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Baby教室シオ

提案『子供のパーソナルスペース』

2024.11.25 00:00

今回取り上げるのは『子供のパーソナルスペース』についてです。特に私が乳児との関係性で注意する点でもあり、人見知りが始まる乳児期にはかなり慎重に見極めるのがパーソナルスペースです。人は誰しもパーソナルスペースを持っていますがその広さは個人差、年齢差、男女差、そして文化や国によっても異なります。何よりもお母様方に理解してほしいことは子供達が新しい旅立ちを迎える度にこれまでのパーソナルスペースから飛び出し、また新しい環境の中で新たにパーソナルスペースと居心地を確認し作っていくのです。

それではパーソナルスペースの概要と年齢別について述べていきます。

1、パーソナルスペースとは

パーソナルスペースは別名対人距離、個体距離と言われ他者が近づいて不快に感じる限界範囲を指す言葉です。アメリカの文化人類学者エドワード・T・ホール氏が提唱した概念で目に見えない心理的縄張りと解釈し、人間は無意識のうちに快適な空間を保とうとし他者との距離をとっているというものです。無意識で親しい人とのパーソナル距離は狭く、密接ではない相手との間には一定の距離を取ります。





2、パーソナルスペースの種類

パーソナルスペースには大きく分けて4種類あります。そしてこのパーソナルスペースは乳児期から備わっており12歳ごろから意識し出し、40歳をピークにその反応は小さくなるとされています。では4種類について解説してまいります。


① 密接距離・・・0〜45cm。家族、恋人、親しい人との間の距離で心を許した関係性に認められる距離です。親の立場だと子供を抱きしめ慈しみ、保護できる距離であり子供の立場だと心を許し甘えられるともいえます。

しかし密接距離にも2通り存在し、近接している子供と父母、兄弟姉妹、親しい祖父母は0〜15cm、週1回会う御祖父母は少し距離がある15〜45cmとなります。乳児の中には男性を怖がり寄せ付けない場合がありますが、このような場合は子供が不安を覚える距離に相手が入ってきたと言える反応なので、できるだけ真正面ではなく乳児の横45cmに座り目を合わせず少しづつ距離を縮めていくようにしましょう。

② 個人距離・・・45〜120cm。互いの表情を読み取れる距離で友人や同僚、親戚などの関係性です。手を伸ばせば体の一部に触れることができます。保育園や幼稚園で毎日子供たちと接している先生は基本この位置にいるのですが、日々の信頼関係で密接距離にすんなりと入ることもできます。私もこの位置にいることになりますが、レッスンを円滑に進めるためには子供達とアイコンタクトや話しかけを繰り返し、なるべく密接距離の45cm以内に入ることができるよう努めています。


③ 社会距離・・・120〜350cm。社会活動で生まれる距離です。学校や仕事上の関係で人と接する時の距離で、個人的距離での関係性よりも離れた位置にある対人関係の場合に発生する距離です。病院での診察などは子供の心理から考えるとこの社会距離にあたるのですが、診察をするために医師は密接距離に入らなければなりません。子供にとっては不快に感じる距離に入られてしまうため恐怖心で医師を見つめたり泣き叫んだりするのです。ですから小児科の医師は幼い子供達とは目を合わさない医師も少なくありません。


④ 公衆距離・・・350cm以上の距離。演奏会や演劇鑑賞、演説や討論会などの公共の場で相手の表情が見えずまた個人的に関係性がない、全く知らない相手との距離のことを示します。




3、乳児期のパーソナルスペース

誕生前から母親の声を聞いて育ち、誕生後は母親の顔をそして家族の声や顔も認識しだします。乳児は身近な家族を理解するのは思いの外早く、同居している家族とそうでない人物を区別しています。生後間もない頃から自分と相手との距離を理解し面識のない人物や合う回数が少ない人物が、近づいてくると急に不安になり泣き出すことは少なくありません。つまり乳児自身が自分のパーソナルスペースに心を許していない人が入ってくると不安を感じてしまうのです。レッスンにおいてもこのようなことが起こりますが、その場合には潔く引いて距離を取りお母さんと和やかに話を進め「この人はママと話しているから大丈夫な人かもしれない。」と感じてもらうことを優先します。無理にパーソナルスペースに入ることは不安を助長させることになるので人を信じるという感情の育みとは真逆のことを行うことになり避けなければならないのです。また乳児に微笑みかけることを実行し、その微笑みを受けて乳児自身から微笑みを発信できるようにすることで笑顔を交わしてパーソナルスペースに入りやすくする方法も取り入れています。




4、ママじゃなきゃダメ、パパ見知り時期のパーソナルスペース

乳児は生後6ヶ月頃から「ママじゃなきゃダメ」というシグナルを出します。これは生後3、4ヶ月の乳児が母親とそれ以外の人を視覚的に区別する認知能力が備わり、やがて生後6ヶ月頃に自分自身を愛し守ってくれる最強の人が母親であることを理解し愛着形成をさらに深める時期に入っているからの現象です。つまり母親にくっついていたい、抱かれていたいという思いがますます強くなります。家族である父親でもその時期には残念ながら拒まれてしまいます。つまり乳児にとって自分を守り安心していられる最高位に位置付けているのが母親なのでしばらくお父さんはその拒みを成長の証として受け止めてくださればと考えます。パパ見知りはパパが嫌いなわけでもなくパパを知らない人と認知しているわけでもありません。つまり普段からお世話をしてもらっている母親に全幅の信頼を寄せている時期なので、乳児はママに任せて、パパはママがやらなければならない日常の雑務を引き受けてくださるとママも心に余裕とパパに対してのありがたさを感じることができるかもしれません。




5、人見知り時期のパーソナルスペース

生後8ヶ月頃から人見知りが出てきますがそのパターンもいろいろです。最初は人見知りするけれどすぐ慣れてしまう場合や相手の顔を見ただけで火がついたように泣く、親に抱かれていたら人見知りはしないが親から離れると急に人見知りをして親を追いかける、特定の人にのみ人見知りをするなど様々です。

人見知りを強く出させたくない場合は生後6ヶ月頃からのママじゃなやダメを十分満たしてあげることです。ママじゃなきゃを中途半端にしてしまうと好奇心や恐怖心という感情が育ってくる月齢にあたるために人見知りが強くなる可能性があります。そうならないためにまずはママとの関係性を乳児が満足できるまで満たしてあげることです。

人見知りが始まったら無理に乳児のパーソナルスペースに人が入らないようにします。相対する人物はできるだけ距離を取り定位置にいるようにし、乳児と目を合わさず自分自身を乳児に見てもらう観察してもらうというスタンスで警戒心を解いてもらうことが大切です。もし乳児が近寄ってきてもしばらくは反応しないようにします。さらに近寄ってきたり触れてきたら声を掛けるだけにし決して距離を詰めてはなりません。

人見知りをする時期には好奇心と恐怖の2つの感情が育ってきます。前者の好奇心を育ててあげれば人見知りは軽減されますが、恐怖心が好奇心を上回っている場合はなかなか心を開いて距離を詰めることが難しくなります。実はこの乳児期の人見知りは3歳頃までに影響を及ぼすことがあります。つまり恐怖心を育てるよりも好奇心を育てた方が人見知りも軽減し、尚且つパーソナルスペースが狭くなり人とのコミュニケーション能力も高くなります。よって我が子はどの感情が育っているのかを親が認識することで対応策を打つことができます。




6、言葉が未発達な幼児のパーソナルスペース

1歳から3歳までは個人差はありますが思っていること感じていることを言葉にして表現できるスキルはまだまだ身につけていません。会った時に軽く挨拶をして挨拶を返してくれるようであれば子供自身が判断して近寄ってくることや話しかけてくれます。またはにかんで親の後ろに隠れてチラチラと見てくるようであれば好奇心があるので観察してもらいましょう。子供がこの大人は楽しい人のようだと思えば子供自身が距離を詰めてくれるようになります。また親の後ろに隠れたり逃げてしまう場合には深追いはしない方が良いでしょう。

自ら言葉を発することは不得手でもしっかりと大人の話すことは理解ができる年齢でもあり、自分自身のパーソナルスペースに入り込んで欲しくない場合は子供自身がその場から移動することができる年齢でもあります。しかし子供自身が出掛けていく場合には移動できないことがありイラストのように背を向けたり顔を伏せたりするので、その場合にはかなり拒まれていると認識して大人が距離を取る気配りが必要です。




7、成長と共にパーソナルスペースの書き換えが起こる

子供達は節目節目で成長し新たな門出を余儀なくされます。例えば保育園や幼稚園に入園する、小学校に入学する、新しい習い事を始める、引っ越しをするなど環境が変わる度に環境も接する相手も変わるため自分自身が心地よいというパーソナルスペースの書き換えが必然と起こります。その時には緊張や期待、不安、時には恐怖を抱えながら新しい環境に身を投じていくのです。私たち大人も新たな環境に身を置かなくてはならない場合には緊張をしますが、大人はこれまでの経験ちから様々な予測をすることができことに応じて対応することができますが、子供達は経験値もさほどないので大変であろうということが容易に想像することができます。

ある程度成長した幼児期でも環境の変化によって子供が母親と離れたくないという感情が芽生える時もあります。子供はその環境に馴染もうと努力していることをしっかりと受け止め、その感情がどこから発生しているのかを見極める必要があります。言葉で自分自身の感情を伝えることができる年齢でのこの行動には何かしら不安感情が強く出ているはずなので、母親と離れていても大丈夫だよと思わせることが重要です。環境がガラッと変わる時には注意を払いながら見守ることが必要なのです。とはいえ子供の性格や個性に応じて見守るスタイルを変える必要があるかとは思いますが、過干渉になるほどの心配をしてしまうと逆に子供の成長にストップをかけてしまい兼ねないので、時にはあまり深刻にならずあっさりと子供を送り出す親御さんの心の余裕と自覚が必要といえます。


子供達は子供達なりにパーソナルスペースを学習しながら自分らしく成長できるように自己コントロールをしていきます。私たち大人はそれを理解し対応することが必要なのです。