星の時計のLiddell
天使がおりてきて
ささやく
これは秘密(ないしょ)だけど
秘密(ないしょ)だけど…
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これは、内田善美著「星の時計のLiddell」の、最終話の一節。
1982年連載開始、1985年に第1巻刊行。連載開始は36年前なんだねぇ…。
ざっくりあらすじをお伝えすると、幽霊になった男と、その友人の話。(さっくりすぎやしないか…)
発売当時、「少女漫画の金字塔」とか「最高傑作」とか、なんだか物凄い帯があって、やたら豪華な装丁(33年前のワタシにはそう見えた)で、手が届かない傑作…と思っていたのだけど、どうしても惹かれて購入して、読み倒して読み倒して、更に読み倒して、埋没した作品です。
なんとなく、いつも読み返していて、先日、また呼ばれた感じがして、読み直しました。
読む度に、気づきが増す感じ…。
ぼんわりとしていた輪郭が、徐々にはっきりしてきて、固まっていくような、そんな感覚があります。
物質世界を追求しすぎた為に、精神が追い付かず、乖離を起こす…という登場人物達の会話は、現代社会の問題を先取りしているし、中でも、新しい人類の登場についてとか、能力ではなく、精神が大事なのだ、とか、そういった内容は、今も(というか今になって)声高に叫ばれている事かと思います。
36年経って、ようやく、精神世界の重要性について、憚りなく注目できるようになった…ということでしょうか。
作者の内田義美さんが、サイキックだったかどうかはわかりません。特別、スピリチュアルな内容を描こうとしたとも、あまり思えません。
作者の内側をどんどん視ていったら、このような作品ができた、としか言えないのですが、きっと、描きたかった世界だったのではないかな…と感じます。
この作品の後、「草空間ーめらんこりかるshoppingー」を最後に、作家活動をやめ、実家で暮らしているそうですが、これも1997年の情報なので、今はどうされいるのか…。
ご本人が単行本の復刊を望まれないということで、古書扱いとなっていて、高値がついてしまって、入手困難ですが、どこかで出会えたら、是非、手に取っていただきたい漫画です。