどくれなかったよ』

ハインスタイン:いつだって、愛は『人の中にあった』。

リッジエル:人の中に、とは……。

リッジエル:ガブリエル、君がいうと比喩に聞こえないな。

リッジエル:つまり、君は神のいう不確かな愛を受け入れられず、神を殺し、生暖かい確固たる愛を得たと?

ハインスタイン:人とは孤独なのだよ、リッジエルくん。

ハインスタイン:こんな年齢になっても、愛とは尊いものだ。

ハインスタイン:欲しくて欲しくて堪らなくなる。

ハインスタイン:それは君も同じでは無いかね、リッジエルくん。

リッジエル:……ガブリエル、君の言葉を借りるなら、私もすでに神を殺している。

リッジエル:己の胸にペンを突き立て、血潮をインクに、歴史をつづると決めたあの日に。

リッジエル:そして、私と君が致命的に異なる部分は『それ』だ。

リッジエル:私は、愛は尊く、素晴らしいものだと文章にすることはできる。

リッジエル:だが、そこまでだ。

リッジエル:私は愛を求めてはいない。

リッジエル:そして、与えることもない。

リッジエル:……ガブリエル、……そんな目で私を見ないでくれ。

ハインスタイン:リッジエルくん、我々は何一つ変わらぬ『人間』だよ。

ハインスタイン:まだ、聞きたいことはあるかね?リッジエルくん。

リッジエル:私も君も『人間』だというのなら、……君にも『愛』はあるのか?

リッジエル:38人の犠牲者を出した君にも、数々の記事で数えきれない犠牲者を出し、あまつさえ妻ですら殺した私にも!

ハインスタイン:もうそれの答えは出ているじゃないか、リッジエルくん。

ハインスタイン:またその愛の定義について語るつもりかね?

リッジエル:……認めない。私はそれを認めるわけにはいかない!

リッジエル:『お前』は狂った殺人鬼で、

リッジエル:『俺』はただのペンでしかない!!

リッジエル:人間であってはならない!!

リッジエル:俺たちに神はいない!!

ハインスタイン:だから、言っているだろう!!リッジエル!!!

ハインスタイン:『神はもう殺した』それは、私も、お前もだ。

ハインスタイン:いいんだ、それでいいんだリッジエル!!!!

ハインスタイン:飾られた言葉はいらない!!

ハインスタイン:君の頭でっかちの知識も必要はない!!!

ハインスタイン:我々が話していたことはなんだ!?

ハインスタイン:神がいるかどうかか!?

ハインスタイン:いいや!!!ちがう!!!

ハインスタイン:君は私の中に求めようとしているがそれは違う!

ハインスタイン:リッジエル!!

ハインスタイン:これは『答えあわせ』だ!!

リッジエル:(落ち着くために深呼吸)

リッジエル:すまない、取り乱した……。

リッジエル:『神は死に、愛は残る』か……。

リッジエル:ガブリエル、君は38人の愛を手に入れた。

リッジエル:そして、もう君はこれ以上愛を手に入れることは難しいだろう。

リッジエル:ガブリエル、『今、君は満足しているのか?』

リッジエル:教えて欲しい。懺悔は君の言葉を受け止め、返させてもらおう。

ハインスタイン:『リッジエルくん。』

ハインスタイン:もし私が今、満足しているのなら、こうして君と、会話をしていると、思うかね?

リッジエル:君も、私も、38人の犠牲者も、同じ『愛を持つ人間』であると、君はそう言うんだね?

リッジエル:人殺しでもペンでもなく。

ハインスタイン:その通りだよ、リッジエルくん。

ハインスタイン:その通りだ。

ハインスタイン:君も、『ペン』ではない。

ハインスタイン:私が愛すべき、『人間』だよ。

リッジエル:『愛すべき』か。

リッジエル:ガブリエル、秘密の共有者として、友人として言わせてもらうが、君の愛は歪んでいるよ。

リッジエル:では、君は神父でもなく、殺人鬼でもなく、『人間』であり、愛を確固たるものとする為に『愛した』というのかい?

リッジエル:まるで、暗闇を怖がる子供が母親の手を求めるように。

ハインスタイン:その通りだ。リッジエルくん。

ハインスタイン:しかし愛は歪んでいて、さも当然ではないかね。

ハインスタイン:なぜなら数多くの愛に触れれば触れるほどに、まるで粘土細工を捏ねるかのように愛の形は変わるはずだろう?

ハインスタイン:それとも何かね、リッジエルくん。

ハインスタイン:君の愛は、誰にも触れられることもなく、綺麗な球体のままだとでも?

リッジエル:残念ながら、私の愛も歪んでいる。

リッジエル:そして、私は『それ』を愛とは呼べるものでは無いと思っている。

リッジエル:こうして話をして分かったことだが、ガブリエル、君は見た目に全くそぐわないほどに幼い。

リッジエル:君の瞳を見つめていると、まるで子供と話しているようだ。

ハインスタイン:しかし、きっと、君も私と同じになっていくよ、リッジエルくん。

リッジエル:そうだろうか。君が言うと本当にそうなるように思えてしまうよ。

リッジエル:あぁ、すまない。立て続けに質問してしまった。懺悔の時間はまだありそうかい?

ハインスタイン:ああ、是非とも聞かせてくれ、リッジエルくん。

ハインスタイン:友人として。君の懺悔を。

リッジエル:……私の目の前に1人の友人がいる。その男は愛を求めつづけた。ただ、その求める方法を間違えただけだった。

リッジエル:それでも、私はその友人を記事として、悲惨な歴史の1ページとして、事実を書かなくてはならない。

リッジエル:思うところはある。あるが、それはペンの思うところではない。

リッジエル:私を人間と読んでくれた優しい友人の言葉を受け入れられない弱い私を許して欲しい。

リッジエル:ガブリエル・M・ハインスタイン

ハインスタイン:リッジエルくん、私は君を赦そう。

ハインスタイン:さあ、行きたまえ。

ハインスタイン:いつか交わる時が来る、そしてその時また君の心の中に『私が訪れる』だろう。

リッジエル:(部屋を出ていく前に振り返り)

リッジエル:あぁ、そうだ。

リッジエル:肝心なことを忘れていた。

リッジエル:最後にひとつだけ教えてくれ。

リッジエル:君が死刑判決を受けた時のあの言葉。

リッジエル:「私はいつでも脱獄できる。条件さえ揃えば、明日にでも。」

リッジエル:あれはどういう意味なんだ?

リッジエル:君は脱獄する気なんてないだろう?

ハインスタイン:「脱獄……ああ、もうその必要は無くなったよ。」

ハインスタイン:「充分すぎるほどに、皆に私の愛は伝わるだろうからね。リッジエル。」

リッジエル:君の愛が伝わるかどうかはわからないが、

リッジエル:事実のみを書かせてもらうよ。

リッジエル:また会いに来るよ。

リッジエル:次は1人の友人として