KAWASAKI ZX−4 1988
KAWASAKI ZX−4 1988
KR−1と共に、'88年のF3レースに標準をあて開発されたモデル。クラス最軽量の 152kgはスズキGSX−R400(1988y/160kg)を越える仕上がりだった。GPX−Rが、GPZ−Rのセンターカム方式のパワーユニットをベースとしているのに対し、ZX−4は新開発を図ってカムチェーンを右配置に変更している。
パワーユニットのコンパクト化は、スリムにすることによる全面投影面積の縮小、車体のコントロール性に影響するマスの集中化、更にバンク角への影響と、100分の1以下のタイムで競うレースマシンの開発には欠くことのできない項目となっている。バルブシステムは、1バルブ・1ロッカーアーム方式のIRS(インディブデュアル・ロッカーアームシステム)で、ロッカーアームのコンパクト化と高剛性化に寄与している。また、バルブのクリアランス調整は、バルブ軸端上に小径のシムを設け、このシム交換もロッカーアームのスライド方式により、カムシャフトの脱着なしに行えるものとしている。
バルブ径はIN.φ22、EX.φ19、ステム径をφ4と、やや小径とし慣性質量を減少させて、高回転化と吸・排気効率の向上を図っている。バルブ挟み角もこれまでの量産モーターサイクルとして最小の25°(IN.12°/EX.13°)とし、ピストン、ピストンリング、クランクシャフトん等、徹底した軽量化が押し進められている。
こうした努力の結果、慣性重量の軽減はトップレベルを究め、実にレスポンスの良い印象を受ける。しかし反面、市街地においては、ややシビアな出力特性のエンジンに仕上がってしまったかも知れない。10,000rpm辺りから本領を発揮し、 15,000rpmを越えても加速する様は、これまでのパワーユニットには一線を期した内容のものと感じさせてくれる。ただ、シビアとは言え、パワーの発生がスムーズでギクシャク感のない気持ちの良い印象だ。
フレームはダイヤモンドタイプのアルミツインチューブ方式。“e−BOXFRAME”と呼ばれる横剛性の高い卵型に湾曲した形状で仕上げられている。サスペンションは、フロントにインナーチューブ径φ41mm、キャスター角はGPX−Rの26→24°に設定し直され、シャープなハンドリングで運動性能を高めたものとなった。
リアは、ガス封入式のユニ・トラックで、減衰機構には新開発の「多段板バルブ」を採用。減衰抜けの防止を図って、サーキットユースのハードな状況にも安定したクッション性能を与えている。レース対応を目的に仕上げられたモデルとは言え、サスペンションの初期作動はソフトな印象。フルストローク時には腰の強い印象を持たせたフレキシブルな作動特性が得られている。
ホイールはレース対応に適合したワイドリムを採用し、スリックタイヤの装着も可能としている。 '88年の「鈴鹿4時間耐久」SP400クラスで圧勝。カワサキは思い通りの成果を確認する。が、ZX−4を僅か一期のモデルとして、翌年にはZXR400/400 Rをデビューさせている。激しい変化の中で鮮烈なデビューを果たしながらも、自らの渦の中でその光を抹消させた貴重なモデルとなってしまった。