ノワールデジール(NDBE):視力及び不妊に関する情報
CoolLizard.comの投稿より出典
Noir Desir Black Eye
このベースモルフは頭文字をとってNDBEと略称されたり、更に省略してNDとも表記されます。
国内ではカタカナでノワールデジールとも表記され、世界中で現在も広く流通しています。
本種に存在するEye mutationの一つです。
発表当時から独特な虹彩の表現には注目が集まりました。
同時に、潜性遺伝である事が発表された後に流通が広がるまでに時間がかかった様子には、当時から疑問の声も集まっていました。
その後、国内へも流通が始まって間もなく、このベースモルフに存在する遺伝性疾患が露見しました。
今回はこのモルフの特異性について解説していきます。
[はじめに]
NDBEは、完全な"オリジナル"個体が不明であるという経緯を持ちます。
このベースモルフを作出したと考えられるGecko GeneticsはNDBEの出現に気づく事なく、ヘテロ接合体が水面下で流通し、最終的に2名のブリーダーの手によって固定・流通がなされました。
これらの事情や、本ベースモルフの基本的な特徴については、下記リンクのNDBEの項にて解説を行っております。
本記事では、NDBEに存在する遺伝性疾患について、掘り下げて解説をしていきます。
[NDBEの抱える遺伝性疾患]
GeckoBoa Reptilesの投稿より出典
●メス個体の不妊体質
NDBEにおいて、最も有名な遺伝性疾患です。
ホモ接合体のメスが、準不妊体質(殆どの場合完全不妊)である事が現在までに判明しています。
尚、今回"準不妊体質"という表現を使う理由として、僅か1匹ではありますがホモ接合体のメス個体が有精卵を産んだ例を確認している為です。
ヘテロ接合体のメスにこの問題は存在しませんが、NDBEは潜性遺伝の形質を持つ事から、その個体の表現はノーマルです。
●眼球及び視力に関する問題
1. 眼球が小さくなる。
NDBEにおいて、広く知られる遺伝性疾患です。
流通当初は「まぶたの形成に問題を引き起こす」と考えられていましたが、現在では「眼球が小さくなる問題であり、結果としてまぶたが余り形成に異常があるように見える」と認知されています。
多くの個体はランダムに片側の眼が収縮し、場合によっては両眼共に収縮します。
幾人かのブリーダーが選別交配によりこの問題の解決を図り、一見すると眼の大きさに問題が無いような個体も存在します。
しかしながら、「一見では眼の大きさが正常と思える個体の多くは、骨格と比較すれば正常な大きさにない」と切り捨てるブリーダーも多く、注意深く考える必要があります。
ヘテロ接合体にこの問題は存在しませんが、NDBEは潜性遺伝の形質を持つ事から、その個体の表現はノーマルです。
2. 視力に問題を抱える(弱視~盲目)
NDBEにおいて、議論の途中にある遺伝性疾患です。
ホモ接合体の一部の個体が、弱視~盲目である可能性が論じられており、以下が根拠としてあげられます。
ⅰ.フラッシュライトを眼に直接あてても、瞼を閉じない。及び、瞳孔が可動しない個体が存在する。
ⅱ.ベビーの頃には視力の問題が存在せず、成長と共に視力が失われる頃には嗅覚に頼って食事を行うようになり、視力を失った事に飼い主が気づかない。
[最後に]
Coollizard.comの投稿より出典
最初期に国内で流通したCoollizard.comによるマンダリンタンジェリンNDBEの表現はあまりに痛烈で、とても魅力的でした。
私自身NDBEを導入するつもりで(NDBEには体色を濃くする効果がある為)、ヘテロ情報がより確実なUSブリーダーからの導入を検討中に、この問題は明らかになりました。
このベースモルフは元々
「販売されるヘテロの数と、ホモの数の差が多き過ぎる」
「単純な潜性遺伝のベースモルフとしては、あまりに流通速度が遅い」
等の繁殖に関する疑問があがっていました。
最終的にはNDBEの固定に携わったGeckoBoaが不妊及び眼球に関する問題を明らかにすると同時に、繁殖から徹底するという発表を行いました。
固定に携わったもう一人のブリーダーであるCoollizard.comは、繁殖から撤退はしなかったものの、メス個体の販売価格が大きく下がる形となりました。
最新のベースモルフは以前まで、このような流通初期の段階で大規模に日本へ入荷する事はなく、ある程度海外で繁殖が行われ情報も出揃った段階で、入荷される事が日常でした。
国内市場が活発化し、このような検証段階のベースモルフを実際に見れるようになった事は、喜ばしい話でありますが、その検証結果は必ずしも飼育者にとって都合が良いとは限りません。
そのベースモルフの抱える問題に対してどう向き合っていくか?
未知のベースモルフに手を出す以上、考慮しなければいけないリスクなのかも知れません。