Welcome to Harvard Kennedy School!
さて、ケネディ・スクールがついに始まった。
荷物ガー!、飛行機ガー!、家具ガー!、銀行ガー!、携帯ガー・・・!
とか慌ただしく走り回っているうちに、
あっ!!という間に初日がやってきた。
娘が時差ぼけで夜中何度も起きるので、若干グロッキーな気分の中、
(メインで面倒を見てくれた旦那様、有難う。)
好きな音楽を聴きながら、気持ちの良い夏のCharles川の景色を眺めつつ登校し、
2年ぶりにケネディ・スクールのキャンパスに足を踏み入れる。
学校の中央の「フォーラム」と呼ばれているスペースで
各学生の出身国の旗が掲げられているのを見て、
「あぁ、来たな。」 と
グッ、と色々なものがこみ上げて来た。
***
日本のような「入学式」みたいなものはないが、
Faculty Chairが最初にスピーチ。
学校側からの主なメッセージは:
パッションを追い求め、
新しい人と繋がり、
違いを知り、
そこから新たな可能性を広げよ。
というものだった。
そして、この環境は挑戦するには最適なのである、と。
“This is low risk setting to get outside of your comfort zone.”
***
そんなメッセージを受けて、
1週目の3日間で面白かったこと:
1) 生徒達の幅広さ
Mid-Career/MPA Programの同級生は、約70カ国からきた男女約200名。
MPPプログラムが大学卒業後数年の社会人経験を経た米国人中心なのと比べて、
本プログラムは7年以上の職歴が求められる「実績のある人々」の集まりなので、
平均年齢は35歳前後で、国も去ることながら、経験や目標の幅も極めて広く、
面白い仲間が集まっている。
国で言えば、
アゼルバイジャン、キルギスタン、ウクライナ、トリニダード・トバゴ、ガボンなど
今まで直接会ったことの無い国の出身の人々もいる。
職業で言えば、
各国政府の官僚・中央銀行・国有会社出身者は想像に難くないが、
コロンビアの大臣経験者や、インドで現在選挙に出ている人。
民間出身者もおり、
シリコンバレーで3社を起業・売却したインド系アメリカ人、
アクセンチュアでMDをやっていた50代のオーストラリア人、
投資銀行(UBS)・コンサル(McKinsey)を経てVCを立ち上げたインドネシア人。
あとは、
UN、UNICEF、ADB、IMFなどの国際機関の人や、
NYPDの警察官、シンガポールやアメリカの軍人、ブラジルやイタリアのジャーナリスト、
教育者やそれぞれ世界の課題解決に取り組むNPO/NGOの人々など。
面白い人が沢山いるので、徐々に掘り下げてまたレポートしたい。
ちなみに、私は
「0歳児の子持ちママ学生」
というのが、それなりに大変(エッジ?)だと思っていたが、
女性陣の自己紹介を聞いていたら、
0歳児を含めた子供、それも2人以上の子供と一緒に来ている人が
結構沢山いるのは勿論のこと、
「3人の子供を自国に置いて来たので、子育てのサバティカルが嬉しいです。」
「出産直前にボストンに引っ越して、今、産後4週間後です。」
「3人の子供のシングルマザーです。」
など、なかなかの強者もおり
(産後4週間後なんてまともに立てなかったような。。。)
自分がフェザー級ぐらいだということがよく分かった。
2) 「Diversity, Inclusion and Belonging.」という観点
初日から、プログラム運営側が非常に重要視していたのが、
この人種・性別・宗教・政治信条・身体条件・年齢など
「違いのある人々」に
どうやって一体感を醸成し、
どうやって秋からの授業に同じような心持ちで
スタートラインに立たせるか、ということ。
コロンビアの国際政策大学院の出身米国人が
「あちらではこんな事前プログラムは無かった」と感嘆していたくらい、
15秒で自分を印象付ける自己紹介を全生徒・教授たちの前でしたり、
グループに分けて「違いをどう乗り越えるのか」話し合いをしたり、
ネットワーキングランチをしたり、
と色々なセッティングが用意されている。
例えば、某東アフリカの国からきた同期の1人は、
自国でゲイが刑事罰対象であるのでゲイの人々に対する免疫がなく、
バーでたまたま隣に座った男性と様々な話で意気投合した後に彼がゲイだと知り、
その後どういう態度をとって良いのかわからず席を立ってしまい、
後悔したという話をシェアしていた。
中国から来た同期は、
国と国との対立や意見の違いは
「Personalではない」ということをわかって欲しい、と訴えた。
それはきっと、パレスチナとイスラエルから来た同期が
同じクラスで席を並べるときも、とても重要なことだろう。
これも様々なバックグラウンドの人がいる、Mid-Careerならではで、面白い。
***
勿論、”Inclusion”の観点では、
「家族」に関してもケアがされており、
最初の週の金曜日の夕方には、家族ウェルカムで芝生でパーティ。
ちびっこが走り回っていた。
ことあるごとに、
「勿論、授業は休んではならないし、携帯は禁止。
けれど、例えば、今日子供が生まれる連絡を待つのに携帯を見ないのは難しいし、
子供が生まれる瞬間に立ち会うために授業を休みたいと思うのは当たり前。
ただただ、あなたの家族や困っていることの状況を、私達に相談して欲しい。
相談すれば助けられるから。」
この明確な優先順位と柔軟性と、オープンさ。
こういうところが、アメリカのいいところだと思う。
3) 授業のやり方(期待)
Mid-Career MPA Programでは、
大学などの所謂「勉学」から数十年遠ざかっている人も多いため、
特に学期が開始されてから政策・経済などあらゆる分野で必要ツールとなる
数学と経済学を中心に1ヶ月間勉強する。
事前の試験で10以上のクラスに分けられて、
レベルごとにスピードの違う授業を受ける。
Faculty Chairが、スピーチの中で、
“Tell me, I forget
Show me, I remember
Involve me, I understand.”
と荀子*を引用して
如何にアクティブラーニングを重視しているか強調していた。
まだオリエンテーション段階で、本来的な授業は1コマづつしかなかったので、
来週以降、授業がどんなことになるか、楽しみである。
〆
*ちなみに、帰って荀子の当該言い回しの日本語版がないか調べたところ、
「不闻不若闻之, 闻之不若见之, 见之不若知之, 知之不若行之」という原文で、どちらかというと、教える内容の理解について言っているというより、知識は実践して初めてその人の知恵になる、という学問の目的が実践にある旨を示した言葉だったようだ。。。