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Baby教室シオ

絵本『コバンザメのぼうけん』

2023.07.09 00:00

今週は子供達の冒険心にフォーカスして一連の記事を記していきます。今回は絵本の中からまるで種を超えた親子のような関係性を持つクジラとコバンザメの物語です。

クジラの「もっと、知らなくちゃ」という言葉で一晩だけの世間探しの旅に出かけたコバンザメの物語。いつも一緒にいると見えてこないことや知りえなかったこと、そして自然界で生きていくためには危険と隣り合わせであること、逞しく生きるとはどういうことなのかを感じる実体験を展開していく一晩だけの話ですが、どこか人間の子育てに似ていて共感できるお話が散りばめられています。コバンザメの行動を見ていると人間の子供達も日々新しいことを見聞きし驚きと喜びと面白さや怖さ、不安など入りさまざまな感情が混じる日々を今もいきて成長しているのだろうと重ね合わせて深読みしてしまいます。

コバンザメはクジラといた時には知らなかったことが次々と見えてきたかと思うと接する生き物たちの発言や行動でガラッと見えるものが変わり、その出会いによって多種多様性があることや優劣がついている様であっても見方を変えると物事の捉え方が違ってくることを知ることになります。これは絵本の世界だけに限らず子供達が実体験することができたら素晴らしい深みのある思考に繋げることができます。絵本の空想の世界だけれども子供達が日常で実体験として得られるチャンスが来るまでに何度も読み聞かせたい作品です。

またコバンザメは自然界で生きることが厳しいことも学びます。視野を広げるために多くのものを見ることも重要だけれでもその分危険も孕んでいると。「キョロキョロとすることはゆっくりとすること、だけれども油断をしてはいけない」と説いています。虎視眈々とコバンザメを狙う、この場面は子供達の危険回避や安全とは何かを教える場合に通ずることがありそうです。

また海に住むさまざまな生き物のことを知るチャンスにもなります。アオブダイがエラから泡を出して寝ることやアンコウが水中の魚を狙っている鳥を捕食することなど子供の知りたいという欲求を大いに刺激してくれる作品でもあります。

特に沖縄の生魚店で目にするイラブチャーをアオブダイと書いてあることがありますが、アオブダイに見た目は似ていますがイラブチャーはナンヨウブダイやイロブダイと言われるもので毒を持つアオブダイではありません。沖縄に住んでいる子供達にはこの絵本を通して地元に密着した知識も持ち合わせてほしと感じています。それが沖縄で生きるということの特権だと思うのです。

今回は単純にこの作品を読んでほしいという冒頭の趣旨だったスタートから、書き進めていくうちに親の目線でいろいろと子育てに投影してほしいという記事になってしましました。記事を書いているうちにこの作品の対象年齢は小学校中学年移行だなぁ・・・と考えていると記事の方向性が親御さん向けになってしまいました。『こんな日もあっていいですよね?だって自動配信までにあと10分ほどなので・・・』という言い訳を述べつつ最後にまとめと少しだけ灰谷氏の作品の必要性を記して終わりたいと思います。

この作品は子供の自立を親はどう捉えるべきなのかを問う子離れの側面と社会で生きていくためにはまず多種多様性を知り人も動物も生きるもの全てが共生していくためにはどうすべきなのかを問う実に深いことを考えることができる作品です。この作品を知識獲得のために焦点を当てがちになる方もおられますが、日本の児童文学を牽引してきた灰谷健次郎氏の魅力をほんのわずかしか味わえてないことになるのではないでしょうか。絵本から児童文学へ移行するときに必ず読んでほしい灰谷氏の作品が多くあります。この作品をきっかけに絵本から児童文学へ移行させるためにまずは親御さんが灰谷ワールドを味わってみてはいかがでしょうか。